しっちゃかめっちゃかにも程がある 3

 俺達は互いに自己紹介をした。


 少女の名前はエリナ=グランズ=モント。

 年は17歳で、魔法使いだとか。

 それを聞いて「やっぱり魔法はあったんだ!」とメチャクチャに喜んだ。


(後に自分の適正が素手と狙撃にしかないためスキルである超電流操作意外の魔法は例え覚えたとしても全く使えないことに気が付き、心が折れそうになったことは言うまでもない)


 そして、俺の方は自己紹介と共に自分がここに来るに至った経緯をすべて話した。


 

――――――――――――――――――――――――



「えーと、つまり…………泉はこの世界の人間じゃないてこと?」


「理解が早くて助かる、天才かな?」


 ぶっちゃけたところ俺本人ですらまだ理解が完全には追い付いていなかったため、説明が支離滅裂になってしまった。

 それにも関わらずエリナは一度説明を聞いただけで俺の言いたいことを完全に理解してのけたのであった。

 が、やはり信じきれないのか先ほどからずっとこちらをじろじろと見続けている。


 それもそのはず。


 初めて会った人が急に「自分は別世界から転生してきたんだ!」などとほざいているのだ。


 信じるほうがおかしい。


「にわかには信じ難過ぎるんですけど………」


「ですよねー、でもマジなんだこれが。この世界のことも全く知らんし」


「えぇぇ……」


「もし本当だったとしたら限定的だけど、色んな宗教の言ってることが現実味帯びてくるなー。輪廻転生とか神様とか」


「あ、この世界にも宗教はあるんだ」


 エリナは一瞬「は?」と言う顔をしたが、俺が自称別世界の人間であることを思い出す。


「え、まさか…」 


 そして、信じられないと言った表情でこう言った。


「もしかして……本当に何も知らないの?」


「さっきからそう言ってるんですが」


「え、王都の場所とかこの森の抜け方とかも!?」


「全然」(ドヤッ


「ドヤッじゃないわよ、本当なの?」


 呆れ顔で泉を見つめるエリナ


「転生直後の無知っぷり……なめんなよ、俺は…むしろこの森がどこにあるのかも全く知らないぜ」


「そう…それは………」





「死ぬわね☆」(キリッ

「え、俺死ぬん」


 言ってやったと言わんばかりの顔を謎効果音『キリッ』、と共に俺に向ける。


 と、その直後。エリナの背後から木々が倒れる音と共に大量の地響きが近づいてくる。


「「……ん?」」


 さっと音のほうを見る。

 地響きとともに、何かが迫っているようだ。いや…地響きと言うよりは……軍勢?


「………まじか…」


 なんと少し遠くから、さっき戦ったのとは別のジャイ・アントの大群。

 謎のグネグネしたそれこそスライムと言う名がふさわしい謎の生物多数。

 全長2m近いオレンジ色の肌を持つ角の生えた人型の何か多数。

 その他大量の魔物と思われる者たちがぞろぞろとこちらに向かって大行進をしていた。


 それを見たエリナはあんぐりと口を開け、停止中。




「コミケかな? ここは」


 はっと我に返るエリナ。

 取り敢えず、ファインティングポーズをとってみる。

 まあ要はこいつら全員倒すつもりで――――


「いやいやいや、待って、あの数はさすがのあんたでもマジで死ぬから!大人しく逃げよ?!」


「そうだねー」(棒


「絶対逃げる気ないでしょ!」


「うん」


「正直!」


 取り敢えず真っ直ぐ突撃しようとしてみたが、

 それをエリナが全力で殴る形で止めた。


 こうして俺達が騒いでいる間にも、魔物は迫ってくる。

 そしてついに、その内の先頭の緑スライムがこちらに向かって飛び出した。


「だから突っ込もうとしない!」


「別に死にゃーしないし、ってうおっと!」


 弾丸のような速度で飛び出した緑スライムは、瞬時に反応した左手によって止められる。


 しかしその直後、手に付いたバスケットボールサイズの緑スライムはグネグネと動いたかと思うと、俺の体を覆い始めた。


「泉!」


「うわきもい!」


 反射的に全身に走らせた電撃でスライムは黒く焦げ、灰になって散っていく。

 それを見ていた前線の魔物はその謎の力に一瞬動きを止めたが、すぐに行進を再開した。


「これ何匹いると思う?」


「1000は超えてるって!はやくにげよう?!」


「……よし」


 ぐっと大勢を落とし、フゥと深く息をした。

 そして次の瞬間、再度俺は飛び出していた。


 その一連の動作に反応できずたじろぐ魔物の内人型の魔物を殴り倒し、それをさらに大群に向かって全力で投げ飛ばした。


 その死体に飛ばされて全線の複数の魔物が行動不能となる。


「いや何してんのー!?」


「え、嫌がらせ」


「いや嫌がらせってレベルじゃないでしょ!思いっきり攻撃だよ!?刺激してどうすんの!?これマジで死――――」

「しらんがな、よっこらせッと」


 本気で焦るエリナの言葉を遮り、エリナを抱きかかえた。


「え、何!?」


「なにってそりゃまあ、逃げるんだよ。さっき言ってた王都ってどっち方面?」


 エリナはばっと上を見て、その方角を確認した。

 そして間を置かず、青ざめながら魔物の大群を指差す。


 エリナは自分でも信じたくはなかったが、魔物の大群は丁度二人と王都の間を遮るかのように存在していた。


 これではたとえ逃げ切れても王都まで行くのは難しく、しかもこの森にはそこ以外に街はおろか村も近くにない。

 

 つまり途中でこの大群にやられる可能性が高い、とエリナはいっそう青ざめた。


「そうか!じゃあ行くか!」


「………………は?」


 まあ、行くんだけどな(笑)


 大群に向かって歩き出す。

 そしてすぐ、急にもんのすごいスピードで走り出した。


「ま、まさかあの中を突っ切るつもりじゃなあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「いっくぞおおぉぉぉぁぁぁああああああ!」

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