第18話 そこ

 中学生の頃、水泳の大会に出場することになったんです。スイミングスクールの友達が出るって言うんで、流れで出ることになったんですけどね。

 こういう大会のプールってのはスイミングスクールのプールとは違って、深さがあるんですよ。未成年一人を飲み込むくらいのね。 


 それを忘れていたのが良くなかった。


 よーいどん。でプールに飛び込んだんですよ。多分勘違いだと思うんだけどね、誰かに体を撫でられたような気がしたな。単純に冷たいだけじゃなかったんだ。

 泳いでいる最中はなにも起きなかったと思う。というのもプールの底のラインと、隣で泳いでいる誰かさんしか見えていなかったからね。

 問題なのはゴール直後だよ。プールが深いことを忘れてたんだ。いつもある場所に底がないんだから焦っちゃって。でな、慌てて底を蹴ったんだけどな、底が柔らかかったんだよ。


「ぐに」って。

 目の前の視界に細かい肉片みたいのがふよふよしてたよ。


 あれ以来、足のつかないとこでは泳ぎたくないんだよ。

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