第11話

 そう、私は母を、助けようと思えば助けられる側にいた。

 ただ、悩んだんだ。

 悩んで、何もしないことを選んだ。

 特別なことは何もしないで、ただ、看病して看取る。

 

 人がいつ死ぬか、そんな運命はもう決められている。

 決まっていることを変えられるとしたら、それは私と綾香様のように、誰かが何かを犠牲に得られるものなんだろう。

 私は見た未来を変えようと、何度も試した。

 結論から言えば、それで絶望した。

 運命というのは、そうそう簡単には変わらない。


 だからこそ、私は自分が見えていた。失くしたと感じる寿命に縛られる。


 私は30~50位で死ぬんだろう。自分の容姿と感覚からの憶測ではあるけれども。

 もしかしたら死なずに、脳死状態や、全て忘れるように自分を無くしているのかもしれない。


 寿命なんて知らずに、未来なんて分からずに、呑気に生きられたら、思うように突き進んで生きていけたのかもしれない。

 死ぬ時の未練や後悔なんて考えず、やらない方が後悔だとして、突き進んでいけたのか。


 私は、未来だとか、運命だとか、そういうの。

 分からずに生きていける人が、少し羨ましいと思う。

 

 子供の頃から、まるで悲劇のヒロインみたいで。

 私は、特別なんていらないから、平凡な幸せが欲しかった。

 平凡といえるかはわからないけれど、夢もあった。


 なに一つ、まともに手に入れられなかったな……


 私が高校の時に、激しい殺意を持った時、何者かの望む存在から、離れてしまったからかな……


 平凡にも、異端にもならない。どっちつかずの、幸せでも、不幸でもない。


 もし、私の物語があるなら、これは駄作だな。


 

 もしこの物語を変えられるなら、変えてみたい。


 例えば、綾香様に告白して、一緒の学校に行って、一緒にいられる。傍で支えていく物語とか。


 例えば、なっつんとの縁を切らずに、最後までどうなろうと貫き通す物語とか。


 例えば、私が漫画を書いて、私の大切な人達をこの世に存在させる物語とか。


 例えば、私が綾香様と出逢わずに、誰も殺さないって信念も持たずに、人間を憎んだまま、殺戮者になる物語とか。


 例えば、特異な能力を封じ込めようとせずに、能力をのばしていった物語とか。


 

 見てみたかったな。そんな物語。殺戮者はなりたいとは思わないけれど……


 人生を、今の記憶を持ったまま幼少期からやり直せたら……

 それが一番の願いだと思う。

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