いじられる川田

あの場には見張りの先生達と、俺だけしかいなかった。

いや、もしかすると目の前のソレ(初日から遅刻という称号獲得)に必至すぎて見えていなかっただけかもしれない。

「ママー!! 野球しようぜぇ!!」

「ママじゃない、川田だ」

入学から一週間、川田はママになっていた。

俺も何を言っているのか分からない。

だが、目の前で繰り広げられているソレ(川田がママになっている)は、おそらく俺のせいだ。

「野球しようぜ‼」

「お前、話聞いてるか? まぁいい、野球か。放課後だな?」

「違うよママ! いま! ここで! ホウキがバットで、このクシャって丸めた紙くずを打つんだよ!」

「ママじゃない、川田だ。人通りがあるからここでは駄目だ」

「えー! 外まで行ってたら時間なくなるじゃん! じゃあキャッチボールな! そら、受け取れ川田!」

クシャって丸められた紙(ボール)が放り投げられる。

なんなく受け取った川田、なにか違和感を覚えたのか、くしゃった紙を広げた。

「・・・28点」

「やべ、逃げろ、タッチアウトになるぞ!」

走り出す生徒、追う川田、廊下を曲がったところで見えなくなった。


・・・どうしたらいい?

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