少年期〜vsジュラテッカ
拳が蜥蜴に触れた瞬間に爆煙を放って蜥蜴を吹っ飛ばす!
蜥蜴は万全からは程遠いコンディションもあり、地面を転がるように吹っ飛んだ!
「うぅぅっ…くそっ、こっちも……」
ついでに俺もしっかりダメージを受けた。
勿論比べれば別だろうが、俺は拳に強い衝撃を受けて手がプルプルと痙攣してる。
さらに言えば手の外側が全体的に火傷もしているので、常にヒリヒリする。
「ミシェイル様!大丈夫ですか?」
蜥蜴の様子を確認してからすぐにミシェイルを確認する。
「レ…オリス…無事…か?」
「大丈夫です、少しじっとしてて下さい…」
意識がある…よかった。
ミシェイル体を抱き抱えると、近くの大木にもたれ掛からせるように下ろす。
「そろそろ決着つけてくるんで…」
そう言って微笑んだ。
自然と微笑むことができた。
彼女を守るって事が自然と意識できて、腹をくくることができた。
前世の記憶がある俺にはミシェイルの顔は色々な意味を持つ。
必ず守らなければならないと…。
この子を傷付ける奴を許さないと…。
そう思わせる。
別人なんだけどな…不思議だ。
静かな怒りは目の前の蜥蜴に向けられる。
蜥蜴はすでに立ち上がっているが、態勢を整えるのを待つつもりはない。
剣の鞘を片手に走り出す。
狙いは2つある。
1つは勿論剣の確保。
俺から見て右側に剣が転がっている。
いくら魔法があるとはいえ、それだけで戦える気はしないし、何より俺の魔法は離れた所からポンポン使えるような便利なものでは無いようなので…。
もう1つはミシェイルの位置だ。
このまま戦うと直線上にミシェイルがいる。
しかも比較的至近距離にだ。
巻き込まれる可能性もある、だが離れすぎると透明化される事もあるかもしれないので、不安だ。
透明化に対してはある程度わかってきているとはいえすぐに対応できる範囲の方がいい。
俺は滑り込むように剣を手にする。
蜥蜴はミシェイルを捕まえて人質に…なんて賢い選択はしない。
まっすぐ俺に向かってきている。
負傷箇所の影響もあってか動きは鈍くぎこちない。
だが俺なんかよりは全然早い。
そもそも今まで戦ってきた相手で、俺より遅い相手の方が少なかったけど…。
クリスに関しては当然。
エイルーナは俺よりあからさまに早い。
ゴブリンは似たり寄ったりだが、どちらかといえば向こうのほうが早いんじゃないかと思う。
現状のコイツはエイルーナ以上クリス未満だ!
あれ?わかりにくい……。
蜥蜴は踏み込みに力を込めて、飛びつくように爪を振りかぶってくる。
あの蜥蜴とは何度目の対峙か数えるのも面倒だが、所詮は魔物。
攻撃パターンはワンパターンだ。
基本は腕?の爪を振り回して切り裂く。
これが最も多いパターン。
単調ではあるものの素早く、爪は非常に鋭か危険。
まさにシンプルイズベストの攻撃だ。
恐らくこの爪と透明化による奇襲で獲物を狩るのだろう。
暗殺能力が高いので、討伐ランクが高いってところだ。
だが暗殺者が“戦闘”も強いかは別だろう。
厄介さはコイツは相当だが、シンプルな戦闘では森で遭遇した炎の熊さんの方が強そうだ。
蜥蜴は戦闘となるとあとは噛みつき。
これは体感済みだが、顎の力はそんなに強く無いし、牙は短い。
噛まれた事がほとんどないから力はこんなもんという可能性もあるが、腕が今も生えてるのでそういう結論に至った。
激痛だったけど。
あとは尻尾とか体当たりとかも効果的だと思うけど爪に比べればまだおとなしいものだ。
最重要な透明化についてだが、恐らく使うために無防備になる事もあって使わない。
そして透明化している間に恐らく移動制限がある。
早く動けないとか?
じゃなきゃ透明して高速で攻撃すればクリスにだって簡単に勝てるだろうし…。
森では危険なのは通常で木に登り、透明化して落下攻撃が非常にわかりにくく強力だからだろう。
まさに暗殺能力特化の魔物だ。
情報整理は終わっている。
姿が見えていて、さらには片腕をクリスに斬られている。
それでも強力な魔物だが…攻撃パターンはさらに絞られる。
片腕である事と、足を負傷しての踏み込みの問題だ。
片腕での振り下ろしを切断されている側の脇に飛び込んで、転がるように抜ける。
体を回転させて尻尾を振り抜いてくる。
すぐに立ち上がってもう一度前に飛び込む事で回避する。
「はぁ…はぁ…はぁ…よしっ!」
速度差があって厳しい予想はしている。
その中で初動での動きに対処出来るのか、そのスピードについていけるのかは自分の中での課題だった。
結果はシュミレーションの範囲内であればしっかり付いていける!
同時にしっかりと読み切り、対処出来るのならば不意打ちで無くても反撃…もといカウンターを狙えるという事だ。
まぁ待つだけのつもりはない!
ふと今握っている剣に違和感…いや、右腕を含めてだ。
俺のボンバーアームズは解除されていない!
剣には腕と同じ赤い紋様が浮かんでいる。
「って…ことは…」
そういう事だ。
俺は真っ直ぐ蜥蜴に向かって距離を詰める。
何度もコイツとは遭遇している。
完璧とはいかないが動きのイメージもつかめている。
直進してくる俺に蜥蜴は腕を薙ぎ払うように振り回す。
予想通りだった。
こっちはそのタイミングに合わせて間合いギリギリで足を止めて踏み込む。
剣を右手で握って弓を引くように片手で構える。
クリスがゴブリン達に行ってきた動きをイメージする。
真似したら出来るものではないが、イメージがあるのとないのでは大きく異なる。
予定通り振り回された爪が目先を抜けるのに合わせて、右足と右腕を同時に突き出した。
剣は蜥蜴の脇腹を貫く。
俺の力では本来貫くに至らないと思っていたが、カウンターである事と、うまく踏み込みの力を伝える事が出来た事で貫通させる事が出来た。
しかし予想していた結果とは違った。
剣は変わらず赤い紋様を浮かべているが爆発しないのだ。
「…なんッッッ!!」
予定通りだったはずが予定通りいかなかったことで、動揺した俺を蜥蜴は腕を払って俺を吹き飛ばした。
咄嗟に左手で防ぐように構えながら前に踏み込む事で爪で引き裂かれる事はなかったが、子供といえど簡単に人をボールのように飛ばす力で殴られた。
防ぐ目的で構えた腕は勿論折れている。
背中から着地した事で全身に痛みもある。
目の前に星が舞う感覚だった。
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