第15話 運命の青い糸 十五

 「あ、こんにちは由利加さん。待ちました?」

 次の日、俺がその時計台に着くと、由利加さんはもう既にその場所に来ていた。

 また、相変わらず俺と由利加さんとの間には、「黄色い糸」が見える。

「ううん、全然待ってないよ。

 ってか、私たちタメ語でもよくない?」

「…分かった。」

俺たちは同い年だと前に聞いていたので、由利加さんの提案にも違和感はなかった。

 …しかし、俺は由利加さんのその口調に、若干違和感を持った。

 ただ、そのことを由利加さんに言うのも変だと思った俺は、今日由利加さんに呼び出された理由を聞こうとして、口を開こうとした…しかし。

 「あ、そういえばさ、克也くんと一緒にいた圭太くん、いい子そうだよね~。

 ちょっとバカっぽいけど。」

『は、はあ~!?』

俺はその違和感の正体に、次の瞬間気づいてしまった。

 「何か圭太くんって、純粋過ぎて騙されそう。

 『運命の相手を信じてます。』って思って、それで悪い女に捕まりそう、みたいな~。」

「おいおいちょっと待てよ!」

「ごめんごめん、こんなこと言うつもりじゃなかったんだけど、口が滑っちゃって。

 でも私、圭太くんのこと嫌いじゃないかも。真面目でよく働いてくれるような印象、かな。ただ、彼氏にするのはどうかな~。」

 実は前日の帰り道、俺は圭太から、

「由利加さんって真面目で優しそうだけど、正直俺のタイプではない、かな…。」

と聞いていたので、少し怒った俺はそのことを伝えようとしたが、

 「あ、もしかして圭太くんも私のことタイプじゃない?

 まあ何となくそんな気はしたんだけどね~。」

と、由利加さんに先を越されてしまった。

 『…ってか由利加さん、鋭いな…。

 あと圭太、この子は少なくとも、『優し』くはないよ…。』

この、前日のイメージとのギャップが、俺の違和感の正体だ、俺はそのことに気づく羽目になった。

 「何?ちょっとびっくりした?

 まあそれも当然か。昨日の私、『真面目で優しそう』なイメージ出してたもんね~。」

『それを自分で言うか!?』

俺はその瞬間、内心でそう思った、が、とりあえず口には出さなかった。

「やっぱり初対面だと、いきなりこんなキャラ出されても困るでしょ?だから私、初めての人と会う時はキャラ作っちゃったりなんかしてるんだ~。

 どう?克也くんも騙された?」

『ああ。大いに騙されたよ。』

と俺は心の中で言ったが口では、

「どうかな。」

とだけ、言っておいた。

「でも私、これでも一応真面目なことは真面目だと思うから、活動はちゃんとするよ。

 これからよろしくね、克也くん。

 あと、圭太くんにも『よろしく』って言っておくね。」

 …まあそこはいいとしよう。

 「それで、話って…!?」

俺は気になっていたことを、その直後に由利加さんに伝えた。

 「そうそうそれそれ。

 今から大事な話するから、ちゃんと聴いてね。」

由利加さんはそう前置きした後、俺に驚きの台詞を言った。

 「…私たち、付き合ってみない?」

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