第二章 マルとバツ。とんだハプニング!?
第5話
食事が終わり俺は、食堂から出て来た。満腹度は一〇〇%以下だが少しだけなので問題ない。
さてあの冒険者達はいなくなっただろうか? 気にしなければいいだけだが……。
そういう事で冒険所ギルドに向かう事にした。
中に入ると先ほど声を掛けて来たドワーフがまだいた。まだいたが、まあ気にしない!
俺が掲示板の前に立つと、ドワーフは横に来た。相手はほっといてくれないらしい。
「なあ、一緒に組んでクエストしないか?」
そう言って、冒険者認定書を提示してきた。
見せられて邪険にするのもあれなので、確認をする。
名前:ガイ
種族:ドワーフ
性別:男性
年齢:見た目三〇代
職業:冒険者
レベル:三
HP:一〇〇
MP:一〇
攻撃:四〇
防御:二〇
補正:なし
所得スキル:なし
取得魔法:回復魔法
貢献:なし
二つ名:なし
経験値:二六〇
その他:素早さUP
うん? レベルが上がると一律五UPと思っていたけど、それは人間だけなのか? レベル一の時を知らないからわからないが、MPは上がっていないだろう?
俺的には、大発見だ!
うんじゃ、裏も……覗かせてもらいます。
――裏ステータス!
名前:ガイ
種族:ドワーフ
性別:男性
年齢:二七歳
職業:冒険者
レベル:三
HP:一〇〇
MP:一〇
攻撃:四〇
防御:二〇
補正:なし
所得スキル:目隠し 超音波
取得魔法:回復魔法
貢献:なし
二つ名:なし
経験値:二六〇
その他:素早さUP
なんだこの超音波というスキルは。目隠しは何となくわかるが。
「で、どうする?」
ガイさんは、問いかけて来た。どうしたらいいんだ?
チラッとピピを見た。
『宜しいのではないですか。数が少ないのを選べば問題ないかと』
俺の聞きたい事がわかったらしく何も言わずして答えてくれた。
ピピのスキル、以心伝心に偽りなし!
「わかった。一緒にやってみよう」
「そうか。ありがとう。じゃ、先に組んじゃおうぜ」
パーティーを組もうという事だ。どっちが先でも同じなのでパーティーを組んだ。俺のステータスがガイさんに公開された。
「へえ、一人でやってるだけあるな。HPとMPが%か。いったいどれだけの数値なんだか。大量発生を一人で受けていたのも納得いったぜ」
俺のステータスを見て早口で言った。きっとステータスを見たかったのだろう。まあ裏は見れないようだけど……。
「おっと。すまないな。気になったもんで。じゃクエスト選ぼうぜ」
「あぁ。えっと、ラビーがいいんだけど」
「OK。じゃそれで探そうぜ」
よく考えれば、今日INしている殆どがテスターを体験したもの達だ。つまりチート持ち。知りたくなるよな。俺なんて裏も見てるもんな。
ガイさんは、ラビー八体を選んだ。報酬は三二〇T。
俺も請け負い、俺達は近くの森に向かった。
近くの森に入った途端、エンカウントする。
ガイさんは、手に斧を装備した!
おぉ! 斧だ! いや珍しいわけじゃないけど、もう買ったんだと驚いた。いくらするんだろうか? 後で武器屋に確かめに行ってみよう。
この人も一人でクエストを受けていたっぽいな。報酬は複数で受けると受取額が減るから、一人で受けないと貯まらない。
俺もアイテムボックスからナイフを取り出した。
「ふうん。まだナイフか」
俺はドキっとした。よく考えれば俺の攻撃力は二五になっている。ナイフの攻撃力を足しても三〇だ。普通の攻撃で敵を倒していない事がバレバレだ!
表示されている魔法攻撃はない。
俺ならそんな人物に、すご~く興味が湧くな! やっぱりスカーフより武器を買おう! このクエストが終わったら武器屋に直行だ!
「おーい。大丈夫か? 来たぞ!」
ガイさんの呼びかけで、ハッと俺は我に返る。
ラビーは、ジャンプして突進してきていた。慌ててかわす。
危な。ボーっと考え事している場合じゃなかった。
俺は二回攻撃を当ててラビーを一体倒した。ガイさんも同じだ。
斧を装備しても二回なのか……。俺は魔王補正が掛かっているからナイフでも二回で倒せるのか。やっぱり目立つよな? 正体を見せなくても強いのがバレてしまう。って、本当はこれ自慢のはずなのに!!
そして戦闘終了。
俺はラビーの動きについて行けずに、結構攻撃をくらうもHPの表示は八二%だ。一〇〇ぐらいダメージを受けた事になる。戦闘下手過ぎるな……。本来なら瀕死だ。
それに比べガイさんは、一度も食らってなかったな。
そうだ。どうせだから回復魔法を使ってみよう! こんなに減った事なかったからな。
「回復魔法!」
俺は小声で唱えると、一瞬、俺の体を光が包む。
HPを見て驚いた。九八%になった。つまり九〇から一〇〇回復している!
