第9話

 私はなっつんと何度か精神が繋がった。

 私はなっつんを好きになっていた。

 なっつんは私に依存して、私はなっつんに依存した。


 なっつんのくれた言葉は、私を幸せにしてくれた。

 いくつか一緒に夢物語を語った。


「二人で結婚出来たら良いのにね」


私「流石にそれは無理だろうね」


「海外なら同性でも結婚出来るところがあるよ」


私「あぁ、確かに。それなら結婚は出来るかも」


「うん」


私「なっつんがそれを望むなら私は努力するよ。言語も風習も勉強する。だけど、私はなっつんと一緒なら結婚なんてしなくていいよ」


「うん。ありがとう」



 そんな話をして、もし私が綾香様と一緒にいられたら。綾香様と結婚していたら?

 とそんな事を想像して、ありはしない未来に少し焦がれた。

 

 そしてなっつんと一緒に暮らす想像をしてみた。

 そうしたら、まるで、恋人みたいだった。

 なんて幸せな時を過ごせるだろう……

 私がずっと、欲しかった、幸せがそこにある。


 私がなっつんとやり取りする程、私はなっつんが好きになった。

 綾香様と同じくらいにまで好きだと思えるようになってきた時、私は……


 幸せを感じると同時に、とても恐怖するようになっていった。

 私が先か、なっつんが先か、どちらかは必ずいなくなる。

 そうなった時、お互いに依存しているこの状態が地獄になる。


 私が先に亡くなって、なっつんを苦しめたくない。

 なっつんが先にいなくなったら、私はもう生きていられる気がしない。


 長い間、その恐怖と隣り合わせで悩んだ結果。

 私から少しずつ、距離を置くようにした。


 次第に連絡は減って、だんだん間隔が長く空くようになり、1年、2年……


 逃げたのは私。でも、なっつんを想ってまた話したいと、後悔をしたりする。


 だって、大切な存在には変わりないもの。


『うまれてきてくれて、ありがとう。出逢えて嬉しい』


 貴女がくれた言葉。忘れないでいる。

 私も嬉しい。どんなに苦しくても出逢えて嬉しかった。

 あなたが今まで生きていて、無事でいてくれて、私にそんな言葉を掛けてくれて、教えてくれて。


 本当に、嬉しかった。



 いつまでも大切な、私の唯一大切な、人達。

 たとえ、話せなくても、触れ合えなくても。

 貴女達の中に私が残らないとしても。


 私は綾香様と、なっつんを、愛している。

 

 二人が幸せに、無事にいられることを願っている。

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