寂しい男

 家に帰ると男は早速、ぬく美に火をつけた。灯油臭いぬく美は瞬く間に燃え上がる。ぬく美がこんなに役に立つやつだとは思っていなかった。男は昨日の鍋の残りをぬく美の上に器用に乗せ、手を洗い、うがいをした。


 洗面所から戻ってくると、ぬく美の炎で部屋が温まっていた。今夜は冷える。久しぶりに元子を出して使ってやろう。男はにやりと笑った。


 男は取り皿を用意し、前日の鍋をつついた。

 「うまいよ、ぬく美。ありがとう」


 一軒家に住む男は、かつて妻と子供と暮らしていた。だが今は一人暮らしのようだ。


 鍋を食べ終えると体格のいい男は少し汗ばんでいた。「そろそろ涼子を働かせる時期も近いな」男はそう独りごちた。


 皿を洗い、風呂の前に布団を敷く。そして元子を押し入れから引きずり出し、布団の中に強引に入れた。


 風呂を終えた男は晩酌のあと、ぬく美の炎を消し、元子によって温められた布団の中で幸せな眠りについた。


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ぬく美:灯油ストーブ

元子:電子湯たんぽ

涼子:クーラー

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