第12話
「とりあえずシーズンイン!かんぱい!!」
タケ坊の掛け声に一斉にジョッキが音を立てた。11月の土曜日。初滑りに行った帰り、いつもの居酒屋で打ち上げとなった。殆どが知った顔で、今日のメンバーは飲み会からの合流組を入れて8人だった。ノンアルビールもジョッキに入ると雰囲気がでる。見た目は非常にビールっぽい。
「ワタル、板替えたよね」
目の前に座るワタルに声をかけた。
「今シーズンはちょっと頑張ろうと思って」
少し照れたように笑う。
「そういえば先月、根津ちゃんと飲み行ったんでしょ」
「そうそう、出張で近所に来たって連絡きて。しのさんに彼女ができたって凹んでたよ」
あ〜、とワタルが微妙な笑顔で首を傾げた。
「えっ?コレまずい話??」
「実は、大変らしいんだよね」
何ともよくわからない話だが、しのさんが告白されて付き合いが始まったのは確からしい。しかし、付き合い始めてみれば彼女の方から頻繁に別れ話を切り出しては翌朝にケロッとして連絡してくるようなことがしょっちゅうとのこと。さすがにしのさんも許容範囲を超えて別れを告げると今度は泣き出して大変なことになるという。
「何だか、辛いなぁ」
自然と感想が漏れるとワタルも頷きながら烏龍茶を呷った。今朝もしのさんは確実にいるものだと思っていたら欠席だった。結局、しのさんが復活するのは年が明けてからになる。
「セキも今日からメンバー入ったからよろしく」
タケ坊が背の高い子を連れてきて紹介する。ワタルが自然に手を出して握手するのに続いて僕も握手する。ワタルは育ちが良いのか屈託なくこういうことをする。(何このノリ?)
関口君は明るいキャラだった。職場の先輩に無理やり付き合わされてるんじゃないの〜?という声に慌ててフォローしていた。タケ坊が気に入りそうなナイスガイだ。あまりこの手の話はしないが、地域のボランティアに参加したり、子ども会の裏方を手伝ったりとタケ坊は僕が真似できないレベルで面倒見が良い。
で、今回連れてきている女の子たちは料理教室で一緒のクラスになった子たちのはず。先シーズンの飲み会以来なのでたぶんだけど。皆、滑ってみたい気はあるようでタケ坊の写メに盛り上がった。殆どの子がボードをやってみたいと、、、それ、先シーズンも聞いた気がする。
この日は何故かプリンの話で盛り上がり、22時まで付き合って先にあがった。一応、しのさんに今日のゲレンデ状態と明日も行くことだけメールした。
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