少年期〜脱出

俺たち一同は少し長く休憩を取った。


睡眠無しでの行動で、一部に影響が出たこと…主に俺を含めた子供3人。

子供2人の怪我の問題…治癒魔法で傷は治るが治癒魔法の性質の問題で体力的に厳しい事。


俺を含めた赤い髪の毛の連中の魔力の残量の問題。


俺はインパクトと叫び倒したのが祟ってマナ不足。

俺達の為とはいえ、戦闘での疲労も考えずに魔装(強化魔法の装衣、つまりは肉体強化)を駆使しての探索と、ゴブリンの殲滅、結果マナ不足によりフラフラ…。



つまりは俺の責任。

反省します…。




もちろんポジティブな理由もある。

クリスが暴れまわったことでゴブリンが全滅…は恐らく無いので、壊滅的打撃で数が激減しているので、心配が少ないと。



この地下通路だけでもまだ生き残りがいるらしいゴブリンのしぶとさや恐ろしさときたらGに匹敵するな…。



もちろん全滅では無いので心配がないというわけでは無いが、今の内に休む時間くらいは作れるだろうとの事だった。






そして今正規ルートの少し広めの通路で休んでいて、出発するかという所である。



各々出発の準備をしている。


リドルフは食料や水の確認をしている。


元から荷物が多い訳ではないが、最低限の食料も水だけを持っている。

それも日数分として限界ももちろん存在する。

管理はリドルフがしてくれているので安心だ。

まぁ水だけはどうしようもない時もあるが…。


アルフリードはこの地下に降りてからまだ武器を使用していないので、武器の手入れは必要無いが装備のチェックは怠らない。



ミシェイルやレイスは特に何もしていない。

2人とも考え事をしているようだ。





俺はクリスと剣の手入れをしている。

ドレイクに教わった通りのやり方である。




「実戦どうだった?」





クリスは俺の武器についた血や服の汚れを見て戦闘童貞を捨てた事に気付いている。

まぁ現場に助けに来てたし見てるのは突然だろう。




「無我夢中だったので、あんまり記憶にないんですけど…やっぱ怖かったですね」



素直な感想だった。

今でも怖い。

いくら魔物とはいえ、戦い…それも試合ではなく命の奪い合い。

やらなければやられる。

それは怖い…本当に怖かった。

痛すぎて死ぬと思ったしな。




「…その気持ちは忘れちゃダメだよ?戦いは怖い事で、戦いたくないって、戦わない選択肢を選ぶ為に」



クリスは口が達者な方ではない。

言葉としては少しごちゃごちゃしている気がする。

でも言いたいことは伝わる。



「はい…でも、母様よりは戦わない選択肢を選ぶと思いますよ?今でも」



言いたいことはわかるが、クリスは結構喧嘩早いという事実をついこの前知ったからな。

相変わらずこの女には説得力が欠ける。



「………」



クリスが不満そうな目で見てくる。



「そろそろ出発しよう!」




いいタイミングでアルフリードが全体に声をかけたので、俺も立ち上がる。





衣服の土埃を払う。

もうボロボロのドロドロで気休め程度にしかならないが、やってしまうものだ。





再度出発した。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






再出発してしばらく歩いた頃だった。


出口を発見したのだ。



行き止まりだが、穴というにしてはは人工的に作られた形跡の強い空間。


低い天井はしっかりと閉じられているが、一部が岩か何かで塞がれているだけだとわかる。





「…これ…どうやって出るの?…」


「「…」」

レイスの一言…。

沈黙が流れる。



岩を押しても殴ってもビクともしないのだ。



魔法や魔装を使えば可能だろうか、外が確認できない以上目立つ可能性は出来るだけ避けたいのはだが仕方ない…。

クリスが装衣を纏い、岩を軽々と持ち上げたが、そこからは大量の水が流れ込んできたのだ。






「うわぁぁぁ」




てか水圧の中持ち上げるとかこの人何を…。


そんなツッコミを入れたいところだがそんな余裕は無い。

クリスは岩に手を食い込ませて力ずくで再度蓋をした。




「はぁ…はぁ…はぁ…もうむちゃくちゃ…」



全員頭上からの大量の水による攻撃を受けた。

勿論クリスに比べれば大したことはないが…。




「上は川って事なら此処から出るのはほぼ無理じゃない?」



レイスが濡れた髪をかきあげながら、少し苛立ちの混ざった声色で話す。




ん?

あれ?



それは水で足元が濡れて…というより土が流されて初めてわかった。


何か小さな窪みがあるのだ。



「これは何でしょう?」



「あっ!流石私の子」


それを見たクリスが悟った。

俺の足元の窪みに手をかけて持ち上げると、その床が外れて階段が現れた。




よくわからないが結果オーライとしよう。




一気にさっきより疲れた一同は順に階段を降りていく。


薄暗い通路をまたしばらく歩き続ける。


次は長い階段だが、階段の作りは入口とよく似ていたので理解した。


先頭のクリスが天井を持ち上げるように蓋のような扉を開ける。



そこからは久しぶりに対面することになった太陽の光が見えた。


あまり太陽の有り難みを前世も含めて理解する事は出来なかったが、今は分かる。


太陽とは偉大なのだと…。


晴れやかな気分になれる気がする。





俺たちはようやく地下を抜けて王都脱出を果たした。

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