第3話

◯月蝕家(夕)・リビング

コタロウ「さあめしあがれ!」

   キッチンテーブルにずらっと食事が並ぶ。

うおのめ「ごちそうさま」

   瞬間、うおのめが全て平らげる。お腹パンパン。

うおのめ「…満腹も体のSOSだ」

コタロウ「空っぽの冷蔵庫なんて初めて見たよ! むむむこれは冷蔵庫のSOSだ

 ね!」

うおのめ「助かったぜ 三日間水しか飲んでねえところに メチル流し込まれた

 んだ」

   コタロウは神棚に置かれた母の遺影に線香と夕食を供える。

うおのめ「…おめえ 一人で住んでんのか?」

コタロウ「うん 一年ぐらいだけどね」

うおのめ「……」

コタロウ「いただきます」

   コタロウ、折れた腕を三角巾で吊るしながら食事をとる。

   間。

うおのめ「…病院行かなくていいのか?」

コタロウ「これぐらいの怪我 唾つけるまでもないよ!」

うおのめ「…母ちゃんはなんで死んだんだ?」

コタロウ「病気だって 難しいことはわからないけど」

うおのめ「…寂しくないか?」

コタロウ「考えたこともなかったよ ーーごちそうさま」

   コタロウは食器を片付け始める。

コタロウ「さあさあお客人! あなたには一番風呂の権利があるよ! ぼくは後

 片付けがあるからお先にどうぞー」

   コタロウは鼻歌を歌いながら食器を洗い始める。

うおのめ「…その腕で どうやって体を洗うつもりだ?」

   コタロウは一瞬戸惑った表情を浮かべる。

うおのめ「一緒に入るんだよ」


◯同(深夜)・二階のベランダ

   うおのめ、ベランダに立ち携帯電話を耳に当てる。部屋の中ではコタロウ

   が無防備に寝息を立てている。やがて電話口からメバチ子(20)の声が

   きこえる。

メバチ子「馬鹿。馬鹿。馬鹿。馬鹿。馬鹿。馬鹿。馬鹿。馬鹿。馬鹿。馬鹿。馬

 鹿」

うおのめ「……」

メバチ子「監視対象と接触するなんて正気ですか!? 生きてますか!? 死に

 ます!?」

うおのめ「…死なねえよ」

メバチ子「なんでこんな考え無しがわたしの上司なの…っ!?」

うおのめ「いじめられてんだぞ!? 放っとくわけにはいかねえだろ!」

   ついカッとなって大きな声を上げる。

メバチ子「そこに忍び込んだ以上必ず見つけ出してください 『生命電気・アパ

 タイト』どこかにあるはずです 我々『シロモノ』のひいては人類の未来に関

 わります」

うおのめ「わあってるよ…」

メバチ子「…コタロウくんはどうですか?」

うおのめ「お人好しを通り越してノーガードだ ったくどういう育てかたしたん

 だ? …月蝕先輩は」

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