少年期〜1日目の終わり
さっきの魔物は“ジュラテッカ”というらしい。
簡単に言うならツノの生えた人間サイズのトカゲらしい。
その悪質な透明になる能力と鋭い爪と極めて高い運動能力は冒険者ギルドでの討伐依頼が出ればAランクは確実。
場所や状況次第ではSだってあるレベルの強敵。
そんな魔物がこの平和なバルメリアの大地…ひいてはこの中央大陸に存在するなどあり得ないとアルフリードは言う。
無理矢理理由をこじつけるなら黒竜の影響とするしかないとか…。
そんな魔物を逃してしまったのは正直恐ろしい。
透明になる能力を持つ魔物がまた襲いかかってくる可能性があるのだ。
どうやって警戒したらいいのか…
移動を再開する俺たち一行の口数は減った。
地下にいた時のより緊張感がある。
特にクリス達大人は特にである。
勿論地下での戦いに比べて少ないながらも利点はある。
まず戦いやすさは段違いである!
近接戦闘を行うなら、武器を振るだけのスペースが必要だ、ここにはあって地下にはない。
魔法は地下では使う魔法を選ぶ上に、範囲を縮小して狙いをより定めなければならない。
下手に壁や天井を破壊して生き埋めにならない為だ。
次にサバイバルの点だ。
まず生きる為に避けることができない水!
地下ではほぼほぼ絶望視されていたが、ここでは違う!
次に食料だ!
魔物の大半は食べれるが、ゴブリンは食べれない種類なのでまず地下では食料調達が難しい。
地上なら川には魚を、草木から木の実など、最悪魔物を…と選択肢がある分かなりマシである。
だが戦闘面だけは別だ。
俺たちパーティはまともな戦闘員は2人である。
幼い頃に剣を少し習ったが実戦経験はほぼないに等しいリドルフ。
この前戦闘童貞を捨てたばかりの俺。
多少の魔法は使えるレイス。
恐らく何もできないミシェイル。
これだけの足手纏いを連れての戦いである。
地下での戦いは通路の問題で、前後を2人で塞げばある程度対応できるのが救いだった。
それでもイレギュラーは発生したが…。
ここはそうもいかない。
前後左右から敵は攻撃することが出来るパーティに戦闘員は2人。
さらに問題として魔物のレベルである。
地下ではゴブリンという、冒険者の討伐ランクでは最低ランクのD判定。
少数であればそれ以下、人間の子供を捻るようなレベルの魔物だ。
大人であれば大概対応できる、
勿論魔物ならではの強みがあるので被害が後を絶たないのだが…。
クリスやアルフリードにとっては、ゴブリンなんてネタの領域になるだろう。
なんせ俺でも勝てるんだから!
だが地上ではそうもいかない…。
なぜなら魔物のレベルが高いからだ。
それなら護衛の数を間違えているんじゃ…と思うところもあるが、本来王都周辺にはゴブリンレベルの魔物くらいしか存在していないはずなのだ。
つまりはクリスだけでも事足りるが念のためにアルフリードつけときました。
本来なら余裕すぎる予定なのだ。
つまり黒竜が悪い!
簡単に情報整理したからなんだと言うところだが、俺たちパーティは警戒を強めながら進行中。
そもそも魔物の習性として、日が高い間に真正面からくる魔物は群れの魔物くらいらしい。
他はなんらかの能力でジュラテッカのように奇襲を得意とする連中か、人間を舐め腐っている魔物だけらしい。
なんか前世でもそんな話聞いたような…熊とかで…。
この世界にも動物がいる、馬がいたからな。
動物と魔物の差をまた今度聞いておこう?
しかし時間もそれなりに過ぎているのは空を見ればわかる。
そろそろ夕暮れといったところだろう。
「クリス!今日はこの辺にしておこう」
アルフリードが先頭のクリスを呼び止める。
「森が見えてるし、そこで野営はダメなの?」
「森が近いと魔物が出てくる可能性もあるし、食事の用意も含めて川沿いの方が良いと思う」
クリスもクリスなりに考えているらしい。
まぁ俺もアルフリードに清き一票だ。
クリスは了承すると野営の準備に取り掛かった。
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薪を燃やして焚火を囲み、魚を捕まえて焼いて食べる。
作業はリドルフが手際良く行い、他の人の介入を許さなかった。
クリスは日が落ちる前に休むと言って、眠っている。
戦力から見てもアルフリードとクリスは同時に休む訳にはいかないので、隙を見て交互に休んでもらうしかない。
日が落ちる前の方が比較的安全だし、今クリスが休むのは妥当だろう。
早い段階の襲撃、襲撃してきた魔物の脅威度。
度重なる移動による疲労で、全体的にも少し疲れが見えてきている。
クリスとアルフリードは元の体力が違うのだろうが、2人の気苦労は計り知れない。
リドルフは2人に戦闘面以外の負担を与えないようにと、食料を含めた荷物のほとんどを運んでいる。
俺も体力トレーニングはしてきたとはいえ、所詮子供は子供。
一丁前に周囲の警戒もする分頭も体も疲労しているのは否めない。
だがとりあえずはペルロにつくまでは少し無理をしてでも進むべきだろう。
俺は少しでも体力を回復させる為早めに眠った。
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