第6話

渋滞にはハマらなかった。約束した居酒屋の駐車場に到着する。居酒屋へ行っても飲めるわけではないが、それが冬シーズンのお約束だった。


「よっ!」


しのさんが、車から降りて手を上げた。


「案外、早くついたな〜。ここら辺、スピード違反の取り締まり結構やってるから気をつけなよ」


「大丈夫、道が空いてただけ。ゆっくりきたよ」


しのさんの車から女の子が2人降りてくる。雪山グループの見知った顔だ。しのさんが声をかけて連れてきたという。


「だってほら、男2人でノンアル飲んでたって侘しいだけでしょ」


「言っとけ!」


ピシッとデコピンの良い音がする。


「ちょっとー、あたしのポコに何してんのよ〜」


寺ちゃんが笑いながら前に出た。寺ちゃんというあだ名はお寺の娘だからと聞いていたことを思い出した。


「いった〜い」


あたまを抱え込んでかなりオーバーなリアクションをとりながらポコと呼ばれた子がしのさんに文句を言う。


「悪りぃ。ほら、今日は好きなもん食っていいからな?」


「好きなもんっていつも割り勘じゃん〜。本当に痛い〜!!」


その一言にみな笑いだす。その日の打ち上げはいつもより長く盛り上がった。しのさんも出張の仕事がうまくいったと普段より饒舌だった。寺ちゃんは会社の先輩からプロポーズされたとご機嫌だ。そんな中、ポコちゃんは誰の話でも全部拾ってはツッコミを入れまわりからイジられていた。


「それにしても、ずーっと滑りに行ってたんでしょ?よく続くよね〜」


「まぁ、ヨシとは毎週会ってるな〜」


しのさんが笑う。隣で物言いたげなポコちゃんがいる。この子はたぶんしのさんのことが好きなのだろう。一度、山へ向かう途中の車でそう指摘したことがある。そんなことねぇよとトボけていたが、本人も薄々は気づいていると思う。もっとも、雪山以外の繋がりで言えば余計な世話を焼くほどに馴れ合ってはいない。かといってプライベートは雪山以外の繋がりを排除して、好きなもので通じている。いま自分たちがまとまっているグループはそんな集団だった。


「で、週末はどうする?」


「行く!」


しのさんのフリに間髪入れずポコちゃんが答える。まわりを見てしのさんが笑う。


「じゃ、決まり!俺が車出すよ」


週末の予定はすぐに埋まった。







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