11.はみだす恋

NYから帰ってすぐ、私は宣言通り新しい部屋探しを始めた。


不動産屋さんにも希望通り少し不便でも明るい家をお願いして、担当の藤村さんはぴったり私ののぞんだ部屋を探してきてくれて、私はすぐに菜月の部屋をでた。


「ずっといてくれてよかったのに。」


部屋を持て余していた菜月は少しさみしそうにしていたけど、でもNYから帰って私がとても活動的になったのをみて「よかったね」と言ってくれた。


「お前もうれしいでしょ。」


「ニャー」


日当たりのいい部屋に彼も満足したみたいだった。私の都合で色々なところを転々としているのにも関わらず、彼はとても寛大で柔軟性のある猫だった。


「ごめんね。」


でもきっとストレスをかけていることには変わりないから、引っ越ししたその日にはいつもより少しいいご飯を買ってあげた。有能な彼にはにおいだけでもそれがわかってしまうらしく、いつもよりすばやく寄ってきてガツガツとご飯を食べていた。


「行ってきます!」


「ニャー」


NYから帰ってからも仕事が少し忙しいのには変わりなかったけど、前みたいに無理をするのはやめた。気持ちに余裕をもって仕事もプライベートも楽しむことが、傷をいやすための一番の近道だと、今はそう思うことができた。


「おいし。」


昼休みのサンドイッチも相変わらず私をいやしてくれる要素の一つだった。


前と変わったのは、コーヒーがブラックからカフェオレになったことだ。今までは太らないようにと糖分の入った飲み物を避けていたけど、多少の糖分が心の余裕を作ってくれることを私は学んだ。


―――カフェオレはアイスでも「ホッと」するもんな。


いつもわたしは心の中でこのつまらないギャグを言って、「今日も平和だな」と思うのが日課になった。


「玉、行くよ。」


「はいっ!」


いくら心に余裕が出たとはいえ、日常に対して変化はなかった。前と同じで相変わらず後輩ちゃんの出来は悪かったし、課長のセクハラもお局の嫌がらせもなくなるわけではない。日々たまるストレスは、藤堂さんと一緒にビールで流してしまうしかなかった。私は今日も”姐さん”と小汚い居酒屋に向かった。


「おめでと。」


今回の人事で私の昇進が決まった。


別に出世欲があるわけではなかったけど、それなりに会社歴が長くなってきて色々な仕事を任せてもらうことも多くなったから、自動的な昇進ということはわかっていたけど、それでもうれしいことには違いなかった。


「ありがとうございます。」


「大変になるよ。」


私よりもずっと上の立場の「部長」である藤堂さんの一言はとても重かった。わかってはいるつもりだけど改めて耳にしてしまうとずっしりと来て、気持ちがどんよりした。


「でも楽しいよ。」


どこまでも藤堂さんはかっこよかった。結婚して出産して、2人のお子さんを育てて大変なはずなのに、家庭での大変な様子は一切見せずにいつもバリバリ働いて、おまけにお客さんからの評判もとびっきりいい。私も藤堂さんみたいな大人になりたいけど、到底なれそうになかった。


「頑張んな。」


「はい!」


昇進して大きくなりたい!とか、バリバリ働きたい!なんていう願望が今までだってなかった私に、藤堂さんみたいなかっこいい大人が目指せるとは思えなかったけど、少なくとも自分のことは自分で養えるくらいにはなろうと決意を固めるためにも、いつもより大きな声で返事をした。


NYで自分探しをして、帰ってきて新しい家探しをして、ようやく目の前のことを前向きにこなせるようになってからの日々はとてもはやかった。仕事にも打ち込んだし、プライベートだっていつまでも失恋をしたままではいられないと、いつものメンバーで婚活にも行った。


そうこうしているうちにあっという間に1年ほどの日々が過ぎていて、新しかった部屋も私の日常にすんなり溶け込んだ。


「いってきます。」


1年たって私の日常はもっと穏やかになった感じがする。


新しいポジションにもようやく慣れてきたし、新しい”部下”も何人か入ってきて、前より”やりがい”みたいなものを感じるような気もした。


就活しているころはとりあえず無我夢中で、やりがいなんて大きいものをかかげているというよりは、ある程度の条件に当てはまる会社に就職することに必死だった。


今だって「”やりがいのある仕事”がしたいです」なんていう学生がいたらその気持ちはそんなに理解はできないけど、やりがいっていうものはどんな仕事でも自分である程度探せるものなんではないかっていうアドバイスくらいはできる。


「ふぅ…。」


あれから変わったのは季節が巡ったことくらいだったけど、季節が巡っただけでもだいぶ私の気持ちは変わっていた。”時が解決してくれる”とはよく言ったものだと思う。特に何かを頑張るとか、見返すとか忘れるとか。何もしてない私だったけど、それでも確実に恭祐さんの存在は私の中で薄くなっていた。


