第4話

◯コタロウの家(朝)・リビング

   翌日、うおのめが起きるとコタロウの姿はなく置手紙が置いてある。

  『学校に行ってきます。ご飯は冷蔵庫に入っています』

うおのめ「そうか…あいつ小学生だったか…」


◯小学校(朝)・6-2の教室

   コタロウは自分の席に座り授業の準備をしている。バン! といきなり机

   が叩かれる。コタロウが見上げるとセーラー服にロングスカートのスケバ

   ン風の少女、佃亜子(12)がものすごい剣幕でコタロウを見下ろしてい

   る。

コタロウ「あ! アッコちゃん! おっはよーーうおぉおぉおぉおおお!」

   亜子はコタロウの胸ぐらをつかんで揺する。

亜子「そのイカした三角巾は まさかファッションアイテムじゃねえよな

 あ!?」

コタロウ「ふ ふぁっしょんあいてむ ダヨー?」

   亜子は事態を遠巻きに眺めていたいじめっ子たちに気づく。

   コタロウから手を離して彼らの方へ行く。

亜子「てめえらか?」

いじめっこ「だったらなんだよ」

   両者にらみ合う。間にコタロウが割って入る。

コタロウ「ダメーッ! アッコちゃん喧嘩はダメーッ! 喧嘩をすると お腹が

 減るんだよ! 今からお腹が減ったら給食までもたないよ! 三時間目ぐらい

 で餓死しちゃうよ! うわーん アッコちゃんと死んじゃいやだよおおお! 

 ずっと一緒に居たいよおおお」

亜子「ーーえ!? ずっと… ぇえっ!?」

   亜子、赤面してうろたえる。

   クラスメイトたちはやれやれまたかみたいなため息を吐く。

亜子「てめえら! 次やったら容赦しねえからな!」

   亜子、教室の扉を蹴り破って飛び出していく。

   いじめっ子たちは忌々しげに舌打ちをする。


◯コタロウの家・綺愛蘭の部屋

うおのめ「こ これは…」

   うおのめ、うっかりタンスの中から女性物のパンティを見つけてしまう。

うおのめ「って死人のパンツに ドギマギしてんじゃねえ!」

   パンツを投げ出し畳の上に大の字で寝転ぶ。

うおのめ「あーっ なんも見つかんねえよおおお」


◯スーパーマーケット(夕)・外

コタロウ「えへへ ちょっと買いすぎちゃった」

   コタロウは大きなビニール袋を二つぶら下げてスーパーから出てくる。

   だがいじめっ子三人組がコタロウを待ち伏せている。

いじめっ子「よおコタロウ遊ぼうぜ」


◯幽霊団地(夕)

   「KEEP OUT」のテープに覆われ廃墟と化した団地。コンクリや窓ガラス

   は砕け、外には室外置きの洗濯機がそのまま放置されている。その一角に

   コタロウたちは座り込んでいる。ビニール袋の中身が辺りに散らばってい

   る。

いじめっ子「うげえ おれ野菜キライ」

   いじめっ子の一人が、野菜を投げ捨てる。

コタロウ「だ ダメだよ! 食べ物を粗末にしちゃ…っ!」

   コタロウはそれを拾い集める。コタロウが動くたびに首からぶら下がった

   ペンダントが揺れる。

いじめっ子「それ 亜子と同じペンダントだよな」

コタロウ「え? ああ これは」

   コタロウが言い切る前にいじめっ子がそれを引きちぎって地面に叩きつけ

   る。ペンダント粉々になる。

いじめっ子「学校に関係ないもの持ってきちゃいけないだあ」

コタロウ「…そ そうだよね 持って来ちゃダメだよね」

亜子「バッカ野郎があああああ!」

   亜子の拳(メリケンサック)がいじめっ子の顔面にめり込んで吹き飛ぶ。

亜子「自分が何したかわかってんのか! おふくろさんの形見だぞ!? あたし

 とコタロウとおふくろさんの 三人の…」

   亜子、粉々になったペンダントを集めて握る。

   いじめっ子は前歯と鼻を折られてパニック状態。

亜子「…許さねえ」

コタロウ「だめだアッコちゃん! 喧嘩はっ! 死んじゃうよ!」

   コタロウは亜子を止めに入るが、しかし彼女の方が力は強い。

亜子「…離せ 離せええええええええ!」

   コタロウ、亜子に跳ね飛ばされる。

   直後彼女の姿が消える。先ほどまで亜子のいた場所には洗濯機がある。洗

   濯機から牙が生えて、中からバリボリと嫌な音がする。プッと洗濯機が何

   かを吐き出す。コタロウの元にひらひらと落ちてきたのは亜子の服。洗濯機

   の巨大な目がぎょろっとコタロウたちを捉える。

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