第4話

 再び俺は、防具屋を訪れていた。店内を見渡すと、二人の姿はない。俺は迷わず、二人がいたコーナーに向かった。


 そこは、チョッキコーナーだった。

 手に取り見てみると、物理防御プラス五で値段は五〇〇T。うーん。ここには、魔法防御の品はないようだ。


 『何かお探しですか?』


 ピピが店員のような聞き方で聞いた。


 『魔法防御補正のが欲しいんだけど……』


 『ご予算は?』


 『うーん。今すぐには買えないけど、一,〇〇〇T以内がいいな』


 それを聞くとピピは、更に奥に進んで行った。


 『こちらなどいかがでしょうか?』


 もう店員だよな。というか、本当に何でも知ってるんだな。


 ピピのお薦めを見てみた。

 スカーフだ。値段は八〇〇T。魔法防御プラス五。女性専用で職業は冒険者以外取得となっている。


 でもなぁ、女性用の上に冒険者以外取得って、今現在装備していたら流石にバレるんじゃなか? うーん。


 『これ装備したら女性とか魔王だとかバレないか?』


 『装備してしまえば、何という装備品かは露呈するご心配はございません。鑑定を出来る者が現れたとしてもレジスト致しますし、店員にも店外で装備すれば露呈しないでしょう』


 この世界には、プレゼント機能というのがある。つまり買ったからと言って本人が装備するとは限らない。


 うん。それなら大丈夫そうだ。これを買うのを目標にお金を貯めよう! 目標を決めるのは大事だ。やる気が出る!


 俺は防具屋から出た。

 さて、どうやって稼ぐかだ。やはり冒険者ギルドの掲示板からクエストを受けるのが一番いいだろう。敵を倒す依頼なら経験値も入る。


 普通にモンスターを倒しても、『choose one』の世界ではお金は手に入らない。ドロップしないのだ。なのでクエストをやるしかない。

 後は、一〇レベルになると確か塔に挑戦出来て、お金や経験値を稼げるらしい。だが俺はどこにあるか知らない。

 テスターの時は、そこで皆はお金を稼げたらしい。俺は行った事はないが……。


 俺は冒険者ギルドに向かった。中に入ると先ほどよりは空いていた。

 掲示板を覗く。討伐……討伐っと。あった。


 ピン。

 場所は近くの森。コボルトを三体討伐。報酬三〇T。


 これでいいか? レベル上がったし、さっきの半分の数だ。一人でも倒せるだろう。俺はクエストを請け負い締め切った。


 『なあ、クエストって複数請け負えるっけ?』


 『はい。可能でございます。ですが、同じ場所の討伐はお勧め致しません。エンカウントが一緒に発生する可能性がございます』


 「マジ!?」


 つい普通に声をたしてしまい、その場にいた者達が俺に振り向いた! 俺は失礼しましたと、ギルドから足早に逃げ出すように出た。

 めちゃ恥ずかしい! でも内容があれでよかった。


 取りあえず森に向かうか。

 俺は近くの森に向かい着いてすぐにエンカウントした。目の前に三体のコボルトがいる。


 『キソナ様。ご提案がございます』


 『え? 何?』


 『討伐クエストのエンカウントは見た目は変わりませんが、違うフィールドになっております。ですので人の目を気にする事はございません。召喚を行ってみてはいかがでしょうか。召喚獣が倒した敵の経験値は、全て召喚者に入ります』


