第16話

ばふっ!


雪煙の中からワタルが飛び出す。


「オー!」


カメラを構えたしのさんが歓声を上げる。


「今日は雪が軽いねー。パウダー滑り放題」


ワタルはずっとニコニコ顔だ。


「しのさん、朝から雪下ろし頑張ってくれたもんね〜」


「わたしも頑張ったよ!!」


朝食前にしのさんが車の雪下ろしをしてるのに気づきワタルと表に出た時にはもう終わっていた。じつはポコちゃんが手伝ったのは終わりの10分だったらしいけど、それでも寝こけていたじぶんたちよりはるかに偉い。そのおかげで今日はリフト一番乗りで滑れている。


「風もないし、今日は本当に当たりだね」


そう話している間にもウェアには雪が降り積もっていく。積もるのも早いが、少し体を揺すれば落ちるくらい軽い。


「やっぱボードで来ればよかった〜。持ってきてないけど」


しのさんが大げさに天を仰いだあと下を向く。


「アハハ。それちょっと思った」


笑いながら答える寺ちゃん。


「ボードはちょっと上手く見えるしね」


「そこはまぢで上手いから!!」


ポコちゃんのツッコミにすぐにしのさんが反応する。


「今日のMVPはワタルだね」


カメラを片付け中のしのさんに声をかける。


「さっきの雪煙は凄かった。・・・ちゃんと撮れてればだけど」


「え〜」


「意地悪なこと言わないの」


「大丈夫、大丈夫。ちゃんと撮れてるの後ろで見てたから」


ワタルと寺ちゃんにしのさんの冗談であることを伝える。まぁ、寺ちゃんもワタルもわかっていてのお約束ではある。


「次、わたしが撮る!」


ポコちゃんが奪うようにカメラを受け取る。


「フォーメーションやろっか?ワタルの動画を超えないと」


しのさんが寺ちゃんに話を向ける。


「わたしできるかなぁ〜」


「転んだらそれはそれで美味しいよ」


「それ、ポコのポジションだから」


「ちっがーう!転ぶのはヨッシーの担当」


「いや、ヨシのコケ方はガチすぎて」


「ドン引きだね」


ワタルの締めになぜかポコちゃんが得意顔だ。ある程度わかっているだけに目の前での掛け合いは居心地が悪い。ただし、この遠征では板を外した大ゴケはしていない、2回しか。


「今日はコブも埋もれてるしさ、パウダー撮りでしょ」


「よし、できた。しゅっぱーつ!」


カメラをザックに収めて準備のできたポコちゃんがリフトへ向けて元気に滑り出した。




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