少年期〜太陽の下

 久しぶりの太陽は刺激が強く、目が慣れるまで少し時間を必要とした。



 出口はは小屋だった。

 何の変哲も無いボロ小屋で、中には物も人もない空っぽ。

 埃っぽさで少しくしゃみや咳が止まらないが、地下通路に比べれば随分と快適だ。

 特に臭いとか臭いとか臭い。





 勿論全員が一息つく訳にはいかない。

 クリスとリドルフが足早に外へ出て、現在地と周囲の状況を確認しに行った。





「この後の目的地は?」




 レイスが何気なくアルフリードに質問を投げた。



「とりあえずアストラル領に一旦戻って、君達を預けて、僕とクリスが王都に確認に戻る予定だよ?」




 それもそうか。

 言い方は悪いが王子達や他の逃げている人々の安否の確認は必要だ。


 だが俺達をを連れて行くには足手纏いだろうし…。






「大体はわかりました、提案なんですが…それならペルロの街を経由しますよね?」



「そうだね、ルートに何も問題が無ければそうなるよ」



 予想通りだ。

 外から魔物が集まって来たという状況だったので、不確定要素が多いのも事実だが。



「俺たちの護衛にも、王都の確認にも人手が必要ですし、ペルロで冒険者を雇いませんか?」




 そうすれば安全度は上がるはずだし、なんならペルロで別れてもいい。

 時間効率的にもいいし、なるべく早く王都の確認を済ませた方がいいだろうし…もし王子や他の人達が助けを必要としてるなら、クリスの戦闘力は勿論アルフリードの治療だって必要になるはずだ。





「……なるほど」


 アルフリードは顎に手を当てて思案する。

 しかしレイスが問題点を指摘して来た。




「俺もいい案だと思うけど、アストラル領への護衛はともかく、王都へ向かう陣営の補充は難しいんじゃないかな?」



「なんで?」




 俺的には凄いいい案だと思ったのだが…。



「冒険者はつまり報酬が必要でしょ?護衛はアストラル領で用意出来るだろうけど、王都へ向かう方は報酬の当ての確実性がない」






 なるほどね…!

 確かにそうだ。

 誰も報酬が払われるかわからない仕事をしたりしない。

 しかも王都の偵察なんて危険度が高い仕事、受ける物好きも少ないだろうし…?



「いや、その方向性で行こう」




 俺とレイスの議論とは別に、アルフリードが答えを出したようだった。



「君達の護衛は普段なら移動距離や安全性からしても簡単に集まるだろう、報酬を積めばさらに余裕なくらいだ。」





 そうだな。

 実際俺が王都に来る時はなんの騒動もなくペルロまで到着したものだ。





「僕らの方は呼びかけるんだ、きっと王都の親族を心配している人はいるし、そんな中に剣聖であるクリスが同行者を探してる…同行者や他の有益な情報も集まりやすくなる」





 確かに剣聖は有名で、その衣と剣を持つクリスを看板にして行えば人は集まるだろう。

 俺達だけが心配しているような小事ではなく、事は既にあらゆる人を巻き込む大事件なのだから!






「王都の偵察及び救出が現実的になってきたね」


 レイスも異論が無さそうだ。

 小屋端で休んでいるミシェイルが心なしか嬉しそうだ。

 彼女は心配だとか寂しいとかそういうのは顔にも言葉にも出さないが…なんとなく嬉しそうなのは伝わる。

 まぁ心配してたのとかはみんな知ってるし当然の事だからいいのにね。












 するとクリス達が帰ってきた。




「みなさーん…ご飯ですよー?」




 手には魚を持ったクリスが嬉しそうに、私できる子でしょ?と言いたげなドヤ顔で現れる。




 だが今回ばっかりってわけではないけど…今回ばっかりは完璧です!






 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







 クリスが捕まえてきた魚をリドルフが調理している。



 その間にクリスにさっきまで話していた方向性を伝える。


 ちなみにリドルフにも意見を…と伝えようとすると…

「私はクリス様やレオリス様の決定に従うだけです」

 と突っぱねられた…そんな気がする。





 なのでクリスに詳細を伝えるとクリスはんーと難色を示す。




 クリスの気になるところは俺たちの護衛の冒険者への信頼だった。



 剣聖の一人息子。

 エルフの王子。

 正直今価値として怪しい可能性もあるが、バルメリア王国の王族。



 まぁ誘拐される要素としては完璧だ。

 リドルフも同行するとはいえ危険が0とは限らないしな。





 だがクリスとしても一刻も早く王都の確認にも戻りたいという想いもあるらしく複雑な心境になようだ。





 だが、なんにしろペルロで情報収集してからでも遅くないだろうってレイスの意見で議論は幕を閉じた。







 俺はというと、お腹が減って減って仕方ないので、途中からそんな話勝手にやってくれという無責任さ…。

 反省しなければならないが、人間空腹には勝てないのだ。




 リドルフが用意したのはただの塩焼きだった。

 川魚の塩焼きとか前世の小学校ぐらいの時に、学校行事で山に行って食べたような…そんな記憶だ。


 正直その時の魚の味はなんて覚えてないが、美味しいとは思わなかったと思う。




 血塗れの泥塗れになって脱出した時は、正直食欲はなかった。

 地下での食事は保存食用のパンみたいなものだった。

 固くて無味のパンは、地下の匂いのせいで不味かったが、怪我もしていたので無理に食べた。


 でも今は腹が減って仕方ない。

 人間って不思議。








 でもレイスは食欲が無い感じだったので、もしかしたら俺の神経がおかしいのかも知れない。

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