寂しい男
家に帰ると男は早速、ぬく美に火をつけた。灯油臭いぬく美は瞬く間に燃え上がる。ぬく美がこんなに役に立つやつだとは思っていなかった。男は昨日の鍋の残りをぬく美の上に器用に乗せ、手を洗い、うがいをした。
洗面所から戻ってくると、ぬく美の炎で部屋が温まっていた。今夜は冷える。久しぶりに元子を出して使ってやろう。男はにやりと笑った。
男は取り皿を用意し、前日の鍋をつついた。
「うまいよ、ぬく美。ありがとう」
一軒家に住む男は、かつて妻と子供と暮らしていた。だが今は一人暮らしのようだ。
鍋を食べ終えると体格のいい男は少し汗ばんでいた。「そろそろ涼子を働かせる時期も近いな」男はそう独りごちた。
皿を洗い、風呂の前に布団を敷く。そして元子を押し入れから引きずり出し、布団の中に強引に入れた。
風呂を終えた男は晩酌のあと、ぬく美の炎を消し、元子によって温められた布団の中で幸せな眠りについた。
====================
ぬく美:灯油ストーブ
元子:電子湯たんぽ
涼子:クーラー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます