自分のことと恋と遺書

朝霞 氷炎

第1話

 私にとって一番古い記憶は喋れない幼少期だ。私には両親がいて、姉たちがいて、祖父、祖母がいる。

 だけど、語りかけてくる言葉の意味ははっきりと分かるのに、その時の私は喋る事が出来なかった。

 頭の中では言葉は喋れる、話せる。ただ、口や舌を上手く動かせずに言葉にならなくて、もどかしかったのを覚えている。

 そんな私が、自我というものに芽生えた時から持っていたものがある。


『人間はクズだ。人間はろくでもない。人間は自分の為に誰かを何かを利用する。表面上では良い人ぶっても、人間の本性は悪。この世に良い人間などいない』


 何故かな、私はこの世の人を知ることもなく、そう思っていた。魂があるなら、それに生まれる前の記憶、思想がインプットされているのだと思う。

 生まれるよりも前の私は、人を憎んで、嫌悪していたのだろう。


 そんな私は幼少期から人とは馴れ合えず、距離をとっていた。

 当然、友達など出来なかったし、人に好意も持てなかった。

 小学生にもなれば、まわりの子供は私を異端児扱いだ。

 身体的特徴も相まって、いじめが発生するのはすぐだった。

 本当に人間ってクズだなぁ、と思ったものよ。


 学校に居るのも辛かったけれど、家に居るのも辛かった。

 多少の娯楽がある分、ストレスも和らぐし学校よりはまだ我慢出来た。

 それでも、3年位で我慢が出来なくなっていたんだと思う。


『神様がいるなら、私を助けてよ!』


 私は神様なんて、都合の良い存在はいないんだと思ってた。

 そんなものは人間が勝手に作り出した偶像だと、思ってた。

 そんないやしない存在に、夜空を見上げて、喧嘩ごしに縋ってしまうくらいに私は追い込まれていたんだ。

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