その証拠に今では菜月たちといつもの女子会で冗談のようにあの頃の話を話せるようになった。


別れが現実だったときは話すのもつらかったことが今ではおもしろおかしく語れる。悲しくならないといえばうそになるけど、それは確実にあの出来事が私の中で過去に消化されたということのような気がした。


でも傷がだいぶ薄くなったとはいえ、気持ちが切り替えられていないのも事実だった。そんな歯切れの悪い自分に嫌気がさす前に自分で作ってきたお弁当の卵焼きをかじった。


「おいし。」


前は自分でお弁当を作ろうなんて思ったことがなかったけど、料理をするようになってからは毎日作るようにしている。節約にもなるし、何より花嫁修業にもなる。


気持ちが切り替えられていないのに、結局結婚したいんじゃん。と気づいてしまった自分の矛盾をそっと卵焼きと一緒にのみこんだ。


「よし。」


最近独り言が多くなった気がする。


特にこの場所はあまり人がこないからってのもあるけどそのことを藤堂さんに言ったら、「あんたも年取ったね」と一言言われたので、最近は気を付けているつもりだ。

それでも出てしまった気合の一言と一緒に私は立ち上がって、午後の戦争に向かった。


「玉ちゃん、頑張ってね。」


「行ってきます。」


昨日なかなかアポイントが取れなかったクライアントとやっと連絡がとれて、急遽プレゼンをする予定になっていたから、今日の私には一段と気合が入っていた。


役職がついたことで、このプロジェクトの責任者は私になっていた。今まで補佐の仕事は嫌というほどしてきたけど、立場が変わるだけでこんなに心持ちが変わるものかと、我ながら思った。


でも本当に突然のことだったから動揺している暇もなく、クライアントの要望をできる限りくみ取って一晩で原稿を作って頭にすべてを叩き込んだ。不安に押しつぶされそうだったけど、私は連れて行く部下を安心させるためにも、緊張する気持ちを必死にかくして会場までむかった。


「急なお願いなのにありがとうね。」


「とんでもないです。お時間いただきましてありがとうございます。」


人のよさそうなクライアント側の責任者はにこやかにそういった。


こういう時、本当に女は得だと思う。セクハラとかパワハラとかそう言うのが騒がれる世の中で、「女だから」と区別されたくないと思っているキャリアウーマンはたくさんいるのだとおもうけど、でも相手先の人がきっと「若い女だから」と優しくしてくれているのも私はひしひしと感じていて、厳しくされるよりは優しくされた方がいいと思っている私は、それを特権だと思っている。


でも“若い女”という特権を使えるのもいつまでかわからないし、反対に「若い女のくせに」となめられることだってある。そういうときのためにどんな時でもうろたえてはいけないし、しっかりしていないといけない。


「では、改めまして本日はお時間いただきましてありがとうございます。

早速ですが始めさせていただきます。」


本当は全然しっかりなんてしていないし、今だって不安でいっぱいだ。でも“しっかりしていないと”という気持ちが時に味方になってくれることがある。私は”しっかりした自分”の全身スーツを身にまとって、必死でまとめた資料の説明をした。


「玉山さん、すごいっすね。」


なんとかプレゼンが終わってホッとしている車内で、補佐をしてくれている部下の田辺君は本当に感心した様子でそういった。


「すごくなんかないよ。」


「いや、すごいっす。俺ならその場でオッケーって言っちゃいますよ。」


何がすごかったのか何がオッケーなのかわからないけど、部下にそう言われて素直にとてもうれしかった。緊張が解けて今にでも寝てしまいそうなくらいの疲れに襲われたけど、でも上司である私はそんなことで疲れてはいられない。雑談まじりではあったけど、さっきのプレゼン中のことを田辺君が色々と質問してくれたから、社会人の先輩らしくまた気を引き締めてしっかりと話した。


「まじ尊敬っす。」


全然尊敬してない感じで田辺君は言った。ちょっと生意気だし言葉もまだまだだけど、人の懐に入るのが上手でなんだかほっとけない捨て犬みたいな彼は、いつかバリバリの営業マンになってくれるのではないかと思っている。


いつも素直な彼が何度もほめてくれることをいいことに、私は自慢げに「尊敬っしょ。」と答えた。


「玉ちゃん、お疲れ様。先失礼するね。」


「ありがとうございます。お疲れ様です。」


会社に戻ってしばらく色々なことを処理しているうちに、今日はあっという間に終わってしまった。課長はセクハラ発言を除いてはとてもいい上司だ。初めての責任者としての仕事を終えた私にねぎらいの言葉をかけてくれて、「いい結果がくるといいね」と言ってくれた。


