第16話

 私は仕事を辞めたよ。

 一時的にね。生きる為に仕事を辞める。それも良いよね。


 仕事を辞めて、これを書いているよ。

 私の生きた記憶と、遺書を残すために書いている。

 記憶といっても全てではないし、忘れてしまったことも沢山ある。

 覚えていても書き残していないことも沢山ある。

 あんまりごちゃごちゃ書き込むと、読み取り難くなるだろうしね。


 私はもう、子供の頃とは違う。

 子供の頃は、自分がまだ死なない事を分かっていたんだ。

 今は、もういつ死んでもおかしくない年齢だ。


 私はこの世界が好きじゃない。

 正直、もうこの世に産まれたくなどないな。

 でも、きっとまた生まれ変わってこの世にくるんだろうね。


 だからせめて、この世界をもっと良いものにしてほしい。

 良いものにするのも、悪いものにするのも、生きている人間だよ。

 生きている人間は、自己中だ。

 今の自分が良ければそれでいい。

 そんな人間が多いのも、そんな人間が国を動かす位置に沢山いる事も知っている。


 けど、良くしておいてほしいじゃないか。

 いずれまた産まれる自分の為に。

 それに、今生きている大切な人達の為に。


 お願い、世界をもっと良いものにして。


 

 大分前に思ったことなんだけれど。

 この世で語られる神様は、人間にもある魂なんじゃないかと思う。

 高い次元にある魂、それが人間としてこの世に産まれこの世界に神話を残した。


 この世でいう死後の世界、地獄・天国。

 それはこの世によく似た世界の一部。

 天国と地獄の中間、その世界にいる魂が転生してこの世に産まれてくる。


 でも稀に高い次元にある魂がこの世に人間として産まれたなら、自分達の世界のことをこの世に残して行ったり、あるいは創造(想像)した話を残して行ったり。


 この世に産まれるのは魂の遊びの様なものでもあり、修練のようでもあると思える。


 私は死んでこの体を捨てて、天国のようなところにいる事を思い浮かべてみたことがある。

 この世に体を持って産まれることが、凄く億劫というか、嫌に感じた。

 魂の記憶のように、記憶はないが魂が承知しているような、説明しにくいなにかが教えてくれる。


 遊びのように、自分達で世界を作っていった。

 諭すように、高次元の魂が手を加えた。

 それがこの世界、この世。私は、そう思えた。


 この世界の有様は、この世ではない世界と繋がって作り上げられた、箱庭のような世界。

 良いといえない世界、けれど修練も出来、娯楽もあり、自身を育てられ、発揮出来る世界。

 可能性を試し、確認する世界。


 私は、魂を穢したくはない。


 誰もがそういう風に思ってこの世に産まれ出ても、今の世は一体どれだけの人が、魂を穢さずにこの世の生を邁進出来るのだろう?


 この自己中な人間が作り上げた世界では、魂を穢さず生きる事の方が難しい。

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