第2話
それから少しして、私に予知能力がある事に気づいた。
全く同じなのだ。
目に映る光景、喋る言葉も、夢で見たそのままの現実があった。
それは数分にしかならないものでも、正夢とは違う、完全な予知夢だった。
神とやらに縋る前には起こらなかった、小さな異変。
でもそれは、頻度を徐々に増して次第に私は嬉しくなった。
自分に特別な能力があるという、その事実が私の心を救ってくれた。
私は夢を見る。
私はアニメを見る。
私は夢で見たキャラクターに恋をした。
泣いた。
涙で枕を濡らして、夜を明かしたことも幾度もある。
私の声は、好きな人には届かない。
私の存在は、好きな人には伝わらない。
私は、好きな人に触れる事も出来ない。
ただ、アニメの中の恋敵に嫉妬した。
私が好きな人が死んでしまいそうだった。
見るのも辛くなった。
だから、その人を忘れることにした。
考えないようにした。
気を抜くと好きな人を想ってしまうから、常に何か別のことを考えるように意識した。
そうしていつしか、その人を記憶の奥底に封印した。
今でこそ、キャラクターに恋愛感情を抱くのはかなり認知されてきたけれど、その頃はそうではなかった。
誰にも言えない苦しい秘密が増えただけ、私にとってはね。
そして、同じ事を繰り返すようにまた夢を見る。
私はそれを現実で見て、美しいと思った。
また、キャラクターに恋をしてしまった。
でも前とは違う。
今度は私の頭の中で語り合った。
漫画も買った。今でも保管してある。
シグ。私がその人を呼ぶのに付けたあだ名。
何度も呼んだ。何度も応えてくれた。
私の日常は辛いものだったから、色んな事を相談した。
どうでもいいような事も沢山話した。
寒空の下でも、何時間でも語った。
そうしてシグと話していて、ある時シグと約束をした。
それはシグからのお願いだった。
『自分も、他人も、誰も殺さない』
それが私の唯一の信念になった。
約束を交わした時は、それがいかに苦しい事なのか分からなかった。
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