第13話
「ヨシ、最近は付き合い悪いんだって?」
電話の向こうでしのさんが笑う。言いつけた犯人はタケ坊だ。思い返せば飲み会のお誘いを2度ほどスルーしていた。
「しのさんほどじゃないけどね。そっちは?」
チクリとやり返し話を続ける。年明けは少し元気がないように思えたが今日の声は明るく聞こえた。
「相変わらずかな。彼女と別れたくらい」
「あ〜・・・。大丈夫?」
「平気へいき。やっぱ冬は滑りに行かないと。なんか充電されないわ。ヨシは元気そうだな」
このところレッスンを受けにゲレンデ通いしている近況を伝えるとそれもタケ坊から聞いていたらしかった。
「俺も久しぶりにスキーやるかなー」
しのさんがスキーを履いたのはかなり前。おそらくコブで悪戦苦闘するじぶんにヒントをくれようとしたのだと思う。岩手県に配属されていた時、コブばかり滑っていたという。習ったわけではないので理屈は勘弁と言いつつ、コブのラインどりや意識していることなども教えてくれた。実際その粗のない滑りを周囲の人が目で追っていた。そのスペシャルレッスンで得たものは多かった。完走できなかったラインも3回に2回は完走できるようになった。もっとも本人は残念なことに「やっぱりボードだな」と決着したらしい。何かにつけて人にボード転向を進めてくるのがお約束となっていた。
「イイね。土日のどっちにする?」
「せっかくだから泊まりは?あっ、レッスン?」
「ひとりなら行ったけど。しのさんが出るなら合わせるよ」
スイッチが入ったらしくすぐに候補地があがる。泊まりならエリアを変えて遠征もありだろう。各スキー場の推しポイントで盛り上がるも、しばらくお休みのしのさんはもちろんレッスン通いのじぶんにも、ホーム以外の状況はわからなかった。
とりあえず朝6時にいつもの畑集合。しのさんが宿を押さえ、声かけはタケ坊に丸投げすることに。決まらないことの方が多いまま電話は終わった。
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