少年期〜距離感
ペルロに到着した。
俺とミシェイルとリドルフ、そしてクリスで宿探し。
アルフリードとレイスの2人は情報を集めてから宿に来るとの事だ。
俺が寝ている間に話し合われたらしい事だが…。
王都に魔物が集まり、近くの森にすら本来なら存在しないはずの魔物が存在している異常事態。
近隣の町にも何かしらの影響があった筈だと…。
その為に情報収集に向かった。
俺もそっちの方が気になるがもう決まっているのでどうしようもない。
あとで色々共有はするんだし…。
リドルフが居ることで宿探しはすぐに終わった。
俺たちは先に宿に入る。
リドルフの勧めで先に風呂に入る事になった。
「あぁ〜」
そんな俺は今は湯船に浸かっている。
この宿は広い風呂があるとリドルフに言われ楽しみで仕方なかった。
そう、前回ペルロに宿泊した際は風呂のない宿だった。
しかし今回は少しランクアップした宿に泊まっている。
金はソードウルフの角を売るのでなんとかなるとか…。
メンバーの問題…王族が2人もいるしね。
なんにしろ風呂があるのは素晴らしい。
勿論屋敷に帰ればあるのだが…。
地下を抜けて森を抜けてと泥まみれの傷だらけになっていた体は、風呂で疲れた汚れを浄化しなければならない。
露天風呂なんて訳ではないが、田舎の小さな銭湯ぐらいの大きさの風呂。
まだ時間も昼であることもあり、俺1人の貸切状態。
だからといって泳いではいけないよ?
体の節々が熱に包まれていく。
これを極楽と言わずして何というか…。
ちなみに男女別になっていてラッキーな展開にはならなかった。
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風呂から出ると、クリスとミシェイルは結構前に出ていたらしく、さらにレイスとアルフリードが帰って来たところだった。
「レオさんや、気持ち良かったかね?」
「最高でんかな!」
「俺たちが働いている間に…いいご身分ですねぇ〜」
レイスがここぞとばかりに嫌味節を効かせてくるが、癒された後なので精神的にも余裕がある俺は、華麗にスルー。
もっとも本気の嫌味ってわけではないのはわかっている。
ただコイツは嫌な奴ってだけた!
全員が部屋に集まったところで、アルフリードが集めてきた情報を提示していく。
まずは魔物の事。
この町にも被害があったらしい。
魔物の群れが押し寄せるという形だったが、冒険者が多いので防衛手段はあった事と、あくまで押し寄せて来ても、不思議な事に特に人々に襲いかかる事もなく町を通過して王都に向かっていったのだとか…。
それは地上に限らず空を飛べる魔物も同じように向かって行ったのだとか…!
「それには本来この大陸では確認されていない個体も?」
「魔物は詳しい冒険者に聞いたから間違いないよ」
その魔物が何処から来たのかは置いておいて、やはり異変は起きていた。
黒竜だと思うけど…。
次、王都について。
この街でも王都の異変は話になっているらしいが、俺たち以外に王都から脱出して来た人々の情報が今のところはないらしい。
また脱出してきたが、人里にたどり着けていない可能性もある。
王都脱出組の全滅が決まった訳でもない。
まだ中で籠城しているのかもしれない。
希望を捨てるには早いだろう。
「じゃあ明日は俺たちのアストラル領までの護衛、そんでもって王都の様子を探る為の人や情報を集めだね!」
ある程度の情報共有を終えると、レイスがそう話を終わらせた。
レイスやアルフリードはそのまま風呂へ。
食事は合わせた方いいので待機。
リドルフにも風呂を勧めたが本人は最後に、と頑なに断るので諦めた。
あの人なりのけじめなのだろうから強要するのもよくないのかと…そう思った。
なので自由時間だ。
町を歩いてまわるか考えたが、剣の手入れをする事にした。
「何をしている?」
背後からミシェイルの声が聞こえてきた。
俺の手元を覗き込むように見ながら隣に座る。
「剣の手入れです…祖父に教わったんですよ、しっかり手入れしなさいって…」
自分で言いながらだが、気持ちが暗くなる…。
しかしそんなのはミシェイルには関係ないので表情に出すわけにはいかない。
「楽しいか?」
「楽しくはないかもしれませんね…でもこの剣を長く使い続けるなら手入れはしっかりしないといけませんから!」
俺の答えに納得するように頷いたミシェイルは、まじまじと俺の手元を見つめている。
「それに…、俺なりにですけど頑張って戦ったつもりなので、その復習や反省も兼ねて思い出すんです」
「ん?どういう事だ?」
手元から俺の顔に視線を移すミシェイル。
真っ直ぐな目でこっちを見ている。
少し照れる…。
顔赤くなってないかな?
「例えばジュラテッカと戦った時は、もっとこうやっておけば怪我をする事なかったんじゃないかとか、もしまた戦う事になったらどうやって対処しようとか…そんな事を頭でイメージするんです」
予習復習が大切なのは勉強だけではない。
思いつく限りの事は頭でイメージしておけば、いざという時の選択肢として浮かぶかもしれない。
正直もう一度戦いたくなんてないが、絶対無いなんて言い切れないから、戦った相手の事をイメージして何度も何度もシュミレートする。
自分だけではなくクリスでイメージもしてみたりと…、これは前世からの実体験だからやっておいて間違いないことは実証済みだ。
「レオリスは強いな…、私はあの時の事を思い出すだけで震えてくる……、痛みを思い出して怖くなるんだ」
当たり前だと思う。
怖くて恐ろしいのは俺も同じだ。
でも、ミシェイルやレイスを守りたい。
クリスやアルフリードの力になりたい。
俺の勇気を支えているのは周りのみんなだ。
そして……。
「俺も怖いです、でも俺は剣聖の…、アストラルの人間ですから、強くなりたいんです!お祖父様や母様の期待に応えて、ミシェイル様やレイスを守れるぐらい強く!」
正直な気持ちだ。
アストラルという名を背負っている事を重荷に感じることはあるが、その名が俺の背を押してくれる。
多分これが誇りだ。
「…だから、俺が一人前になったらミシェイル様の騎士にして下さい!きっとミシェイル様の事を守り通します!」
正直この後バルメリア王国がどうなるのか予想もできないが、厳しい道が続くのだろう。
国の再建や復興。
それはグレイズ王子が生きていてもその代では終わらないだろう。
もし助かっていなければミシェイルは非常な選択肢を迫られるんじゃないだろうか?
似ている…そんな理由だけでこんな事を想うのも変な話かもしれない。
ただそんな理由だからこそ俺は放っておけない。
前世で俺は妹を取り残してしまった。
せめての贖罪なのかもしれないが……。
でも彼女を守りたい、支えたいと思う気持ちに偽りはない。
「…ありがとう!よろしく頼む」
「はい!」
何か恥ずかしそうにそう答えるミシェイルが愛おしくなったけどね!
「なぁ…」
「なんですか?」
視線を逸らして言いにくそうにする。
「レオって呼んでもいい…か?」
「……勿論です!」
クリスが結構前から隠れて聞き耳を立ててたのは、この後すぐに知る事になった。
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