第15話
愛を見失った私は、もう……いつ死んでしまってもおかしくなかった。
ただ、死ぬことを踏みとどまるのは約束があったから。
『自分も他人も、誰も殺さない』
シグと約束した。私の信念になったこと。
そして、少し未練があったから。
夢は叶えられない、と諦めていても、その夢に未練があるからだ。
それでも、惰性で仕事をしていると生きているのが苦しくて苦しくて……
どうにも自殺してしまいたい願望に囚われる。
車で高速を走っていると、このまま突っ込んで死んだら楽だろうな、という魅惑に負けそうになる。
子供の頃、精神環境が地獄でも耐えられたのは、支えてくれる存在がいたからだ。
今は姿も見えない、声も聞こえない。
我慢も限界に近付いてきていた。
涙が溢れる。
自分が自分でなくなる。
死んでしまおうか。
どこか遠くへ行って、原っぱで横になって、そのまま衰弱死。
そう思って、スマホでネットに繋いだ時。
あるまとめサイトのタイトルと画像が目に入って、釣られるようにページを開いて見た。
シグが、そこにいた。
美しい、と思った。
昔、買った漫画。
シグが見れなくなるのが嫌で、終わってほしくなくて。
でも、終わらないのはもっと嫌で。
葛藤したまま、最終巻を買ったのを覚えてる。
当時は、続きが出るなんて考えは全く頭になくて。
その日、その時見つけるまで続編が出るなんて、全く予想だにしてなかった。
『死ぬな』
その瞬間、声は聞こえなかった。
でも確かに、シグに、そう言われた感じがした。
そうだ、確かクロにも言われた。
『本当にお前がダメになりそうな時には、少しだけ支えてやる』
少し、その少しのおかげで私は……
生きたいと思ってしまった。
続編を、見たいと思ってしまった。
ただただ、泣いた。
シグにまた会えて嬉しかった。
声が聞こえた気がして嬉しかった。
何者かは、私に未練を断ち切って死ぬより、未練を作らせて苦しませたいのかと思った。
だって、私は完結まで生きていられるかも分からない。
それだけじゃない。続編を見れば、内容に苦しむかもしれない。
それでも、私は、まだ生きていようと思った。
それに、もしかしたら……
また、シオンやクロやシグと話せるかもしれない。
なんだかそんな気がしてきたんだ。
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