廃都サバイバル
<i369026|25457>マヤの魂を救いに廃墟に入るキリナ一向。
その瘴気溢れる廃墟は妖怪で満ち溢れている。
その妖怪を薙ぎ払うキリナ達。
「妖刀どうたぬき!そいやっ!」
キリナは旋回し、弧を描くように舞う。
周りの魔物達はその舞に魅了されるように見ていたがその後バタバタと倒れていった。
『お見事です!キリナさん!』
狸助が拍手する。
「そっちは片付いた?」
『はイ♪これで今日ハここで寝泊まり出来そうでス♪』
キリナ達はマヤの魂を捜し続けるのは今日では無理と判断し、寝泊まりする為に周囲の魔物を退治していたのだ。
「魔物さん、安らかに成仏してください」
倒してきた魔物達にお祈りを捧げるキリナ達。
魔物も元は街にいた人間や動物なので、お祈りを捧げるのは巫女や僧侶達の習慣でもあった。
キリナ達の退治してきた妖怪の中、食べられそうな動物や植物の妖怪をせん別するキリナ達。
「これなんか美味しそう♪」
キリナはキノコのような妖怪に指をさす。
『どれどれ?』
狸助がキリナの指差したキノコに寄り添い、鼻をすんすんさせる。
『こいつは駄目ですよ、毒が入ってます』
「んもうっ、私を信用して無いんだからっ」
キリナが選ぶといつも慎重になる狸助。
『キリナさんが選ぶものは殆どろくな物がありませんからっ』
狸助はキッパリと答える。
『まあまア、食材は集まりましたシ建物の中に入りましょウ♪』
シェリーは二人をなだめ、魔物の肉や野菜?の調理を始める。
『あ、キリナさン今日は誕生日でしたよネ?晩御飯の調理は私達ニ任せてくださイ♪』
「良いよ、私も手伝うから…」
『大丈夫ですよ、今日はキリナさんもかなり頑張ってたし、ゆっくりしてて』
シェリーと狸助は今日はキリナの誕生日という事で、キリナをゆっくりさせようと調理を続けていた。
「悪いわね、じゃあお言葉に甘えさせていただくわ♪」
そっか、今日は私の誕生日なんだ…。
小さい頃は誕生日は楽しみな行事だったのだが、今となると少しずつ年を取って行くことにため息の出る行事だ。
気づいたらもう17歳か…。
キリナは気を紛らわすようにリュックを漁り、一本のマンガ本を手に取る。
[5の刻印]…とある南米が舞台で日本人学校に通う主人公の少女はじめ、5人の少年少女が超能力に目覚め、時空を超えて敵と戦うといったストーリー。
その手に汗握る戦闘シーンの他、熱い友情シーンもあり、読者に熱い感動を与えてくれる。
5の刻印の世界にのめり込み、時も忘れてページを読み進めている所に食事が出来上がる。
食欲をそそるような芳醇な香りが鼻を包んでいる。
『キリナさン、また5の刻印の世界の中ニ入っていたんですカ?』
何回も呼んでいたのに5の刻印の世界に入ってしまったまま戻って来なかったとキリナに言うシェリー。
『早くしましょう、ご飯冷めちゃいますよ!』
と狸助。
ああ私は今マヤお姉ちゃんを助けに廃墟に来ているんだ。
つい5の刻印の登場人物になってしまう所だった。
しかし漫画の魔力って恐ろしいな。
シェリーと狸助に現実世界に戻されたキリナだったのだが、5の刻印の続きが気になってワクワクしていた。
「わあっ♪美味しそう!!」
料理の盛り付け方が大変美しく、それだけでも早く食べたいと思わせる。
味も絶品。
「美味しい!シェリーって凄い料理上手だね♪」
キリナは食事を進ませシェリーを褒める。
『料理上手だなんテそんナ…』
シェリーは恥ずかしげな仕草をする。
(『シェリーさんもし全身機械で無かったら良い花嫁さんになれたでしょうに…』)
狸助はシェリーの作った食事を見てそう思ったのだが、言葉には出さないでおいた。
言葉に出すとシェリーは少なからず傷つくだろう。
全身機械とは言え元々は若い女の子なんだから…。
と思いながら箸を進ませている矢先にキリナが言葉に出して言った。
「シェリーも全身機械で無かったら凄く素敵な花嫁さんに…狸助何するの!?」
狸助はあまりにも鈍感なキリナの発言に注意せざるを得なかった。
『キリナさんシェリーさん傷つけたらどうするんですかっ!?』
小声ではっぱをかける狸助。
「え?私何か変なこと…」
見るとシェリーが俯いて体を震わせていた。
『そうよネ…もしロボットじゃ無かったら今頃素敵ナ奥さんニ…』
どうやら傷付けてしまったみたいだ。
「シェリー、ごめん、私そんなつもりじゃ…」
キリナはようやく今の発言がヤバいことに気付いたのか、シェリーに平謝りする。
『…なんて、冗談ですヨ♪私の料理で皆さんガ笑顔になれるなら、私ハそれだけで幸せでス♪』
シェリーはそう言っておどけてみせた。
『ふぅっ…キリナさん少し言葉は慎重に選んだ方が良いですよ』
「あうぅ…ごみん…」
今はキリナの愛嬌の一つなので慣れてはいたもののやはり彼女の悪い癖は注意しておかないとと狸助は気苦労した。
「ずっと風呂入ってないと気持ち悪いわ、お風呂入りたいけど水道も通ってないし…」
廃墟なので水道が通ってないのは当然の事だが、水道をひねるキリナ。
『あア、それなら私ニ任せテ♪ここってバスタブもありますし、私ガ入れて来まス♪』
シェリーはそういうと浴室の跡に消えていく。
浴室の扉に触れるところでシェリーは注意をかけた。
『私ガお風呂入れている所、絶対見ないでくださいネ!』
そう言い残し、扉を閉めるシェリー。
見るなと言われると余計見たくなるのが人情と言うもの。
好奇心の強い狸助ならなおのことだ。
ジョボボボとお湯が入れられる音がなる。
水道も無いのにどう湯を入れているのだろう。
『気になりますねぇ、いれてるとこ見て来ましょう』
狸助はバスルームに向かおうとする。
「駄目よ狸助。シェリーも覗くなと言ってたじゃないの」
覗きに行こうとする狸助にキリナが慌てて声をかける。
『キリナさんだって実は気になってるんじゃ無いですか?』
「それは…」
キリナも本音では気になっていた。
水道も通ってない中どうやって湯をいれてるんだろう?
「でも覗くなと言ってたんだから覗いちゃ駄目でしょ!」
『ははーん、怖いんですね?』
「!怖くなんかないわよ!一緒に覗けば良いんでしょ!?」
狸助に上手く言いくるめられたのと、実は気になっていたのもあり、シェリーの様子を覗きに戸を引くキリナ達。
その様子を見てキリナ達は唖然とした。
何とシェリーはしゃがんでいて汚いものを出す要領で湯を出していたのだ。
『覗くナと言ったじゃないですカ!』
怒鳴るシェリー。
「あわわ、ごめんなさい!」
見るんじゃ無かったと思う二人だった。
バスタブに張られた湯を見てシェリーの体からは何処から湯が出てくるんだ?とも疑問に思えたが湯加減は良く浸かると全身の疲れがふわっと取れる。
シェリーのある所から出た湯なので少しは抵抗はあったものの風呂に入らず過ごすのは乙女としては許せないものもあったので入ってみると今廃墟にいると言う感覚を忘れさせてくれるような極楽浄土にいる気にさせてくれた。
全身の汗と疲れを流した所でテント、寝袋を用意し、就寝に入る。
「……眠れない……」
就寝しようとするにも慣れない場所、遠くから聞こえる魔物の呻き声などで寝付く事が厳しい。
ふとそんな時、キリナの体に何かがペタッとくっつくのだった。
「ひゃっな、何??」
戸惑いの声を上げるキリナ。
何とシェリーがキリナの体に抱きついて来ているのだった。
『騒がないデ!狸助ガ起きちゃうでしョ!』
「シェ…シェリー?」
シェリーはキリナの体をさわさわしている。
『ふふ、こんな華奢なのニスベスベしてて弾力があって触り心地が良いワ♪』
シェリーってそっちの気があったのか!
「ひっ、や、やめて…」
キリナは抵抗するが人間とロボットの力の差から抵抗もままならない。
『うふっ、うふふフ…』
「ひいぃ~」
『グルルル…』
そしてキリナとシェリーの所に一匹の獣が目を光らせる。
「狸助!?」
その狸助はキリナとシェリーのフェロモンによって理性を失ってしまっている。
「狸助!私よ!目を覚まして!!」
『狸助さんも仲間に入れて欲しいノ?ほらッ♪』
キリナは恐怖から狸助に訴えかけるが狸助は小さな体とは似つかず巨大な棍棒を持ってキリナに襲いかかる。
「やだああああぁ!!」
少女のさけび声が廃虚に響いた。
ーーーー翌日
朝日は照るが鶏やスズメの鳴き声は無く、相変わらず魔物の呻き声が響く廃墟。
しかし目覚めたシェリーと狸助の表情はスッキリしていた。
『さあ行きましょうカ!』
朝日に照らされ背伸びをしながら歩くシェリー。
『昨日何があったかよく覚えて無いけど何だか楽しい気がしました…あれ?キリナさん元気無いですね?』
「あうえう~」
キリナは昨晩シェリーや狸助に散々悪戯され、体が真っ白になっていた。
メカと獣の臭いがキリナの全身にまとわりつき、キリナの表情はスッキリしたシェリーや狸助とは裏腹だ。
しかし、キリナはシェリーから悪戯を受ける度自身も新しいスキルを身につける事になるのだった。
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