―――最後に肩に手を置かなければ完璧だったのに。


「疲れた…。」


この2日間でたまっていた仕事を処理している間にあっという間に誰もいなくなったオフィスでぽつりとそう呟いてみた。今日のプレゼンがよかったのか悪かったのかは別として、本当に心から疲れた。そう思った。


時に自分の気持ちは言葉にするだけでとても鮮明になることがある。ずっと気を張っていた一日だったけど、そう口にしたことで今までは感じていなかった疲れにドッと襲われた。


「お疲れ様。」


そんな疲れた自分にねぎらいの言葉をかけてみた。


本当に頑張った。神経も体力もどちらも擦り減らすほどに頑張った。張っていた気は一気に緩み始めて、なんだか座っているのもつらくなってきた。どうやらキャパオーバーなほど頑張ってしまっていたらしい私は、机にうつ伏して少し寝ることにした。


私の疲れは相当なものだったらしく、机に伏せただけですぐ意識が飛んだ。どれくらい時間がたったのかわからないけど、目を開けると見慣れた景色がそこにはあって、「あ、私まだ帰ってないんだ」と寝ぼけながら思った。


混濁する意識を少しずつ正常に戻しながら体を起こしてみた。すると肩にかかっていたらしいものがふさっと滑り落ちた。


「おはよ、美衣。」


まだ意識が夢の中にいるのだろうか。


私の目の前には机に腰掛けるジョージの姿があって、昔みたいにこちらを見てにっこりと笑った。


「ジョージ…?」


「うん。ただいま。」


こうやって名前を呼んでみたことが前にもあったな。と私はあの頃を懐かしんだ。


そしてやっと戻ってきた意識で机の上を見てみると、たまっていた資料はすべてキレイにまとまっていた。


「えっ。」


「美衣、プロジェクト持ってるんだって?すごいね。さすが。」


私がそんな現実に驚いていることも気にせずジョージは自分の話をつづけた。もう2年ほど前になるんだろうか。こうやって毎日ジョージに励まされていたことを思い出して、また昔が懐かしくなって自然と笑みがこぼれた。


「美衣、なんか輝いてる。」


「なにそれ。」


ジョージの発言に「なにそれ」と思うのも久しぶりで、それもなぜかすごく私をホッとさせた。想い出というものはとても悲しくてとても暖かいものだと思った。


「今日は帰ろ。送るから。」


私がほっこりしている間にジョージは私のカバンと自分の上着を回収してさっさとエレベーターホールに向かった。ジョージは本当に変わらない。変わらず紳士で芯があって、なんだかすごくかっこよかった。


そんなことを考えながらジョージの背中をただ追っていると、あまり縁のない会社の地下駐車場にたどり着いた。そしてジョージは迷うことなくまっすぐに一台の車に向かっていった。


「なに?この車。」


「僕の。かっこいいでしょ?」


車のことはあまり詳しくないけどなんだか黒くてピカピカしていて高そうな車の助手席のドアを開けて、ジョージはそう言った。さすが海外赴任者は違うなと感心しながら私は素直にそのエスコートを受けた。


「え、てかなんで車?」


「やっとそれ聞いてくれた。」


ジョージの両親はまた海外に行っているという話も聞いたし、ジョージはこっちには実家はないはずだ。自分も海外赴任中なのになんで?という疑問がやっと浮かんできて、やっぱり私、とても疲れているのかもしれないと思った。


「帰ってきたんだよ。」


「え?」


「また日本で働くよ、美衣と一緒にね。」


てっきりジョージはずっと海外で働くんだと思っていた私はわざとらしく驚いた。そんな私を見てジョージはなんだか不満そうな顔をした。


「帰ってきてほしくなかった?」


「そういうことじゃなくて。」


そういうことではなくて、私の中の感情がよくわからなかった。ただただ驚いて「そうなんだ」としか言えなかった。


―――本当に疲れているんだ、と思った。


「優秀な人材が本社に帰ってこないわけないでしょ?」


うちの会社の本社機能はすべて日本にある。ジョージの話によると、本社と海外の支社の連携をもっと高めて海外展開を広げていくための橋渡し役として海外に赴任していただけで、それがひと段落したからと帰ってきたらしい。


「うれしいな、美衣とまた働ける。」


「ほんとだね。」


私も素直にとてもうれしいと思った。


責任のある仕事を任されてからというもの気を張ることがとても多くなって、やれることが増えた分負担もとても増えた。それが私にとってとても重みになっていることに自分自身も気づていて、そんな重みを誰かに聞いてほしかった。ジョージがいてくれるだけで、その悩みは解消されそうだとおもった。


「そんな風に言われるとドキドキするんだけど。」


いつもの調子でジョージは言った。なんだか自分の手元に”日常”が帰ってきた感じがした。それがなんだかとてもうれしくて、得意げに「そうでしょ。」と言ってみせた。


「ほんとにありがとね。」


「ううん。こんなことならいつでも。」


ジョージはピカピカの車でうちまで送ってくれた。ふたを開けてみるとジョージの新居と私の家は歩いて10分くらいの距離にあって、ご近所さんになれたことにジョージはとても興奮していた。


私はまだジョージが帰ってきたという確かな実感がわかなくて、日常が帰ってきたといっても何となく不思議な感覚が消えなかった。


ジョージはいつも突然な人というということが変わっていないのは確かだった。


「美衣。」


ドアを閉めて帰ろうとすると、ジョージは優しく私の名前をよんだ。いい車に乗って余裕な様子でふるまうジョージが、なんだか前よりもずっと大人に見えた。


「明日、デートしてくれない?」


今週はとても頑張ったから週末はゆっくりしようと思っていた。だからどうしようか一瞬迷ったけど、ジョージの顔を見てみるとなんだかいつもの自信が嘘みたいに不安そうな顔をしていたから、気分転換しに行くのもいいなと思って笑顔でうなずいた。


「やった!じゃあ明日10時半ころ迎えにくるね。」


ジョージは本当にうれしそうに笑って、ピカピカの車を運転して帰っていった。それがとてもかわいくて子犬みたいに見えた。大人に見えたり子供に見えたり、やっぱりジョージは不思議な人だと思った。


「おはよ。」


「おはよう。」


言った通り10時半ぴったりにジョージは迎えにきた。カジュアルな格好をしたジョージはスーツを着ている時より若く見えて、でもすらっとした背丈がカジュアルな格好もおしゃれに見せた。私も背伸びしてヒールをはいてきた方がよかっただろうか。そう思いつつもスニーカーのままジョージの車に乗り込んだ。


「どこいくの?」


「僕が美衣と行きたいところ。」


なんだそれと思ったけど、出かけるだけで気分転換ができている気がした私は、それ以上何も聞かないまま窓に流れる景色を見つめた。こうやってボーっとしながら外を眺めているだけでも、日々のストレスが癒される気がした。”何も考えない”というのは無駄なようで本当はとても大切なことなんだと思う。


「着いたよ。」


着いたのは遊園地だった。なんだかジョージが選ばなさそうな日本の”ど定番”なデートコースがちょっとおもしろかった。


「来てみたかったんだ。」


あまり遊園地に来たことがないというジョージは目を輝かせながらそう言った。聞かなくてもウキウキしていることがわかるジョージの反応が何だかかわいくて、そしてそのウキウキが私にも伝わって、「行こ!」とジョージの手を引いた。


「大丈夫?」


両親が仕事で忙しくアメリカでもあまり遊園地に行けなかったというジョージは、目に入る乗り物すべてに乗りたがった。私は人生の先輩らしく余裕をもってそれに付き合ったけど、絶叫系に乗った後ジョージは青い顔をしていたから一旦ベンチに座って少し休憩することにした。


「…かっこわるい。」


ぽつり、とジョージはそう言った。


ジョージのこんな弱った姿を見るのは初めてで、とても新鮮で、とてもかわいく思えた。私は近くにあった自販機で水を買って、ジョージの頬にそれをつけた。


「はい。」


「ありがと。」


いつもと逆だな、と思った。


会社ではだいたい私が落ち込んで弱って、いつもジョージは優しくフォローしてくれていた。私はそんな優しさに何度助けられたかわからない。少しでも恩返しをするためにも同じことをしてみたけど、それでも私の返すには全然足りてないと思った。


「かっこわるいでしょ、ごめんね。」


「ううん、うれしいよ。」


ジョージの弱ったところなんてめったに見られないから、そんな弱いところも見られたことがなんだかうれしく思えた。ほんとにうれしくてそう言ったのに、ジョージはそんな私を見てちょっと不満そうな顔をした。


「悪いな、美衣は。」


「なにゆってんの、めちゃくちゃ善人だよ。」


しばらくそうやってゆっくりしていると、ジョージの顔色もだいぶ落ち着いた。私がそれに少しホッとしているうちに、ジョージはスッと立ち上がって背伸びをした。


「美衣お腹すいたでしょ、なんか食べよ。」


「ジョージは大丈夫なの?」


「僕がお腹ペコペコなの。」


ちょっと背伸びをしてリフレッシュをしたジョージは、さっきまで青い顔をしていたのが嘘みたいにサクサクと歩き始めた。私も驚いている間にそれに遅れないようにサクサクと歩いて一緒に売店に向かった。


「ホットドッグでいい?」


聞かれたけどそんなに選択肢もなくて私は提案にうなずいた。昼時ということもあって少し売店には人が並んでいたから、私は先に席を取っておくことにした。


「お待たせ。」


思ったよりもはやくジョージは帰ってきた。両手にはホットドッグ以外にもたくさんの食べ物を持っていて、何人で来たと思われるだろうと思った。


「買いすぎじゃない?」


「ほんとにお腹減ってんの。」


そうやってジョージをからかいつつも、朝から夢中で遊んでいたせいで私も相当お腹が減っていた。日本人らしくしっかり手を合わせて「いただきます」をした後、ジョージが買ってきてくれたジャンキーな食べ物を2人で夢中でほおばった。


「おいしいね。」


「うん。おいしい。」


外で食べるご飯はどんなものでもおいしくなる魔法がかかる気がする。ホットドッグたぶん別に特別なものではないのだと思うけど、青空の下で食べているというだけでとてもおいしかった。


それに、なんだかジョージと二人で食べるご飯は”外でパン”で、それが一番しっくりきた。久々に感じるそのしっくり感がまたうれしくて、ホットドッグのおいしさはさらに加速している気がした。


「美衣。」


「ん?」


私が夢中になってホットドッグをほおばっている途中で、ジョージは私を呼んだ。そんな私の姿をみてジョージはとてもやさしく笑った。


「すごく好き。」


「あ、うん。私も。なんかすごいおいしいね。」


「ううん、そうじゃなくて。」


「ん?」


なんだか歌を歌うみたいにテンポよく会話が続いた。その後ジョージは見たこともないくらい穏やかに笑って、また歌を歌う前みたいに息を吸った。


「僕、美衣がすごく好きだよ。」


その言葉は風の流れのように、私の耳に流れ込んできた。でもその言葉に驚くことはなくて、なんだかとても自然で、言われるような気がしていたような気もして、私もジョージみたいに穏やかに笑って見せた。


「私も好きだと思う。」


私はずっとはみ出るほどの幸せはいらなくて、それなりの幸せが欲しくて、それなりに頑張りたくて、それなりに認めてほしくて。いつも”それなり”を求めて生きてきたと思っていた。


それなりでいい。そう思っていたはずだったけど、そう思って探して出会えた恭祐さんとの恋は、結局それなりで終わらなかった。


もしかして人にとったら”それなり”の幸せなのかもしれないけど、その”それなり”が自分にとっては”それなり”でなくなることに気づいてしまった。


「思うだけ?」


「わかんない、でも…。」


今までそれなりで人から”はみ出さない恋”を探していた私に、ジョージはそれは”愛”ではないといった。はっきりとそう言い放った彼の言う愛なんていまだによくわからないけど、確かなのは今私の心はとても満たされていることだった。


「なんか、すごい今幸せなの。」


この幸せが好きということなのではないかと思う。


周りで次々と始まる結婚や出産のブーム、SNSで見る幸せそうな写真…。人と自分は違うんだとわかっていても、アラサーの私にとってそれは時に凶器になる。誰が決めたわけでもないし、別に何も悪いことをしているわけでもないのに、”30歳”という壁は女性にとって一つの”壁”で、その区切りに向かって焦る気持ちが先走って、私の正常な判断はどこにあるのか知らないうちになくなってしまっていた。


「やっと伝わった。」


「うん、伝わった。」


それにきっと”それなり”と言いながらも”人からうらやましく思われたい”ともどこかで思っていて、そういう邪念みたいなものはジョージの言う通り”愛”ではないことくらい、私にもわかっていた。


それがわかったとしても、きっとこれからも私はそんな”無駄な心配や焦り”に襲われることになると思う。愛とか恋とか、そんな目に見えない不確かなものを信じられなくて、判断が鈍ってしまうこともあるかもしれない。


でも少なくとも今、私はジョージといると幸せだ。


人と違っても、ちょっとくらいはみ出していても、人からどう思われても、それが私にとっていつか求めていた”それなりの幸せ”に変わると、ジョージを見ているとそう思えた。


「ほんと。美衣はかわいいなぁ。」


「なにそれ。」


ジョージはそう言って優しく手をつないだ。つないだ手から流れてくる体温がとても暖かくて、とても幸せだった。


もっと若いころは素直にわかっていた”好き”という感情を、素直に求められなくなったのはいつからだっただろう。何か無駄なものに邪魔をされてとても複雑になっていたその感情は、ジョージと、そして恭祐さんのおかげでとてもキレイなものに整頓された。


「感謝しなきゃな。」


「なにに?」


「秘密。」


あの頃の辛かった気持ちもたくさん泣いたことも、今思えばこうやって自分の気持ちをキレイにさせるための出来事だったのかなと思う。そう思えるようになったことが前進で、そしてこうやって自分の「好き」に正直になれたことがとても大切なことに思えた。


そう思ったら久々に恭祐さんの顔が自然と浮かんできて、こういう気持ちにさせてくれたことを感謝したくなった。




「めでたいなぁ。」


「結局美衣はそうやって…。」


断然ジョージ押しだった2人は、私がジョージと付き合った報告をするととてもうれしそうにした。いつもこうやって喜んでくれる2人の顔をみるのも、私の”それなりの幸せ”の一つだ。


「そんなこと言って、2人の方が結局早く結婚するじゃん。」


「ごめん。」


「お先に。」


菜月も梨絵も、私がうじうじしている間に婚活パーティーでさっさと相手を見つけていた。最初は婚活パーティーなんてと半分あきらめで行っていた2人だったけど、ほんとにちゃっかりしていると思う。


2人もきっと私みたいに無駄な概念や焦りなんかを感じているところもあると思うけど、2人には私と違って”芯”みたいなものがある。だからきっと2人が選んだ相手は素敵な人なんだと思う。


「準備は進んでる?」


「うん、でも忙しいしめんどくさくなってきた。」


「私も。」


「結婚って、なんかいいね。」


「したことないからわからない。」


「だよね。」


結婚が決まっても私たちのペースは変わらなかった。


こうやっていつまで3人でお酒を飲んでいられるのだろうか。女子会の形というものは変化をし続ける。それがきっと”女の幸せ”と呼ばれるものによる変化だってわかってはいるものの、いつかバカみたいな話をして飲めなくなるのかと思うと少しさみしくなった。


「私の二次会、ジョージも連れてきなよ。」


私が少しセンチメンタルな気持ちになっていると菜月がそう言った。菜月は何度かジョージに会ったことがあって、なんだか2人は昔からの親友みたいに意気投合していた。


「いいの?」


「うん。なんか華やかになりそうだし。」


理由はよくわからなかったけど、すぐにジョージに聞いてみるとぜひ行きたいとの連絡がきた。この3人の集まりにジョージがいるなんて不思議な感じがするなとおもったけど、でも大好きな人たちが集まることはとても楽しみなことだった。


私はまた先のことばかり考えるのをやめて、身近にある楽しみなことだけを考えることにして、その決意を込めて目の前のビールを飲みほした。


「おはよ。」


「いよいよだね。」


いつもと同じように日常を過ごしているうちにすぐに菜月の結婚式はやってきた。


菜月が結婚するなんてなんだか全然現実味がなくて、今でもあまりしっくりきていない。きっとそれは梨絵も同じで二人ともちょっと不思議な感情のまま目を合わせた。そんな不思議な感情のまま挙式の会場にいって教会に入ると、もっと不思議な感情が浮かんできた。


「結婚、するんだね。」


やっぱり菜月も同じ気持ちのようで、自分に納得させているかのようにそういった。私はその言葉に「うん。」とだけ答えて、その気持ちの着地点を何とか探そうと奔走してみたけど、なんだかソワソワしている感情は全然落ち着かなかった。


私たちの落ち着かない感情が落ち着くのなんて待っていてくれるわけもなく、挙式は静かに幕を開けた。大きな木の扉が開くと緊張した面持ちの旦那さんが入ってきて、旦那さんはそのままキレイにあるいて教壇に向かった。


そして間もなくして同じように大きな木の扉が開いて、光に包まれた菜月が見えた。その姿は本当にきれいで可愛くて、光まで菜月を祝福しているように思えた。


―――今まで頑張ったね。


私たちは自分たちの気持ちと闘いながら葛藤しながら見失いながら、ずっと何かを探していた。きっとその戦いにゴールはなくてむしろこれがスタートなんだろうけど、でも私たちは確実に頑張った。頑張って頑張りぬいた。そう思うと今までの出来事がたくさん浮かんできて、それが涙になって流れた。


「よかったね。」


「うん、よかった。」


私と梨絵は終始泣きながらそう言いあった。


きっと菜月の家族よりもずっと泣いていて、周りの人たちからは少し不審な目でみられたけど、それをわかっていても涙がとまらなかった。


―――よかった、本当によかった。


号泣のまま挙式は終わったけど、その後すぐ私たちは受付をすることになっていたから、余韻もなく急いで仕事モードに切り替えた。あたりまえだけどたくさんの人が菜月のことをお祝いしに来ていて、2人をつなぐ人たちが一気に同じ場所に集まる結婚式ってなんだかほんとに特別なことだな、と思った。


「私も結婚したくなったな。」


「なに?今更。」


梨絵にはそう言われたけど、恭祐さんのことがあってからなんとなく避けていた”結婚”ということを、私はまた意識することができるようになった。充実した幸せな日々を送っていれば結婚なんて形式にとらわれなくてもいいと思っていたけど、やっぱりアラサーの私にはどこかで”安定”とか”安心”みたいなものが必要らしい。


「お、くるよ。」


結婚への憧れを膨らませている間に、菜月が披露宴会場に入場してきた。さっきと同じドレスなのに髪型を変えただけで雰囲 気がぐっと変わって、本当にキレイだった。もっと気の利いたコメントをしたかったけど、ただ”キレイ”という言葉しか出てこなかった。


