第14話

「やっぱりスキーだと感覚ちがうね」


久しぶりにスキーするというしのさんに巻き込まれた寺ちゃんが笑いながら言った。寺ちゃん一家はお父上が主体となって毎年スキー旅行があるという。


「ヨシから見てどうよ?」


しのさんがこちらへ話を向けてくる。


「う〜ん。じぶんがいうのも申し訳ないけど、すごく洗練されてる。というか・・・普通に上手い。それだけ滑れるなら普段もスキーすれば良いのに」


「スキーも好きだけど、やっぱり今はボードかな」


「ほら、な?ボードだって。ヨシの転向決定!」


寺ちゃんトークにしのさんが乗っかり満面の笑みで宣言する。


「そんなこと言って、今日は3人ともスキーだけどね」


一瞬目を丸くしたしのさんを見て、今度は寺ちゃんが爆笑する。確かにスキー履いてボード転向を推してくるのは何とも間が抜けている。3人で笑っているところにワタルとポコちゃんが合流した。


「雪、重すぎー!」


「ツリーラン、疲れた〜」


ポコちゃんの叫びにワタルが被せる。今回、都合が合ったのは5人。せっかくスキーするならと寺ちゃんチョイスで菅平に遠征となった。菅平は家族旅行でも来るという。ちなみに途中で板をかえないように縛りを入れたので、しのさんも寺ちゃんもスキーしか持ってきていない。


「結構寒いね」


時折り小雪のチラつく曇天を見ながら寺ちゃんが言う。


「そりゃ、ハイシーズンの菅平だもん」


少し頬を赤くしたワタルが笑う。バーンはよく締まっているが、踏まれてないところは大変だったらしい。


「風がないから大丈夫だろ。根津ちゃんも来られたらよかったのに」


「根津っち、どうしたの?」


「今日は実家の手伝い」


ポコちゃんの問いにしのさんが答える。普段から車を止めさせてもらっている通りタケ坊の家は農家なので色々頼まれることも多いらしい。ぼやいてはみせるもいつも面倒がらずにこなしている。


「来週は強制連行しようぜ」


「だね!」


「次はヨシがボード縛りだから」


「その前にスキーの楽しさに目覚めたしのさんがスキーやろうって言い出しそう」


「ないない!」


少し得意げにポコちゃんが答える。


「お前はオレか?」


お約束のツッコミを入れるしのさんを全員で笑う。いつしか雪は本降りになりそうな勢いで降り始めていた。






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