2.生き残る意味
「虎威です」
変人はそう言った。
「やだな、変人じゃあないよ」
「このクソ暑い森でウサギの着ぐるみ着てるやつが変人じゃないわけないだろ」
僕は早口でそう言った。
「暑い...?」
「まさかお前...それで暑く無いのか?」
そんなわけないよな?
寒いから着ているという線は無いよな?
というか寒くても着ないけど。
「ん、あーそっか、なるほど」
何か理解したらしい。
って、あぁそうだ。
人(?)に会えた事で安心しきっちゃって忘れてた。
「あ、すみません、ここ何処ですか」
本来なら一番最初に聞くべきだった。
「あぁ、ちょっと待ってね」
「あ、はい」
彼が左手の辺りに触れると。
光が現れた。
「え!?」
「ほら、君も」
僕はウサギ人間に手を掴まれ、彼と同じ動作をさせられた。
左手から光が流れ出す。
だんだん鮮明になって、最後には。
「ゲーム...みたいだ」
ゲームで言うところの、ユーザーインターフェイス。
これどういう仕組みだ。
科学の力ってすげぇ...
装備、持ち物等が投影されている。
「とりあえずこれを」
ウサギ男の目の前から、指輪が出現した。
「え、え?」
「着けて着けて」
無理やりはめられた。
え...あれ。
「涼しい...」
喉が潤う。
汗が消える。
「よし、これも外すか」
着ぐるみの頭が消える。
現れたのは。
オッサンだった。
「えっと...それで、ここはどこ、だったかな」
え、あ、そうだ。
「ここはレクトアイランド...どっかの誰かの島だ」
島。か。
なら帰れそうだな。
「じゃあ、帰れるんですよね、よかった...」
誰かの持ち島だと言うなら、行き帰りの方法もあるはずだ。
「いや、無理だ」
「え?」
「だから無理なんだって」
え?
いやいや、え?
帰れないはずないだろ。
「落ち着いて聞いてくれ。」
帰れないと知って落ち着ける訳ないだろ。
「俺は、帰り方を探している。」
「...ということは、虎威さんも...」
ああ。そういうことか。
「じゃあ、誰も帰る方法を知っている人は居ない、と。」
「ああ。」
うっそだろ...
本当にどこだ?
意味が分からない。
だが虎威さんは、こう付け加えた。
「だが、帰ったやつは居る」
「え?」
「そいつは、これを残して行った」
一枚の紙。
それには、こう書いてあった。
ーーー
あー、いきなりだけど、お前は死ぬ。
多分な。
俺も死にそうだ。
おかしいゲームに参加させられてる。
俺もお前も。
辛いか。
だが生きる術はある。
サバイバルだよ。
左手に指をかざせ。
多分俺は死ぬ。
お前は生きてくれ。
このクソゲーを。
追記.努力しろ、帰る方法を見つけた。
お前も、つまり帰れる。
だが時間が無い。
塔に行け。
そこにヒントがある。
じゃあな。
あきらめるな。
絶対に。
ーーー
「これは...」
俺らより前に来た人の...
「そうだ。こいつは帰ったんだよ、この世界から。」
それじゃあ帰る方法は...
「絶対ある。とは言い切れないが...俺はあると信じてる。」
まだ、理解はできないけど。
家に帰れる方法はあるのか。
なら、やることは一つ。
「虎威さん、ここの事、教えてください」
「おうよ、少年、名前は?」
「如月 朱音です。」
ーーー
ここは[レクトアイランド]。
何故分かるかと言えば、メニューの右上に
[現在地レクトアイランド]
と書いてあったからだ。単純。
ここは異世界じゃあない。
ゲームと現実が織り混ざった世界。
メニューってのは、左手を触ると出るやつだ。
メニューでは5つのことができる。
装備
持ち物
クラフト
データ
本当にゲームみたいだよな。
仕組みを教えてほしいぜ。
装備は、防具を、頭、上半身、下半身、足、特殊に分けて着ることができる。
その装備のステータスを見ることも出来た。
ちなみに今の装備は、これだ。
頭 無し
上半身 初期装備.防御力.10
下半身 初期装備.防御力.10
足 初期装備.防御力.34
特殊 クーラーフィグ
THE初期って感じだ。
高い靴だからか分からないけど靴だけ強いな。
ちなみに泣きたいけど我慢だ。
帰るんだから。
ちなみに虎威さんは違う防具に変えていた。
ウサギは...さすがにね。
次
持ち物
これがすごい。
[持ち物]を開いて、そこら辺の石をホログラムに突っ込むと...
持ち物
石.1
となる。
どうやらこの世界の単位は数字だそうで、12gなのか12kgなのか分からないが、とにかく12だそう。
すごいよな、これ。
いやホント。
帰りてぇ...
次
クラフト
さっき説明した持ち物に必要な物を入れて、ツルハシだとか、剣を作れる。
僕は作れないけどな。
ははは。
どうやらレシピ的なのを獲得しないといけないらしい。
ははは。
データ
プログラムみたいな物で、例えば
[石のツルハシ][破壊]→[修理]
みたいなことができる。
壊れたら自動で修理だなんて...便利な世界だな。
ホント...ね。
ーーー
2日後...虎威さんの簡易拠点があるらしいので、そこに向かう途中。
「とりあえず、自衛手段が必要だな」
「え?あ、はい」
実は、2日で三度ほど一話で出てきたモンスターにやられている。
三回とも虎威さんが助けてくれたが。
ちなみに虎威さんの武器は、弓と麻痺矢だそうだ。
出会った時使っていたのはこれだ。
「よいしょ、と」
虎威さんの前に光が集まる。
出したのは...剣だった。
「こんなんどうだ? 使ってみたい年頃じゃないか?」
「はぁ...重そうですね」
金属製だし...デカイな、あと持つとこが赤い。
「って軽!」
「そうだろ?俺も初めて持ったときはびっくりしたよ」
サランラップの芯レベルの軽さだった。
メニューを開く。
赤甲の剣.攻撃値.142
強いのかわかんないな。
「少年、ちなみに例の恐竜が体力1500くらいだったな」
ええ...10回以上殴らないといけないのか。
「ああいや、結構強いぞ、それ」
「ちなみに虎威さんのはどれくらい何ですか?」
こっちこいこいと呼ばれる。
「こんなもんだな」
アドショットボウ.攻撃値.121
え?
これであいつ麻痺ったのか。
「とはいっても、あいつらは個体値があるからな」
個体値
単純に言えばレベルだ。
虎威さんはそれを見ることができるアイテムを持っている。
「体力と麻痺とかの耐性は違うからなぁ、あいつはLv1だったし」
「だからいつも麻痺させて逃げてるんですね」
「そうだな、わざわざ倒しても意味ないしな。死にたくないし。」
死ぬ。
死か。
「この世界で死んだら...どうなるんでしょうね」
「さあな、だが、リスポーンなんて希望観測でしかない」
「...そうですね」
...。
「よし、じゃあ明日は一人であの恐竜を倒してもらうぞ」
「はい...え?」
ーーー次回、朱音、死す!バトルステンバイ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます