第6話 謝罪
「本日から生徒会の一員となりました、
頭を下げた俺の耳に、三人分の拍手が聞こえてきた。
「じゃあ、まずは私から。私の名前は
そう言って、東雲先輩はにぃっと歯を見せて笑った。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
それにしても、〝城島っち〟ってなんだ? 俺の
「次は私かな。私の名前は岸本
「あ、はい」
書記か。何となく、会計よりは俺に向いてそうだが。
「えーっと、
「いえ、そんな。全然気にしてないので」
寝ている女性に近付くなんて、思えば、俺も不用意だった。しかも、姫城先輩は寝起き、ああいう行動に出られても仕方がない。
「そう言ってもらえると、助かります」
こうして姫城先輩と実際に対峙してみると、舞台上とはまた違った印象を受ける。屋上での件があるにしても、少し挙動不審気味だ。人見知りするタイプなのだろうか?
「じゃあ、今日のところはこれで。また明日、放課後にここに来てくれ」
「はい」
岸本先輩の言葉に
「失礼します」
頭を下げ、扉を閉める。
そういえば、
そんな事を考えながら、階段に向かって歩を進めていると、
「城島君」
背後から名前を呼ばれた。
足を止め、振り向く。こちらに向かって、小走りで近付いてくる、姫城先輩の姿がそこにあった。
「どうしました?」
何か伝え忘れた事でもあったんだろうか?
「いえ、あの、もう一度、ちゃんと謝っておきたいなと思って。すみませんでした」
そう言って、頭を下げる姫城先輩。
「止めて下さい。寝ている所に近付いた俺も悪かったんですから」
「……
「あ、はい。全然。何とも」
まだ多少赤みは残っているが、明日にはきっと元通りだろう。
「本当ですか? なら、いいんですけど」
「あの、一ついいですか?」
「はい。何でしょう?」
「敬語、止めませんか。俺の方が年下ですし」
実は、
「ダメ、ですか?」
「ダメではないですけど……」
一般的に考えたら、おかしいだろう。
「その、今まで、あまり同世代の男の子と話す機会ってなくて。ずっと女子高でしたし」
「あぁ……」
色々な意味で、姫城先輩の言葉に納得してしまう俺だった。
「なので、出来ればもう少しだけ待って
「分かりました。そういう事なら」
こちらとしても、最初から無理
「ありがとうございます。では、私は生徒会室に戻ります。明日からよろしくお願いします」
「お願いします」
二人で頭を下げ合う。
顔を上げる。目の前に姫城先輩の顔があった。どうやら、奇跡的に頭を上げるタイミングが一致したらしい。
「あ、あの……失礼します」
言うが早いか、姫城先輩は
なんなんだ、一体……。まぁ、いいか。
気持ちを切り替え、再び下駄箱に向かう。
なんだか、
「城島君」
先程とは違い、今度は正面から名前を呼ばれる。下駄箱の所で、岡崎が俺を待っていた。
「岡崎。待ってくれたのか」
目の前まで行き、立ち止まる。
「うん。迷惑かなと思ったんだけど……」
「全然。むしろ、待っててくれて嬉しかった」
「ホントに? なら、良かった」
俺の言葉を聞き、岡崎が
「生徒会の人、何だって?」
「なんか、生徒会に入る事になった」
「えー!?」
岡崎の反応も分かる。俺自身、まだ実感が
「凄いね、城島君。おめでとう」
「おめでたい、のかな?」
「おめでたいよー。生徒会だよ。しかも、一年で。……あ、でも、そうなると、こうやって帰れる機会も減っちゃうんだね」
「悪いな……」
「ううん。生徒会の仕事を任されたって事は、その仕事は城島君にしか出来ないって事だもん。だからさ、
「ああ」
岡崎の言葉に、俺は力強く頷いた。
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