テスターの時は確か、一回に三〇だったはず。……そう言えば、魔法の威力も上がってるんだっけ? 回復量三倍になっている計算だな。
これ攻撃もそうなんだろうか? 試したいけど持ってないからなぁ。
「おーい。おーいってば!」
「あ、ごめん」
しまった。また考え事をしてしまった。
「大丈夫か? 眠いのなら寝た方がいいぞ」
「え? あぁ、大丈夫です」
「じゃ戻るか」
「はい」
俺達は、冒険者ギルドに戻り報酬をゲットした。半分の一六〇Tだ。合わせて八〇〇Tを超えたが武器を買う事にする。強くなる為にではなく、自分の正体を隠す為に……。まあ、強くもなるけどな。
「そうだ、メル友にならないか?」
「いいですよ」
ガイさんともメル友になった。
「また一緒にクエストしようぜ。じゃまたな」
「はーい。お疲れ~」
手を振りガイさんは、冒険者ギルドを出て行った。
俺はメル友一覧を見た。ルミさんはログアウトしている。ヒカルはまだINしていて、彼女も俺と同じ四レベルになっていた。
うん? ガイさんも四レベルになっている。さっきので上がったんだ。あぁ失敗した。ステータス見とくんだった! 上がり方わかったのに!
『お疲れ様でした。キソナ様。これからどうなさいますか?』
「そうだな……」
『キソナ様。思いっきり声が漏れております』
俺はハッとして周りを見渡す。今回はただの独り言の台詞だし、叫んでいないので注目している人はいなかった。
これ気を付けないとこれからもやりそうだな。とりあえず外に出よう。
俺は早歩きで、冒険者ギルドの外に出た。
『スカーフをやめて武器を買う事にした』
俺は歩きながらピピに言った。
『承知いたしました』
そう言ってピピは、俺の後をついて来た。
俺は武器屋に入った。結構人がいる。皆お金が貯まって買いに来る頃合いなのかもしれない。
ふと、斧が目に入りチェックしてみる。
七五〇Tで攻撃力はプラス一五だ。武器は防具より安い目。色んな職業を取得すれば、色んな武器を装備できるようになるからかもしれない。
さて、何がいいかな? 見た目攻撃力ありそうで俺にぴったりのないかな……。
『どのような物が宜しいですか?』
これまた店員のようだ。
『攻撃力がありそうに見えて、俺が持っていてもおかしくない武器』
『それはまた面白いお買い物です。お探しします』
ピピも驚いたらしい。まあ、強くなりたいではなく、強く見せたいだからな。ナイフで攻撃して、斧とほぼ一緒って目立ちすぎる。もっとレベルが高くなれば、色々誤魔かせるかもしれないが、今は足並みを揃えなきゃ。
『キソナ様。これなどいかがですか?』
ピピに呼ばれ行ってみると、剣のコーナーだ。と言っても勧められたのは刀だ。人間と鬼人が扱える武器らしい。
長刀で一,〇〇〇T。攻撃力はプラス一五。
うーむ。微妙に足りないな。もう一回クエストをこなさないとダメだな。
『もしかして、お金が足りませんか?』
『足りないみたいだ。もう一回クエストをこなして買った方がいいかな?』
ピピは頷く。
『どうせでしたら二本買い、二刀流を極めてはいかがでしょうか? 攻撃は最大の防御なりとも申します。盾の代わりにいかがでしょう。それに他の者と組む時は、始めは一本で危なくなったらもう一本だし戦う。そうすれば、疑心をそらす事もできるでしょう』
あ、気にしていたのバレていたんだ。敵わないな。ピピには……。
『バレるのを恐れていたの気づいていたのか。なんか、恥ずかしいな……』
『そこまで怯えなくとも宜しいかと思われます。魔王が種族として存在している事を知る者はいないでしょう』
『はぁ? そうなの? なーんだ』
俺はもう怯えなくていいと、安堵して体の力が抜ける。しかし魔王なのに、怯えるとか情けなくないか?
『強いからといって魔王なのではないかと勘ぐられる事はないと申し上げただけです。逆に大袈裟に隠すと怪しまれるでしょう。裏ステータスを見られない限りは、そこまで疑われる事もありません』
確かにそうだ。他人の裏を覗いてみたけど、どれも知らないスキルだったな。チートスキル持ちなのはみんな一緒なんだ。それがどのような物かを隠しているだけだ。多分、隠しステータスもかなり珍しいのかもしれない。
俺みたいな条件の者に与えられたのかも。見つかればゲームオーバー的なキャラだけ。
『なぁ、裏が見れるスキルってどんなのがあるんだ? 俺は魔王の力だよな?』
『はい。そうです。種族でとなりますとキソナ様だけです。職業ですと、勇者や賢者のスキル「透視」でしょうか?』
『そんなスキルがあるのか?』
『はい。ございます。今の仕様では、裏ステータスを覗かれるのをレジストする方法はございません。ですので、キソナ様のように隠れステータス保持者でなければ判明するでしょう』
やっぱりそうなんだ! よかったのか悪かったのか……。隠れステータスを持っている。でもそれは、隠すモノがあるからで……。上手く出来ているホント。でも必要以上に怯えなくていいってわかったし! 気が楽になった!
『ありがとう! ピピ! よし! 刀を二本買う為にクエストを受けに戻ろう!』
『承知いたしました』
冒険者ギルドに向かう俺の足取りは軽い。
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