少年期〜不穏なスタート
俺たちは宿場町ペルロを目指す。
まずは川を目印にして北東に向かう。
そのまま森を抜けるとそのまま街道に当たるはずなので、その街道伝いに東へ行けばペルロに辿り着くはず…と言う事だ。
川が丁度北東に向かって流れているので、森までは迷う事はないのだと。
森に入ってからはレイスが方角は引き受けてくれるらしい。
なんでもエルフは森に住む事もあり、森の中でも方向感覚が狂う事はないのだとか…。
予定通り行けば3日でペルロが見えて来るだろうと…。
あえて言うがあくまで予定である。
この予定に魔物に襲われるや道に迷ったり、誰かが倒れたりする事は予定に入っていない。
予定して迷ったり襲われたりするやつもいないので当然なのだが…。
次に道中の食料についてである。
小屋に設備されていた非常食(固く味の無いパン)が少し追加された。
助かる事に水辺があるので、水には困らないのは唯一の幸運。
食料は全員分を考えると一日も持たないらしいので、自給自足で調達しながらペルロを目指すのだ。
過酷な小旅行である。
そんな俺たちは小屋を出て歩き始めていた…。
「そうそう、レオの魔法ってさ…左手でやらないの?」
「あれ?なんか…あれ?」
レイスが俺の魔法を使っている姿を見て疑問に思っていたらしい事を聞いてくる。
しかし俺はその質問より別の事が気になった。
「レオ?どうしたの?腹でも下した?」
「下してねぇよ、…そういえば使えないんだよな…」
何か突っ込むかと色々考えたが、別にいいや…。
レイスはなんかムカつく事が多いし、嫌味な奴だけど嫌いじゃない!
「魔法使えるようになってからマナを感じる感覚がしっかりわかるようになったんだ、だから右手で使うのと同じ感覚で左手にマナを集めても反応なくてさ…」
俺もずっと思っていた事だ。
右手にマナを集めれば後は魔法を唱えるだけで発動出来る。
それこそこの魔法は工夫や応用の効きそうな魔法だが、右手からしか文字が見えない。
「魔法は種類も豊富で、謎も多いからわからないけど、レオリスの魔法は右腕が基盤なのかも知れないね!」
「なるほどね、そういう例もあるよね!決まった剣がないと使えない魔法とか…」
後ろを歩いていたアルフリードが答え、それにレイスが補足を入れる。
なるほど、珍しいわけではないみたいだし、何より剣がないと使えないってよりは全然いいな!
剣が壊れたりしたらどうなるんだろう…あれ?右腕怪我したりしたら影響出るのかな?
ちょっと不安になってきた。
「レイスの魔法はじゃあなんなんだ?」
あの青白い光弾はなんか燃えたり痺れたりも無くなんか独特の感じだった。
「んー…あれはエルフの秘匿してる魔法でね、つまりは通常の魔法とは違うんだよ」
あ、前なんか聞いた気がする。
すごい気になるやつだ。
「もっと簡単に出来るようにしたら発表するらしいよ」
なんか次元の違う話らしいが、すごく興味がある。
聞きたいけど聞くべきじゃないのかも知れないし…。
「レオリス…あれ…」
俺がどうするかと悩んでいたら横からミシェイルが服を引っ張り、川沿いを進んでた俺たちの川の向こう岸を指差す。
「ん?なんですか?ミシェイル様…」
指差された方向を凝視する。
ゴロゴロした俺の体ぐらいのら岩がたくさんと、大人より大きな岩がちょっと…周りは背の高い草が生い茂る。
足を止める俺やミシェイルを不審に思い、全員が足を止めてミシェイルが指差す方向を凝視する。
「何もありま…」
「違う!魔物が急に消えたんだ!」
急に消えた?
何をそう言って全員が理解を示していなかった。
俺はもうら少し目を凝らして見る?
何も奇妙なものは見えない…。
だが、少しだけ水面が揺れた…いや、跳ねた…!
「インパクトアームズ!」
何か認識は出来ていなかったが、危機を感じた。
咄嗟に隣のミシェイルを抱えて横に飛び込みながら、その何かを感じた方向に右腕を向けて魔法を唱えた。
開いた右手から音が広がるように衝撃波が広がる。
「ギャンン!」
その衝撃波はその何かに当たった手応えを感じた。
それだけで既にクリスやアルフリードは動き出していた。
そこには人間と変わらない大きさの二足歩行をする巨大なツノの生えた蜥蜴が、何もないところから姿を現した。
俺たちの近くにいたアルフリードは、レイスを連れて俺とミシェイルの前に!
少し前にいたクリスはその衝撃に触れた蜥蜴に向かって剣を突き出す。
剣先に僅かに血が付いているのがわかる。
すぐに水を踏んで川を越えていく音共に蜥蜴が飛び跳ねるように逃げていくのが見えた。
「くそッ!」
クリスの動きは俺の目にも追えなかった。
そのクリスから逃げる蜥蜴も異常な早さだ。
「怪我はないかい?」
アルフリードの確認に俺は軽く頷き、すぐに腕の中のミシェイルに目線で確認する。
「大丈夫だ、すまないレオリス…迷惑をかける」
ミシェイルもそう答えると、俺の腕の中から離れて立ち上がる。
「いえ、ミシェイル様が発見してくれなかったら怪我人が出てましたよ!こちらこそ助かりました!」
クリスやアルフリード含めて俺たちの中であの姿の見えない魔物を発見できたのはミシェイルだけだ。
もしそれがなければ俺かミシェイルが怪我、もしくは死んでいた可能性が高い。
「レオ!本当にお手柄だよ!」
「すまない、あんな魔物がこんな所にいるはずがないと油断していた、君のお陰で助かったよ」
クリスとアルフリードから称賛されるのはいいが、俺の心臓はまだドキドキ言ってる。
見えない魔物が存在して、それが襲いかかってくるのは思ってた以上に恐ろしいものだ。
何とか対応できて良かった。
ちなみにドキドキしてるのはミシェイルを押し倒したからなんかじゃない。
そんな場合じゃなかったんだからね!
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