第13話

 綾香様を見に行ってから3年程が経った頃。

 ふと、思い至ってしまったことがある。


『私は、〇〇〇〇を世の中に出させる為に存在したのでは?』


『父親に、〇〇〇〇を出すように私が進言したからこの世に出たのなら』


『私が綾香様を好きになったのは、運命のようなものに操られていたからで』


『私が綾香様を助ける事は、運命に折り込みずみで』


『私が運命に抗って長く生きようと思ったから、起こされた事故で』


『事故の被害を救う為に〇〇〇〇が父親によって世の中に作り出される』


『なんだ。ぐるっと一周してるじゃないか、ピースがはまったみたいにしっくりくる』


『つまり、私は……綾香様を自分の意思で好きになったのではなく、そうなるように仕組まれたのか』


『その上、だとしたら……私の役目も、終わりだ』


『どうりで寿命が30~50くらいだと』


『確かに役目の終わりなら、私がこのあと生きようが死のうが世の中にとってはどうでもいいものね』


『私の夢も思いも何も関係なく』



 この時、綾香様への愛がすっと冷え込んで、運命とか世界とか人とか、そういったものを操ろうとする神様のような存在を一層強く感じた。


 私が父親に言ったのは、綾香様となっつんが、ほんの少しでも幸せでいられるよう。

 ほんの少しでも良い世の中で生きていけるように願っての事だったんだよ。

 他の大勢はついで。私はその中に入ってすらいない。


 私は生きる希望を見失った。

 綾香様への愛は私の心の拠り所だった。

 操られて好きになったなんて、そうして寿命を削ったなんて、それで夢も諦めるようになって、そんなの惨すぎる。


 だけど私は、それでも綾香様が好きなんだよ。

 たとえ、愛じゃなくなくなったんだとしても。

 心の拠り所がなくなって、私自身の生きる気力が失われていっても。

 綾香様となっつんが幸せであるように願っているよ。

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