第3話

 私が予知能力を身につけるよりも前から、私は傍にいる誰かと頭の中で話していた。

 その誰か、は私だけに見える存在だった。

 私はその人を私の半身だと思ってきた。


 その人、名前をシオンという。

 人間らしくない人だった。

 裏表がなく、優しく、正しく、世の中と心を理解していた人。

 常人とはかけ離れた、聖人のような人。

 私を楽しませようとしたり、慰めたり、悟らせるような……


 私の半身。私の憧れで、理想そのもの。

 結局、私はシオンのようにはなれなかった。

 私の半身、ある時から姿を見ることも、話すことも出来なくなった。


 そして、神様に縋った後に現れた、もう一人の幻影。

 私はその人をクロ、と呼んだ。

 クロは私が辛い時、傍で少し慰めてくれた。

 ただ有り様は悪魔のようだと思った。

 

『どうして私はこんなに、苦しめられるんだろう?』


 それに対してクロが言ったのは


『それはお前が、神様だという存在から求められる存在になる為にだよ。そいつはお前や他の沢山の人間に能力や苦しみを与えて、より自分が求める存在が作り上がるのを待ってるんだ。苦しめば苦しむほど、それを乗り越えた魂は上等なものになるだろ? だからもっと苦しめば良い。本当にお前がダメになりそうな時には、少しだけ支えてやる』


 そんな事を聞いた時の私の状態はといえば、苦しかった。

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