第3話
私が予知能力を身につけるよりも前から、私は傍にいる誰かと頭の中で話していた。
その誰か、は私だけに見える存在だった。
私はその人を私の半身だと思ってきた。
その人、名前をシオンという。
人間らしくない人だった。
裏表がなく、優しく、正しく、世の中と心を理解していた人。
常人とはかけ離れた、聖人のような人。
私を楽しませようとしたり、慰めたり、悟らせるような……
私の半身。私の憧れで、理想そのもの。
結局、私はシオンのようにはなれなかった。
私の半身、ある時から姿を見ることも、話すことも出来なくなった。
そして、神様に縋った後に現れた、もう一人の幻影。
私はその人をクロ、と呼んだ。
クロは私が辛い時、傍で少し慰めてくれた。
ただ有り様は悪魔のようだと思った。
『どうして私はこんなに、苦しめられるんだろう?』
それに対してクロが言ったのは
『それはお前が、神様だという存在から求められる存在になる為にだよ。そいつはお前や他の沢山の人間に能力や苦しみを与えて、より自分が求める存在が作り上がるのを待ってるんだ。苦しめば苦しむほど、それを乗り越えた魂は上等なものになるだろ? だからもっと苦しめば良い。本当にお前がダメになりそうな時には、少しだけ支えてやる』
そんな事を聞いた時の私の状態はといえば、苦しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます