理科担川田
ブーム? とはすぐに下火になるもので、生徒達によるママ呼ばわりはすぐ落ち着いた。
ママ呼ばわりの張本人である俺の方には何もなく、川田からなにか言われることもなく。むしろなにもないことが後ろめたくすら感じてしまう。
そして今日も川田の授業が始まった。
「かわたんセンセ〜っ! ここ分かんな〜いっ」
女子が川田を呼ぶ。
「かわたんじゃない、川田だ」
「だって〜、かわたんが自分でかわたんって自己紹介してたし〜」
たしかあのコは山口さんという名前だった気がする。まだクラスメイトすら覚えきれていないというのに川田に新たな称号が生まれていた。
「かわたんとは言ってない。理科担当の川田を、理科担川田と噛んだんだ」
そう、川田は初回授業の自己紹介で盛大に噛んでいた。それも真顔で。そりゃみんなだって笑うだろ。俺? もちろん笑ったさ。
「理科担川田! 理科たん川田っ! かわたんっ!」
「理科はどこに言った」
「狩りに?」
「……なるほど、たんかわでかわたんで、りかはかりということか」
「かしこいでしょ」
山口さんは、もう川田と打ち解けているようだ。にかっと笑い、まわりの女子たちもそれにつられて笑っている。
「そのかしこさでこの問題を解いてもらおうか」
「え〜っ!」
今日も授業が始まる。
それは近いうちに、生徒達のなかで全教科のうち1番人気になった教科の
助けて川田先生っ! 葦ノ原 斎巴 @ashinohara-itsuki
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