第18話 運命の黄色い糸 三

  「あ、お待たせ~!待った?」

「いや、別に待ってないよ。」

そんなこんなで、次の日曜日がやって来た。また、繰り返しになるが、やはり俺と由利加は、「黄色い糸」でつながっている。

 「もお~!別にカッコつけなくてもいいじゃん!」

「べ、別にカッコつけてる気は…ねえよ。

本当にさっき着いた所だし…。」

「はいはい、本当は優しい克也くん!」

そう言う由利加はちょっとおどけた様子で、俺は不覚にも、少しドキッとしてしまった。

「あ、克也、今ちょっとだけドキッとした?」

「い、いや…。」

俺はそう言ったが、

『やっぱりスナイパーは健在だな…。』

と、心の中で思った。

 また、その日の由利加の服装は、丈の長いグレーのステンカラーのコートに、黒のパンツを合わせたものであった。やはり彼女はボーイッシュで、はっきり言って…きれいだ。

 しかし、そうやってずっと彼女を見つめていると、

 『克也、やっぱり私に見とれてる~!』

とか何とか言われそうだ。そのため俺は頭の中でその思考をシュレッダーし、気持ちを切り替えた。(また幸い、俺の今回の思考はスナイパーには読まれなかった。)

 「…とりあえず、今日は映画見に行くんだよな?」

「そうだね、克也!

 でもその前に、今日は克也にささやかなプレゼントがあります!

 今日は寒いでしょ?カイロ、買ってきたんだ!」

「えっ、あ、ありがとな…。」

『こいつ、優しい所もあるんだな…。』

俺はそう思ったが、その直後、俺はその思考を撤回し、後悔することになる。

 「あ、このカイロ背中に貼るタイプなんだ~!

 だから、後ろ向いて!?」

俺は少しドキドキしながら、後ろを向いた。

 …その直後。

「つ、冷たあああ~!」

「ハハハハハ!引っかかった!この日のために私、夏用の氷持ってきました~!

 それにしても克也、リアクション面白過ぎ!」

 俺はその物体が背中に当たった瞬間、のけぞるようにして離れたが、その感触は…、なかなか消えてはくれない。それほどその日は寒い日だった。

『こ、こいつ…。

 …ってか、こいつを信用した俺がバカだった…。』

 俺がそう思っている間も、由利加は笑い続けている。

 「私、実は笑い上戸なんだ~!

 にしても、克也って本当に人がいいんだね!」

『さすがに笑い過ぎだろ!』

…俺は何とかその怒りを自分の中に鎮める。

 そして、

 「…由利加って、いっつもこんなイタズラしてんの?」

そう訊くと彼女は、

 「う~ん、まあね~!」

と、悪びれもせず答える。

 「まあ、私過去には、友達のものを隠したり、寝てる友達の顔に落書きしたりはしたことあるかな。

 ま、ベタなんだけどね。」

『べ、ベタって…。』

俺は、完全にこいつのペースに飲まれている。

 「あ、そうだ克也、何か新しいイタズラのネタあったら、教えてね。

 彼氏なんだから、それぐらいしてくれてもいいでしょ!」

『ちょっと、わけ分かんねえよ!』

俺はその言葉を飲み込み、

「いや、俺はイタズラは、したことねえし…。」

 なぜか冷静に答える。

「そっか~残念。

 ま、でもごめんね。悪気はないからね!」

「ほ、本当かよそれ!」

俺のそのリアクションにも、彼女は動じる様子は全くない。

 「ま、とりあえず行こっか!」

「あ、ああ…。」

『…ってか、俺たちこんなんで大丈夫なのかな…?』

 俺は、そんな気持ちになった。

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