 『なるほど! いいなそれ! 楽ちんだし』


 俺は、ピピの提案を受け、召喚する事にした。


 「召喚!」


 前回と同じく目の前に一瞬魔法陣が見え、消えると同時に召喚獣が現れた。オオカミに見える。めちゃデカい。俺が乗って移動出来そうだ。


 『ダークウルフですね。動きが素早いですし、コボルト程度なら一撃でしょう。戦闘が終了すると召喚獣は元の場所に戻って行きますので、先に従えておく事をお勧めします』


 それって従えた方がいいって事だよな。


 ポン。

 《従えますか?》


 ポン。

 《ダークウルフのダウを従えました》


 YESを選び、ダークウルフのダウを従えた。


 『主よ。何なりとご命令を』


 ダウはそう渋い声で言った。

 なんか格好いいな。


 「じゃ、コボルトを倒して欲しい」


 『お安い御用!』


 言うが早いか、あっという間に三体を倒した。そして、クエスト終了と共にピピの言う通り姿が消えた。


 『ピピの言う通りだ。ありがとう。助かったよ』


 『お役に立てて、何よりです』


 ピピは、右腕をお腹に横にあて、深くお辞儀をした。まるで執事ようだ。


 ピピを召喚してよかった。物知りと言うか、もうチートだよな存在が!

 チートで一番役に立ってるのってピピだよな!


 『そうだ。次、ダウだっけ? あのダークウルフを召喚したい時ってどうすればいいんだ? 名前指定するとかで出来るのか?』


 『左様です。次もクエストをお受けになるのでしたらまたご提案がございます』


 『なんだ?』


 ピピの提案は役に立つ。聞いて損はない。いや、その通りするに越したことはない。


 『大量発生のクエストをお勧めします。ダウならば、ニ〇体ほどならほとんど一人で倒せるでしょう。倒し損ねても数体。キソナ様も少し戦闘の練習になるでしょう』


 『なるほど。そうするか!』


 『但し一つ問題がございます。先に予約者がいるかもしれません。誰かに予約される前に素早く請け負う。これが出来るかどうかです』


 俺は頷いた。

 確かにそうだ。数が多いのを一人で倒そうという奴はいないだろう。何せレベル制限があるのだから……。

 よし、掲示板に張り付いてクエストをゲットしてやる!


 『それぐらい頑張るさ! 戻ろう』


 『はい』


 俺達は冒険者ギルドに行き、報酬を受け取ると掲示板に張り付いた。こういう時にデジタルだと助かる。ソート機能があるからだ。

 クエストは五分ごとに更新される。どんどん増えていくが、ソート機能があるお蔭で探しやすい。それに誰も予約していないクエストは二時間後に消える設定だ。まあ、同じクエストがまた出るので問題ない。


 一〇分程張っていると大量発生のクエストが出現した。すぐに確認をする。


 ピッ。

 場所は近くの森。コボルト三〇体。報酬は六〇〇T! いつもの倍だ!


 俺は速攻請け負った。まあ、予定より多いが大丈夫だろう。

 そしてまた、近くの森でコボルトと対峙する。


 『キソナ様。先にナイフを手に戦闘の用意をなさってからダウを召喚すると宜しいかと思います。ダウには一緒にと言うのをお忘れなく』


 『サンキュ!』


 俺はナイフを手にすると、ダウを召喚する。


 「ダウを召喚!」


 目の前には先ほどのダークウルフのダウが召喚された。


 「悪いけど、俺と一緒にコボルトを倒してくれ!」


 『承知!』


 一言そう言うと、ダウはコボルトに向かって行く。コボルトも突然現れたダウに驚くも集団で襲い掛かる。

 ダウが一瞬にして引き裂くと、コボルトは倒れ消滅する。次に襲い掛かってきたコボルトも引き裂くが、一体は逃れ俺にターゲットを変え襲い掛かって来る。

 レベルが上がり、魔王補正でもう一つ上のレベルの強さの俺は、コボルトを一撃で倒した。


 基本レベルアップでは、HPとMPは五ずつ増える仕様だ。後は職業やスキルなどで増え、足りない時は、武器や防具で補う。そこは他のゲームと一緒だ。ただ、他のゲームと違い死亡すれば、レベルが下がる恐れがある。装備は要になるだろう。

 俺はペナルティーないけどな。


 俺が倒したコボルトは四体。後はダウが全て倒してくれた。

 強いなダウ。いやぁ、最初はHP減るし召喚選んだの失敗かなっと思ったけど、すげぇ役に立ってる! むしろ選ばなかったらアウトだったかも!


