少年期〜夢と現実

 


「レオッ!」




 俺が睡魔に負けずに炎を眺めていると、クリスが走ってやってきた!


「母様…静かに…ミシェイル様が……」





 有無を言わさず飛び付いてきそうなクリスを口に指を当てながらもう片方で静止するように促す。



 さすがのクリスも空気を読んだ。






「…とりあえず戻ろうか?」



 一瞬静止して固まるも、すぐにその思考に移ったらしい。

 もう少しこの場で留まるかとも考えたが、俺がまだ動ける間の方がいいと自己判断。


「戻りましょう…ミシェイル様をお願いします」




 それを聞いてクリスは起こさないようにと慎重にミシェイルを抱き上げた。

 ミシェイル自体は疲れ切っていて起きる気配はないが…。



 クリスが俺の事も抱えようか?という顔をするが、俺は首を振って答える。



 俺も体力的にも肉体的にもボロボロ…。

 精神力だけで支えている体を起こして立ち上がる。




 クリスは俺の怪我などを恐らく見抜いた気がした。


 でも状況から俺が耐えていることを考えてか、あえて触れてはこなかった。





 俺も変な意地があるのかも知れない……。









 その後細心の注意を払って歩き始めた。

 クリスが周囲の警戒もしてくれる事もあって、俺は意識的に周りを見て行動する必要がなくなった。





 そして逸れてからの事を話した。


 蜥蜴に襲われて逃げれたが死にかけた事。

 ミシェイルに救われた事。

 蜥蜴を倒した事。






「…レオは逞しくなったね」


「そうですか?…んー、実感ありませんけど…」



 クリスはどこか嬉しそうに俺の話を聞いていた。







 少し歩くとアルフリードがいた。

 すでに回復しているレイスとリドルフも無事そうだ。




 もう、大丈夫…!




 そう気が緩んだ。

 瞼は精神力で支える事ができずに幕を下ろしてしまった。








 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



『やぁ、はじめましてかな?』



「誰だお前…」


『ボクはラシュタル、君に分かるように言うと、君の母クリスの持つ、聖剣に封印されている白竜だよ』



「は?待て待て待て待て、えっ?」



『混乱してるんだね!仕方ないことさ…、今君が僕に触れてるから挨拶しておこうと思ったのさ』




「挨拶?なんでだよ…聖剣がいつか俺に渡るからって事か?」


『ふふふっ、そうだね!君とはまた会う事になるからね…その前に挨拶ってところだよ』




「…そうか、お前もへぼい使い手とか嫌だろうし…頑張るよ」





『アハッ!うん!頑張ってよね』




「それで、白竜とか封印とかってなんだよ?」



『ふふふっ、それは君がボクを従えれたら教えてあげるよ?』



「…よくわからないんだけど」





『だろうね!…ほら呼んでるよ?聞こえる?』



「呼んでる?なにが?」





『聞こえるよ』












 、


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 目が覚めたらクリスの背中にいた。



 なんだったんだろうか……。

 夢だった事には間違いないと思っているが…。

 えっと…あいつの顔が思い出せない…。

 てか白竜?とか言ってたっけ?



 人の形をしてた?

 それすらわからない…。




 そういえば剣に触れてるからなんたらとか……。


 俺はクリスを確認する。


 いつも剣を挿してある腰に剣はなかった。

 クリスは剣を掛けるベルトが壊れてしまったのか、俺を背負いながら手には剣の鞘を握っている。

 つまり剣は一応俺に触れているという事にもなる。






「レオ、起きた?痛いところ無い?」



 俺が目覚めた事に気付いたクリスが声をかける。

 言葉の意味そのまま受け取ると、治療は終わっているようだ。



「大丈夫です…」



 クリスは体が華奢だが、ガッチリしているのが分かる。

 恐らく無駄無く鍛えているのだろう。

 小さな背中だが、暖かく落ち着く……。





「……!」



 俺が少しホッとする顔をしているのをニヤついた非常に苛立つ顔で凝視している男が居た。




 治癒魔法で治療を終えて傷もなくなっている。

 恐らく高価な服だったのだろうがドロドロで所々破れていたり…。

 顔はエルフ故かもしれないが、非常に中性的な顔だち。

 しかしその表情の下劣の極みに達しているのではないかと思わせる…そう、レイスである。








「母様!迷惑かけてしまいました」



 俺は一言告げると、すぐにクリスの背から飛び降りた。


「…まだ疲れて…」

「もう大丈夫です!」



 クリスは寂しそうな顔をするも、すぐに俺の思考を悟っているが如く、レイスと似た顔を浮かべている。



 コイツらの方が親子なんじゃね?










 周囲を見ればすでに森を抜けてペルロが遠目に確認出来ていた。


 リドルフを見れば柔らかな表情でこちらを見守っている。

 その背にはミシェイルが背負われており、ミシェイルはまだまだぐっすりと眠っていた。


 アルフリードは先頭を歩きながらこちらを見て笑っていた。








 何かみんな揃って俺をバカにされている気がするが……でも誰一人欠ける事なく森を抜けてペルロまで辿り着く事ができたのだ。




 それだけで良しとしよう!




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る