「本当にキレイだよ。」


「ありがとう。」


式の中盤になって、やっと菜月の近くに行って声をかけることができた。


ほとんど毎週のように会っているはずなのに、ドレスを着てかわいいヘアメイクをするだけでも全然違う人に見えた。その姿は本当にキレイで、今まで見た中で一番キレイで、それだけで涙がでそうだった。


「よかったね。」


きっと梨絵も同じことを感じていて、私たちは3人でうるうるしあいながら抱きしめ合った。その光景ははたから見たらきっと異様だっただろうけど、今の気持ちは”戦友”である私たちにしかわからなかった。


「幸せ?」


「うん、すごく。」


菜月は迷うこともなくそういった。そう言った菜月の目は”それなり”を求めていたころよりずっと輝いていて、とてもまぶしく見えた。


何か月も用意していたはずなのに披露宴はすぐに終わってしまう。


衣装を変えるたび輝く菜月を見ては泣いて、両親への手紙を聞いては泣いて、そしてその度に飲んで…。結婚式という特別な日にも梨絵と私の行動はあまり変わっていない気もしたけど、それでも主役の菜月の笑顔を見るだけでいつもよりお酒は進んだ。


「美衣、いっぱい飲んだんでしょ。」


「あ、ばれちゃった?」


その証拠に二次会で合流したジョージにはすぐそれがばれてしまって、よっぽどお酒くさかったんだろうなと思ったけど大して気にならなかった。


―――だって今日は何をしても幸せに還元される特別な日なのだから。


二次会の会場は披露宴の会場と近いおしゃれなイタリアンのお店だった。菜月らしいナチュラルな装飾がカジュアルで可愛くて、私は梨絵とひたすら写真を撮って若い子みたいにはしゃいだ。


とはいってもはいしゃいでいる暇はあまりなく、2次会でも受付と進行を任されていた私たちはすぐに仕事モードになってやることをこなした。


「慣れているね。」


「だてに出席してないからね。」


ジョージの言葉はアラサーにとってとげにも感じられたけど、本人が全く悪気を感じていない分なんだかマイルドにも感じた。


前まではなんとなく年齢というものに追われているような気がしたけど、最近それも気にならなくなってきた。カップルや夫婦は一緒にいると似るとよく聞くけど、わたしもジョージに似てきたのだろうか。


それはとてもうれしいようで、でもジョージみたいにうまくやれない私は友達が減りそうな予感もした。


「ね、美衣どこみてるの。」


一人で思考を巡らせてボーっとしている間に、あっという間に菜月の入場の時間になった。


「では準備はいいかな、新郎新婦の登場ですっ!」


披露宴とは打って変わってにぎやかな雰囲気なのは、司会が新郎の友達になったからだろうか。打ち合わせの時から私たちを楽しませてくれて、今日こうやって立派に司会をこなす友人2人は一人がお調子者で一人がツッコミ役で、まるでいつも漫才を見ているようにたのしかった。


そしてそれを見ているだけで、恭祐さんやその仲間たちと遊んでいたあの頃のことを思い出したけど、そこまで胸がズキっとしなかったのは、私がすっかり立ち直った証拠だと思う。


「かわいい~~!」


2人が登場した瞬間、どこからともなくそんな声が聞こえた。


菜月の衣装もさっきとは打って変わってカジュアルルックだった。真っ白のドレスでもカジュアルラインに変わるだけで全然雰囲気が違う。隣に立っている涼馬さんの衣装もデニムが合わせられたとてもおしゃれなスタイルで、会場の雰囲気にもぴったりだった。


「かわいいね。」


「ね。」


でも花嫁は結局何を着てもかわいいんだと思う。


それは真っ白なドレスや普段より華やかなメイクのおかげももちろんあるけど、それだけじゃなくて、その人自身の幸せなオーラがそうさせていることを、私は全身で感じていた。


今日、菜月の幸せは確実にあふれ出していて、それは会場中に伝わっていた。幸せはなにか不幸の還元であって、不幸の貯金でしか増えないと思っていた私も、ただただそれだけが増えることもあるんだと本気で思った。


幸せボケしているだけかもしれないけど、そう思いたかった。


「それではここからはブーケプルズに移ります!」


最近ブーケトスをしない挙式をよく見えるけど、菜月もそのスタイルだった。その代わりといってはと、二次会ではやりのブーケプルズの演出を用意していて、周りの女性にリボンが次々と配られた。


「美衣、あんたもでしょ。」


進行に徹しようと様子を見守っていると、梨絵にぐっと背中を押された。正直恥ずかしくて出ないでおこうと思っていたけど、でも菜月もずっと手招きをしていたし、何よりリボンが余っていたから仕方なく前にでてリボンを手にした。


「それではせーので行きますよ!」


リボンを持っている女性の中には、目を輝かせている人もいれば私のように恥ずかしそうにしている人もいた。みんな複雑な事情の中にいるのだろうけど、いつかここにいる女性全員が幸せになれればいいなと自分だって結婚していないのに余計なお世話なことを本気で考えた。


「せーのっ!」


「え?」


余計なことを考えてしまったせいだろうか。


せーのと言われてもリボンを引かなかった私以外の女性のリボンの先にはブーケはなくて、つまり私のリボンの先をたどっていくと、それは確かに菜月の手元のブーケにたどりついた。


「おめでと、美衣。」


人前に出るのが苦手でなるべく目立ちたくないと思っているタイプなのに、ここで一気に脚光を浴びてしまいそうになることが急に恥ずかしくなった。でも周りのみんなは拍手をしていて、私は照れ隠しのためにも必死に礼をした。


「よかったね。」


いたずらそうに梨絵がそういったから、私は思いっきりにらんでみせた。そんな私をみてまたいたずらそうに笑って「ごめん」と言われたけど、全然謝られた気はしていなかった。


「ジョージ、頼んだよ。」


「喜んで。」


その後梨絵とジョージがよくわからないやり取りをしていたけど、私は自分の顔の熱を冷ますのに必死だった。


でもいつも見えない幸せが、形になって現れてくれたことは私にとってとても大きなプレゼントのように思えた。きっとこの花を見るたび、私は幸せな菜月の姿を思い出す。そして何度だって幸せな気持ちになれる。いつまでもそういう気持ちでいられるようにするためにも、家に帰ったらすぐこの花をドライフラワーにしてしまおうと考えた。


「結婚式っていいね。」


「ね。」


幸せをたくさん浴びた帰り道のジョージと私の気持ちはピッタリと一致していた。


なんとなくほっこりする気持ちと、右手にもった幸せのブーケ、そして左手に感じるジョージのぬくもり。すべてが暖かくてこのままなら仕事でどんなことを頼まれたって快く受け入れられるとおもった。


「ねぇ、美衣。」


「ん?」


ジョージの言う”美衣”の発音はいつ聞いてもとてもキレイだ。いつ呼ばれてもスッと心に届くこの感じを、今までは発音がきれいだからと思っていたけど、本当は違うのかもしれない。これまで何度もジョージと一緒に歩いたり話したりしてきたけど、こうやっておもうのは初めてだった。何をしても幸せに還元される今日という日は、本当に最高だと思った。





「僕たち結婚しようか。」





私がそんな馬鹿なことを考えていると、いつもの会話のようにジョージはそう言った。私は一度驚いてジョージの方を見てみたけど、ジョージはいたって普通の顔をしていた。だから私も至って普通の会話のように、




「うん、しよっか。」




と答えた。


「愛してるよ。」


「なんだそれ。」


未だに愛が何なのかなんてよくわからない。ジョージが私の運命の相手だったのかなんて、きっと一生たっても答えはでない。でもそれでいい。少なくとも今の私はそう思える。


だって他人にとって“はみだす恋愛”だったとしても、それが自分にとって“それなり”なのかもしれないから。それをジャッジするのは誰でもない、自分なんだから。


「あ、そうだ。週末お母さんが来るんだよね。

一緒に会ってくれない?紹介したいんだ。」


「え、もう?」


ある程度段階を踏んで、順序よく進めるという日本の”美学”みたいなものは、やっぱりジョージには通用しないらしい。でも突然の提案に驚く私を見て、ジョージはいつも通りふわっと笑った。


「そんな正式な紹介じゃないから安心して。」


「なんて紹介するの?」


「僕の愛だよって。」


私の驚きを察してジョージがとても”日本人的”なことを言ったのに驚いた。

でもひとまず安心して胸をなでおろして、何を着ていこうかとやっと正常なことを考える頭が戻ってきた。


“それなり”を探していた私に、「そんなの愛じゃない」と言い続けた人とまさかこんなことになるなんて予想もしていなかった。


彼の言う”愛”なんて私にはまだわからないし、ジョージだって本当にわかっているかなんて誰にもわからない。


でも少なくとも今の私は、この人と彼の言う”愛”を探してみたいとそう思えた。そう思えただけで、一生一緒にいる十分な理由になっていることくらいは私もしっかり理解できていた。


「え、てかお母さんって日本人だよね?!」


「そうだけど。」


幸せな気分の中にいる私でも、日本人のお母さんにそんな風に紹介されることを想像してぞっとできるくらいの労力は残っているみたいだったけど、またその時になったら考えればいいと、今はただ左手のぬくもりに身を任せてみることにした。


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はみださないくらいの恋愛 きど みい @MiKid

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