しっちゃかめっちゃかにも程がある 5
誰か、俺の話を聞いてくれ。聞いてくれるだけでいいんだ。
たった今、俺たちの前にはドラゴンがいる。しかも希少種だ……。
南門の警備隊隊長に任命されて早13年――
今まで何度も強力な魔物たちがこの南門に攻めてきた。
そのたびに、俺たち南門担当特級警備隊は力を合わせてここを守ってきた。
だけど幾ら俺たちでも、希少種のドラゴンには勝てる気がしない。
他の冒険者たちがさらに集まってくれれば、あるいは勝てるかもしれない。しかし今この状態でドラゴンがここに攻めてきたら、別部隊が到着するまでの時間稼ぎくらいは出来れども、この南門担当特級警備隊には多大な被害が出るだろう。命の保証はない。いや、確実に死ぬと言ってもいいだろう。
それほど、ドラゴンと言うものは絶大な力を持つ。
だが、俺はここから逃げるつもりはない。おそらくほかの皆も同じ気持ちだろう。
南門担当特級警備隊として、ここを守る砦として、今まで誇りをもって仕事をこなしてきた。
たとえ最後の一人になろうと、ここから先には行かせない。
たとえ自分の命と引き換えになろうと、この国を守る。
今俺はそう決心した。
しかし、だ
ここにきて逆接である。
決心した矢先だった………。
タァァン
ギゲェァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼‼‼
タァンと言う音と共に目の前のドラゴンは苦しみ出した。
「な、なんだ!?」
「どうやら負傷したようです!!!いや、でも……あの硬い鱗を貫いてドラゴンにダメージを与えるなんて…………、しかもあのドラゴンが絶叫するほどの痛みだとすると急所に強力な一撃が入ったと考えられます!!」
隣にいる青年が咆哮の中無理やりに自分の声を通そうと大声で叫びあげる。
「バカな!こんな状況で強力な一撃を的確に急所に叩きこんだというのか!?。そんなことができるのはそれこそ大剣や大斧のマスタークラスぐらいのはず! そんなことをした者がいるふうは見えなかったぞ!?」
すぐさまドラゴンは自分の足元に大ぶりの噛みつき攻撃をした。まさか、足元に一手を出した者が居るのかとマルコーは焦る。
が、直後――
ドラゴンは宙を舞った。
「「…………は?」」
自分で飛び立ったとは言い難い、不細工な飛び立ち。
まるで殴り飛ばされたかのように中を舞ったドラゴンはクルクルと回転しながらこちら側に向かって、飛来……と言うよりはぶっ飛んできたと言う表現のほうが正しいか、とにかく城壁に向かってきた。
「っえ? ちょ、ま、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ」
「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」」
大きな地響きと共にドラゴンの巨体は城門手前の地面に落下した。
大きくめり込み地面が抉れ薄い焦げ茶色をした一層下の地面がむき出しになる。そのせいで辺りは一面深い土煙に覆われた。
目に入らぬように目を瞑り片手で覆った。しばらくして若干晴れ、周りを見渡し皆が無事かを確認する。
「ど、どうなった!?」
ドラゴンの死体は城門数十メートル手前で止まっていた。もう少し行けば城門直撃だった。
――――いや
死体ではない。
肉塊はグググっと体を起こすと、左目と口から血を流しながら首をぐるりと回す。
「総員構え!まだ生きているぞ!」
完全に体を起こし切ったドラゴン。間を置かず今度は二度目の攻撃を俺たちに繰り出した。
それと同時、いや、少し早いか人一人分の影が森の木の間から現れ、まだ晴れ切ってない砂埃を突っ切って一人の男が姿を現した。
「っな、そこのお前!逃げろぉぉぉ!」
間に合え……!と心の中で念じ、その男に向かって飛び出し、体をつかんでなるべく離れたところへ投げ飛ばした……………つもりだったのだが、素早く男の体に回したはずの腕は空を切り、そのまま勢い余って全身で正面からこけた。
当の男はいつの間にかドラゴンの頭部上空にいた。
そして「トゥ!」と言う謎の声を発し、次の瞬間
とてつもないスピードとパワーでドラゴンの頭部を地面に殴りつけた。
「――――は?」
ギゲェェェェァァァァァァァァァアアアアアアアアアアァァァァァァ…………
そしてドラゴンは動かなくなった。
「「…………………は?」」本日三回目)
再度巻き起こった砂煙の中から、一人の男が姿を現す。
「あー危なかった。まさかこんなに近くに王都があるとは思わなかった」
男の正体は泉だった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
これがかの有名なリアル足が棒のよう……か(笑)と、微笑しながら棒立ちになっている警備隊たちを見る。
「そちらさんたち大丈夫ー?」
警備隊の皆は一斉にこちらを見返した。そして先程飛んできたドラゴンの生新しい鼻っ面の拳の形にへこんだ傷と、たった今俺がつけた上頭部の拳の後を交互に見比べた。
「「「……………………お前かァァァぁァァァああああああああああ!!!」」」
「んえ!?何が?」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今俺は何をしているのであろう。前世は事故死、今世に転生。
無駄にモンスターの大群を退けて(ドラゴンが)、ドラゴンをグーパン二発で沈めて(瞬殺)、
…………………………
何で俺はお城の一室に待機させられてるんですかね。
部屋の中には中心に大理石のような物で出来た横長のテーブルと、それをはさむ様に対となるフッカフカのフカフカ椅子が置かれており、俺たちはその片方に座らされていた。
え、俺なんも悪い事してないよ?やったことと言えば校長の椅子にブーブークッショ(ry
取り合えず勝手にどっかいったらまずいしなぁ。ここはおとなしく待つしかないってかひまぁ!