 さて、レベルどうなったかな?

 一気に四レベルになっている!


 『レベルアップおめでとうございます』


 『ピピもステータスを見れるのか?』


 『キソナ様のステータスは、いつでも確認する事が出来ます。ですが、お嫌でしたら見る事は致しません』


 『あ、別に見るのはOKだ。しかし驚いたな。一気に二レベルアップした』


 俺が喜んでいると、ピピがまた助言を話始める。


 『次はコボルトでは、上がりづいかと思われます。ですのでラビー辺りが適当かと』


 『なるほど。そうだな。そうするか』


 俺は頷いた。


 ラビーは確か、中型犬程の大きさの白いウサギのモンスターだ。こちらも見た目がワカイイ。だが、コボルトより機敏で強力なキックを繰り出して来る。見た目より狂暴な動物……じゃなかった、モンスターだ。


 俺達はまた冒険者ギルドに向かった。


 ポン。

 まずは報酬を受け取る。六〇〇Tだ! あと少しでスカーフが買えそうだ。


 「おたく、さっきから一人でクエストこなしているのか?」


 掲示板の前に設置されたベンチに座った冒険者の一人が声を掛けて来た。背が小さくて小太り。長いひげも生えている。ドワーフだ。髪も瞳も着ている服も全て茶色。


 チラッと周りを見ると他の者も俺を伺う様に見ていた。

 そう言えばここで俺は叫んでしまった。その時からいる人達なのかもしれない。どんなクエストを受けているか知らないかもしれないが、悪目立ちしているのは確かだ。


 出来るだけ目立ちたくない! 注目されればそれだけ、バレるリスクが高くなるからだ。

 満腹数値を見るとすでに五〇%を切っていた。

 今は一旦、ここを出よう。


 「レ、レベル上げを……。では、休憩行って来ます」


 別にそんな事言わなくてもいいが、俺は一目散に冒険者ギルドを出て、食堂に向かった。走らなくてもいいのにダッシュだ!


 『どうなさいました?』


 ピピが心配そうに声を掛けてくる。


 『いやちょっと張り切りすぎたかなって。空腹になってきているし、休憩がてら食堂で腹ごしらえしようかな』


 『そうですね。そう焦らずとも宜しいかと』


 ピピもそう言ってくれて、何故か安心する。思ったけど心から気を許せる存在ってありがたい。

 食堂に入ると、結構人がいた。適当な席に座るとメニューが表示された。

 テスターの時とは違ってビックリだ。

 料理名と値段、それに回復度が書いてある。


 おにぎりセット……一五T/二〇%

 オムライス……二五T/四〇%

 パスタ……三〇T/五〇%

 お水……五T/五%

 注:満腹度が一二〇%を超えると移動がスロー移動のみになります。ご注意下さい。


 うん? 満腹度って一〇〇%超えるように仕様変更になったのか? って食いだめができるけど、食べ過ぎたら動きが遅くなるのか……。

 しかも水って、有料なんだ。


 しかしラーメンよりはいいがシンプルだな。まあ本当に味わえるわけじゃなし、そこまでリアリティーを求めてもってか。だが食べるのに五分かかったはず。そこは、追及しているんだよな。


 俺はパスタを頼んだ。

 ちゃんとウェトレスが運んできた。

 『食べる』を選択すると食べ始める。


 『俺、トイレタイムにするから、食べ終わっても暫く反応ないから』


 食べていても普通に会話が出来る。当たり前だが。

 トイレもそんなにかからないが、そう伝えておく。


 『承知いたしました。ごゆっくり』


 『はい……』


 ごゆっくりなんだ……。っていうか、お腹空いてきた。

 休憩設定があり、その設定でヘッドギアを外してもログアウトはしない。俺は、その設定を使った。

 結局、用を足した後に、カップ麺を食べた。リアルでカップラーメン。何となく自分のキャラに負けた気がした――。

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