人間の種類〜文芸部の事件から(1)

今現在、このエッセイの流れは、主に「書く」方の個人史なわけだけど、その中で本筋中の本筋、「大学の文芸部」にまで行って小説を1本も完成させなかったのは、ある意味、事件だった。

いや、本当の意味で、事件に巻き込まれたと言える。


もったいつけるわけじゃなくて、就職の話に行く前に、それについてぜひとも記しておきたいので、少し寄り道をさせてください。


この文芸部の事件と、もう一つサークルのような活動を通して、私は今でも実感を持って言い切れる、ある真理を学んだのだ。


文芸部では、私が一年生で入った時は四年生を含めた先輩が何人かいたように思うけど、私が友だちとともに二年生になると、何人かが卒業して行った。結果、私たち二人とその上に三年生が二人いて、三年か四年か思い出せない人がもう一人(五番目の人)ということに。私たちだけが女子であとは男子という、総勢五人となった。

誰かが部長をやっていたのかどうか覚えてないけど、とにかく構成人員はとてもさびしい状況になった。新入生は入って来なかった。


そのせいか活動内容は、喫茶店で週一の読書会をやって、たま〜に書いたものを見せ合って批評し合うみたいな、ゆるいものになった。たいていは私たちと三年生二人の計四人しか参加してなかった。

読書会は、持ち回りで発表者が一人いて、その人が課題の本を決めて好きなテーマで何か発表する、ほかの人たちは課題の本を読んでくるというルールだった。これが後に何か役に立ったかと言われると、全然そうは思えない(笑)。何となく、アリバイ的に活動してた感が拭えない。


そして、あれがいつごろだったのか、夏休み前かあとか思い出せないけど、そろそろ部誌を発行しようということで部員五人全員が集まって、編集長(部長とは別)を決めることになった。

先ほど、五人目の人が何年生か定かじゃないと書いたけど、この人はあまりちゃんとは活動してなかった。でも、顔を見せる時は、二十歳そこそこのウブな女子たる私から見ると「ほぅ」っとなってしまうようなすばらしい弁舌を披露し、なんなら私なんか理解できないくらいの壮大な理想論をぶちかますような人だった。しかも、全然嫌みじゃなくて、物腰はあくまでもソフト、声もやさしく、親しみを持てるような感じの。

対して、三年生の二人はどちらかと言うとシニカルで、こっちが下手なことを言うとバカにされそうな感じ。断然、人々の信望を集めるのは五番目の人の方だと思える。


この日も五番目さんは、部誌を発行するにあたっての、何かすばらしい持論を展開し、三年生の二人も、それなら編集長をやって、だったか、やってください、だったか、そんな流れになった。私たちなぞ反対するアレもなく、そのまま決定した。


その後は、読書会というよりは執筆する方にシフトして、それほど定期的に集まらなかった気がするけど、時々集まるたびに、部誌発行のスケジュールが遅れてるって話だった。

そしてほどなく、遅れてるのではなくて、何も進んでないことがわかった。


長いのでいったん切ります。

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