「なーにあほみたいな顔してんのよ」
暇ですからw
「えーだってくっそ暇だぞー? しかも何で俺こんなところに強制連行されてるの? 別に城壁壊したりとかしてないし…………。原因が分かんないんだけど」
「いや馬鹿なの? どう考えてもドラゴンをソロで瞬殺した件でしょ」
「え? なんであれが? くっそ雑魚かったぞ?」
「いやドラゴンの扱いぃ…………」
直後、部屋の扉が外側からコンコンと叩かれ、扉が開かれるとともに一人の男と甲冑を身に付け槍を右手に持った兵士と思わしき二人組みが後を付いて入って来た。
男は兵士達に外で待つよう指示すると二人とは反対側にある椅子に座る。
いったい誰なのかをエリナに聞こうと右を見ると、そこにはその男が入ってきてから口を開けて固まったままのエリナがいたので、おとなしく会話が始まるのを待つことにした。
「あ……え…………うぇ…………?」
「始めまして、二人とも。まずは少々手荒にここまでつれて来させたことを詫びよう。すまなかった。」
やっぱここにつれて来させたのこいつか。急に甲冑着たおっさん達に腕つかまれてここまで来たが。
「はい若干強引に連れて来られましたけどとりあえず用件は何ですk――ゴッフゥ」
話そうとした瞬間にエリナに力いっぱい殴られる俺氏。ホントナンナンダヨワケガワカラナイヨ。
「ほんっとすみません国王様。この馬鹿には私からきつく言っときますんで」
――とエリナは俺の頭をつかんだまま深々と頭を下げた。
いやまって。
え、いま国王って言った?ねぇ国王って言った?完全に国王様って言ったよね?ちょっと待って俺の前にいるおっさん国王なの?
「気にすることはない。国王とはいえ俺は他と同じただの人間だからな。おっと、自己紹介がまだだったか。俺はルーカス=ジ=フルストリム ここ、王都フルストリムスの王だ」
MA☆ZI☆KA!
「国王だったんすかまじさーせん」
「いや、かまわん。むしろため口でもいい」
「いやさすがにタメ口はだめだからね泉!?」
「でも本人はいいって」
ワーキャー騒ぐ二人を見。そんなことより早く本題に入ろうといった様子でルーカスは懐から一枚の紙を取り出した。
「ん、写真?」
その紙には元の物とまったく変わらないほどに画質のいい写真。そしてそこにはドラゴンを殴り飛ばす泉の姿が映っていた。
「いやいつの間に写真撮ったし(笑)」
「ここ、フルストリムでは主門となる南門のみ常に状況が映像魔法で確認できるようになっている。その中からドラゴンを討伐した人物が一番よく映っている場面を取り出してきたものだ」
「あ、お疲れさまっす」
「失礼でしょ! 自重しなさい!」
ルーカスは写真を直すといすにゆったりと深く座りなおし、腕を組んで二人を見た。
「見た限り、単体で。しかも素手でこの巨体を殴り飛ばしている。かといって身体強化を施しているわけでもなし」
直後、ルーカスから真剣な雰囲気が流れ出す
「単刀直入に聞こう…………………お前は何者だ?」
「…………正直に言ってもたぶん信じれないぞ?」
「信じられない……? いったい何を言っているのか全く分からんが………。取り合えずいうだけ言ってみろ」
「……分かった」
右手で頭をポリポリと掻き、ハァとため息をついた。どう伝えるかを考え、口を開いて事実を述べる。
「俺は、この世界の人間ではない」
「………………………………………………………………?」
「少し前まで別の世界の住人だったが………事故って死んだ。しかもその後意味不明な神様に暇つぶしとか言うこれまた意味不明な理由でこの世界に飛ばされた」
「すまぬ。ちょっと…と言うかだいぶわけわからんかったからもう一回言ってくれないか?」
「えぇ~、まあいいや。『少し前まで別の世界の住人だったが………事故って死んだ。しかもその後意味不明な神様に暇つぶしとか言うこれまた意味不明な理由でこの世界に飛ばされた。』よし言ったぞ? これあかるさまにコピペって読者にばれるからこれ以上は言わせないでくれ」
「そ、そうか。余計意味不明な言葉が出てきたが……なんかすまぬ」
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