6 天国行きの切符
天国行きの切符
鷹羽巴と白鳥夢は無人駅のベンチの上に座って、少し間、(巴の涙がおさまるまで)ぼんやりと夕焼けに染まる世界の風景を見ていた。
その間、なぜか電車は発車することはなく、巴と夢が再び電車に乗るのを、ずっと、駅の前に止まって待ってくれていた。
「切符持っている? 巴ちゃん」夢が言った。
「切符?」
「うん。『天国行きの切符』」夢は言った。
巴は夢にそう言われて、自分のスカートのポケットを探ってみた。すると確かにそこには小さな一枚の切符が入っていた。(さっき、ハンカチを探したときは、見つからなかったのに、今探してみると確かにそこには、小さな切符が一枚入っていた)
取り出してみると、そこには『天国行き』の文字が、確かに夢の言う通りに書いてあった。
「おめでとう」
巴が夢の顔を見ると、音が出ないように小さく拍手をしながら、にっこりと笑って夢が言った。
「これって、どういうこと?」
巴が言う。
「そのままの意味だよ。その『天国行きの切符を持っている人は天国にいくことができるの』」
夢は言った。
「夢は、その切符。持ってないの?」
「うん。私は切符。なくしちゃった」
夢は言う。
「じゃあ、夢は電車に乗ってどこに行くの?」巴は言った。
「どこにもいかない。ずっと電車に乗っているの」夢は言った。
「ずっと?」
「うん。ずっと、ずっとだよ」夢は言う。
その夢の言葉を聞いて、巴は夢に、「私のこの天国行きの切符。夢にあげようか?」と提案をした。
巴は夢が喜んでくれるかな? と思ってそんな提案をしたのだけど、夢は巴の提案を「いらない」と言って断った。(それが意外で、そしてちょっと残念だった。……白い羽根はあんなに欲しがってたのに)
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