第14話
森から戻った俺は、冒険者ギルドに向かっていた。
お金がないからクエストをして、稼がなくてはいけなかった事を思い出したからだ。
塔でも稼げるようだが一〇レベルからだし、まあ塔の事は一〇レベル過ぎたら考えよう。後一つだけど……。
俺は冒険者ギルドの掲示板を眺めた。
クエストはオオカミンにしようと思っている。ダウと一緒に戦えば、数が多くても何とかなるのではないかと思ったからだ。だけど、数が半端ないな。最低でも一〇体からなんだが……。
『なあ、ピピ。オオカミンを受けようと思うんだけど、何体までならダウと一緒にいけるとおもう?』
『そうですね。範囲攻撃もなく戦闘技術も乏しいので、一番少ない一〇体でも大変かと思いますが……』
今回は辛口だなピピ。戦闘技術か。確かにただ切るだけだし、どけるのも下手。魔法の扱いも下手。……言われて当然か。
敵の強さを一つ下げてみるか。えっと、これか? チワワン! 名前から推測できる通り、チワワみたいなカワイイモンスターだ。
見た目が可愛くて攻撃すると、心が痛むんだよなぁ。どうしようかな……。
ツンツン。背中を突かれたようだ。
振り向くとルミさんがいた。
「おう。ルミさん」
「ねえ、もしかしてクエスト受けるの? 一人探していたんだよね。一緒にどう?」
ルミさんの横に居る人物を見た。彼女と同じ鬼人だ。ピンクの髪をツインテールにしている。冒険者の服もピンク。
「えっと、何倒しに行くんだ?」
「オオカミンだよ。数は一〇体。初めて倒しに行くんだけど……」
さてどうしよう。一人三体なら大丈夫か?
『ピピどう思う?』
『そうですね。彼女達のレベルによるのではないでしょうか?』
レベルか……。
俺はメル友でルミさんのレベルを確認すると八レベルだった。これクエストだけで上げているんだったら凄いな。数こなしてるよな。オオカミン初めてみたいだし。
『ルミさんは八レベルだ』
『だったら大丈夫でしょう。もし危なさそうだったら回復して差し上げればHPは全回復するはずですし』
確かに。三〇〇回復するはずだからな。でもそれ、チートなんだよな……。まあいっか。
「俺もちょうどオオカミンどうかなって思っていたんだ。でも数が多いし。加えてもらえるならお願いしようかな」
「よかったぁ。彼女は、モモって言うの」
「モモです。宜しくお願いします」
「あ、俺はキソナ。宜しくな。じゃ受けて来るよ」
俺は二人にそう言って、掲示板のクエスト見た。
場所は双子の丘。オオカミン一〇体。報酬は九〇〇T。予約者はルミとモモ。これだな。……適正レベル十三って。俺達、凄い強いモンスターを倒しに行ったんだな。そりゃ一気に上がるわな。この適正だって、チート込みのだよな。
クエストを請け負い、ルミさん達の元に戻りパーティーを組んだ。
俺はモモさんのステータスを確認する。
名前:モモ
種族:鬼人
性別:女性
年齢:見た目一〇代
職業:冒険者
レベル:八
HP:一六〇
MP:二〇
攻撃:四五
防御:二五
補正:なし
所得スキル:回転
取得魔法:なし
貢献:なし
二つ名:なし
経験値:一一、九八〇
その他:なし
二人共同じレベルだったので、二人のステータスを見比べるが差はない。種族よって固定って事だな。
ルミさんは攻撃力の半分が補正としてプラスされていた。
怪力って攻撃力の半分をプラスだったのか。前の時は値が小さすぎてわからなかったけど。
モモさんの回転ってなんだろう。まあ、表スキルだし普通に使えるヤツだよなきっと。それじゃ、モモさんの裏も見せてもらいます。
――裏ステータス!
名前:モモ
種族:鬼人
性別:女性
年齢:二六歳
職業:冒険者
レベル:八
HP:一六〇
MP:二〇
攻撃:四五
防御:二五
補正:なし
所得スキル:回転 HP吸収 逃げ足
取得魔法:なし
貢献:なし
二つ名:なし
経験値:一一、九八〇
その他:スキルの目覚め保持者
逃げ足がある。これ結構早いけど、持続性なかったよな。スキルの目覚めって何だ? 裏だから普通は手に入らないんだよな。または、手に入れづらいって事だよな。HP吸収も凄いな。これ、攻撃当てたら吸収するんだろうか?
俺、チートらしいのって魔王補正だけだよな。よく考えず選択したから普通のなんだよな。ワープは表のだから比較的手に入れやすい魔法だ。召喚も召喚師にならないと使えないかもしれないが、チートとは言わないよな! 裏にあるのは召喚師じゃないのに持っているからだよな……。
そう考えると俺の場合って、魔王補正で攻撃とか強くなっているだけで、チートスキルってないじゃん!
やっぱりもっと考えればよかったかな。でも役には立ってるよな。使ってないのって幻覚ぐらいだよな。いや、あれ、使う場面がないな。
「キソナさんってなんでHPとMP%表示なんですか?」
「さあ? 俺もよくわかんないだよね」
モモさんの質問に、前に答えた様に同じ答えを返した。
「そうなんだ。色んなスキルが存在するんですね」
「まあスキルって言うより、補正なんだろうね。だからスキル名とか載ってないからわからないんじゃない? キャラ設定の時には○○補正ってあったと思うよ」
何故かルミさんが模範のような回答をしてくれた。なるほど、そういう捉え方もあるのか。
「ワープ持ってるんですね! 帰りワープで帰ってみたいです!」
「いいよ。人数多くても消費MP変わらないし」
「やったー!」
モモさんは、大喜びだ。こんなんで喜んでもらえるとは。うん。わがまま言っちゃいけないよな。ワープは便利だ!
こんな事を話しながら歩いていたら目的地の双子の丘に到着した。エンカウントする前にそれぞれ武器を装備した。
ルミさんは、何故か斧だ! 斧ってドワーフしか装備出来ないと思っていた! モモさんは、刀だな。俺が持っているより短いから長刀ではないな。それを両手に装備している。そう言えば、俺はまだ試していなかったな。二本買ったのに……。
「居たよ!」
ルミさんが叫んだ。エンカウントしたようだ。二人は同時に走り出した。俺は出遅れた! 慌てて走り出す。
ルミさんは、一体一体確実に斧で仕留めて行く。
あれは、ガイさんが装備していた斧より性能が上のだな。だって二撃だ! 恐ろしすぎる! 魔王補正ありの俺と同じぐらいの強さなんだけど!
モモさんは回転している。あの回転のスキルを使っているんだろうけど、ずっと回転している! 目は回らないのだろうか?
両手に武器を装備しているから、一回転で二回攻撃になる。けどたぶんダメは俺達より低いと思うんだよな。今俺は、武器を入れて九五だ。それで二撃で倒れる。たぶんギリギリ倒している。ヒカルと来た時は、三撃必要だったから。
単純に計算して、俺達とモモさんの攻撃力は武器込みで三〇は違うと思う。二回攻撃でも俺達の一回分の攻撃には届いてないはずだ!
でも範囲攻撃で、周りのオオカミンを攻撃しまくっている! こっちも恐ろしい!
うん。二人には回復必要ないな。
で、俺はというと……。かぶりつかれまくりだ! 一体に攻撃している間に、違う奴から攻撃を食らっている。ルミさんは上手く交わしつつ攻撃し、モモさんは回転していて、攻撃をさせる隙を与えていない。
でも俺もチートだ! ダメージは受けてないみたいだ。相手の攻撃より防御力が上だと相手の攻撃はミス扱いになる。下手さを魔王補正でカバーしている!
これでわかった! スキルや魔法があったって使いこなせなきゃ意味がない。俺には魔王補正が必要だ!
戦闘が終わってモモさんのリクエスト通り、ワープでタード街に戻り報酬の三〇〇Tを受け取った。俺はレベルは上がらなかったが、二人は上がって俺と同じ九レベルになった。そして解散した。
今回思った。俺は攻撃より防御がチートだった! 普通の
そして、戦闘が上手なら武器を買った方がいい! 俺は下手だけど……。
そういえば、斧ってどの種族でも装備可能だったっけ?
『なあ、斧って鬼人も装備できるのか?』
『普通はできません。彼女は、グッドラックランダムで補正を手に入れたのでしょう。補正は、ステータスには表示されないものもありますので』
なるほど。自分が補正を持っていたから、俺のHPの%も補正と思ったのか。まあ、魔王補正だから間違いではないけどな。
『そうだ。答えてもらえる質問かわからないけど、スキルの目覚めってどんなのだ?』
『それは、スキルを使用する事によって消費するMPをゼロにするモノです。つまりスキルは使い放題です』
『なるほど。なあ、回転っていうスキルにはMP消費は必要なのか?』
『はい。一回五消費します』
やっぱりそうなのか。気にせず使い放題だからあんなに回転を……。防御にもなるし範囲攻撃だし、いい組み合わせだなあれ。
回転ほしいな。俺が使えばかなり強力だ!
『なあ、あの回転って俺でも覚えられるか?』
『はい。イベントさえクリア出来れば。ただし、今お使いの長刀では、少々リーチが長いと思われます。あまり長いと、味方も攻撃してしまう恐れがあります』
『あぁ、なるほど。ところで、あれって目は回らないのか?』
『スキル使用者は、回転してるように感じない様になっておりますので大丈夫です』
そういう仕組みなのか。確かに具合悪くなる人は一回転でもなりそうだもんな。
さて、攻撃も受けないし、暫くはオオカミンのクエストを受けよう!
『オオカミンのクエストを受けようと思うんだけど、クエスト中に火の玉を使って消せなくても大丈夫だよな? フィールド違うって前言っていたよな?』
『はい。ただ一〇分経っても戦闘終了まで消えません。それにしても、ダメージを受けてませんでしたね。思ったよりオオカミンの攻撃力が低かったようです。申し訳ありません』
『え? ひ、低いって……。いや、そんなに気にしなくていいから』
『ありがとうございます』
低いんじゃなくて、俺の防御がチートなだけだろう! 格好いいスキルはないけど、俺にぴったりなチートだな!
俺はさっきと同じオオカミンのクエストを今度は一人で受け、双子の丘に歩きで向かった。ワープで行くことも出来るが、別に急いでいる訳じゃないので風景を眺めつつ向かった――。
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