5 誰もいない駅のホーム
誰もいない駅のホーム
巴が電車から降りると、そこは誰もいない駅のホームの上だった。
小さな駅。
無人の駅。
「本当に誰もいないんだ」巴は言う。
夕焼けに照らされている小さな無人の駅は、ホームと、屋根と、ベンチがあるだけのすごく小さな駅だった。
周囲の風景は、海。
あるいは、永遠の空。
そんな幻想的な風景が、巴の前には広がっている。
世界には、なにもない。
誰もいない。
本当に、なにもないし、誰もいない。
……これが私の望んだ世界の風景。
巴は思う。
「だから、無人駅だって言ったでしょ?」巴と一緒に停車した電車から降りてきた夢が巴に言う。
巴は振り返って、夢を見る。
……巴は泣いている。
その綺麗な顔から、透明な涙を鷹羽巴は流していた。
「……泣いているの? 巴ちゃん」夢が言う。
「え? あれ?」
夢の言葉を聞いて、ようやく巴は自分が泣いている、と言う事実に気がついた。
慌てて巴はハンカチを探すけど、巴のポケットのどこにも、涙を拭くためのハンカチは入ってはいなかった。
「はい。巴ちゃん」
そう言って、夢が真っ白なハンカチを巴に差し出してくれる。
「ありがとう」
巴はその真っ白なハンカチを受け取って、自分の涙を拭いた。そのときに気がついたのだけど、夢の真っ白なハンカチには、……金色の蝶の刺繍がしてあった。
……ちょうちょ。とその金の蝶の刺繍を見て、巴は思った。
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