第19話 運命の黄色い糸 四

 「ああ~良かったね~『Geekに恋した2人』!」

「Geekに恋した2人」というのは、俺たちが2人で見た映画のタイトルだ。前にも言ったが俺は恋愛映画は好きな方ではないが、由利加が「この映画、見たい!」とのことで、その映画に付き合うことになった。

 そしてその話は…恋愛映画を見ない俺でも、感動できるものであった。

「ああ、そうだな。」

「ところで克也は、奈美とユイカなら、どっちがタイプ?」

ちなみに奈美とユイカというのは、その映画の2人の登場人物だ。

「…タイプというか何というか…。

 でも、俺は奈美の方が好きかな。奈美が身を引こうとした所も泣けたし、あと最後、主人公の奏と奈美が結ばれて、良かったって思うよ。」

俺がそこまで語って、

「悪りぃ。ついつい語っちゃって…。」

と、由利加に言ったが彼女は、

「ううん、克也って本当に映画が好きなんだね~。」

と、俺の語りに好意的な様子であった。

 しかし彼女は、

「でも私は、ユイカの方が好きだった、かな!

 何でもカンペキにこなせるって憧れるし、それでも人を好きになって嫉妬しちゃうって、かわいいよね~。

 ま、私にはそういう要素ないけど。」

「あ、そうなんだ…。」

最後の一言が俺は妙に気になったが、とりあえず俺はその場をそう流した。

 今はデートの映画が終わった所で、俺たちはとりあえず近くのデパートの椅子に腰かけて話をしている。

 また、外は雪で、

『女の子って、雪とか好きなのかな?』

と勝手に思った俺は由利加に、

「何かデート中に雪とか降ってくるって、ロマンチックだよな。」

と話を振ったが、

「え~そうかな~?

 何か、雪が降ると事故も多くなるし、その関係か交通機関もマヒするし、嫌じゃない?」

と、言われてしまった。

「え、そ、そう?」

俺はとっさに、そう言うしかなかった。

 『まあ、俺も雪が特別に好きで言ったわけじゃないし…。

 良しとしよう。』

俺は、とりあえずそう思った。

 また、

「そういえばさ、克也って好きなアーティストとかいるの?」

と由利加に訊かれ、俺は正直に、

「あ、俺は○○とか好きだよ!

 何かあのエレキ中心のサウンド、かっこいいよな!」

と答えたが、

 「え~そうかな?私、逆にあのエレキギターの音、くどい感じがして嫌いだなあ~。

 私は…特にこのアーティストが好き、っていうのはないかな。

 ま、音楽全般は好きだけどね。」

と、由利加は言う。

「あ、そ、そう?」

 ここで、俺は思ったことがある。

 「…ってか由利加って、全体的に冷めてるよな?」

「え~そう?私はこれで普通だと思うんだけどな~。

 でも、友達からはよくそう言われるかも!」

 …やっぱりか。ただ、俺も恋愛に対してはかなり冷めてるので、人のことは言えないかもしれないが…。

「あと、俺たちって趣味とか、合わないよな?」

「何か、聞いてるとそうだね~!

 でも、私たちみたいに趣味も感じ方も全然違うカップルって、珍しくない!?」

由利加は心底楽しそうに、そう言う。

 「…まあ、そう言えなくもない、か。」

「あ、克也もそう思うんだ~。

 私たちやっと気が合ったね!キャハハハハ!」

 『そこ、笑う所かよ…。』

俺は、苦笑いした。

 そして俺たちの小指を見ると、そこにはやはり「黄色い糸」が見える。それは、俺たちが出会ってから今まで、全く消えずにそこに存在している。

 『これにはやっぱり、意味はあるのかな…。』

俺はそう思うと同時に、

 『由利加は、趣味も感じ方も合わない俺の、どこがいいんだ?』

 …そんな疑問を持った。

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