古本派の妄想。

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個人史の続きの前に、もう一つ、わりと最近、別のところに書いたものを加筆修正して転載します。

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夫のM夫くんと私の間には、主義や意見や考え方や習慣や好みや…いろいろ違うところがある。

でも、わたくし的には「似ていたり近かったりする」ところの方がたくさんあると思っていて、時々違うところを発見すると、むしろそれがおもしろいと感じたりするくらいだ。


そんな数少ない違いの中に、「古本」への考え方がある。


私は基本的にチマチマと節約するのが好きなので(そのくせ下らない浪費もしてるらしい)、本は文庫化ののち、さらに古本屋に出て来て初めて買うことが多い。というか、なるべくそうする主義だ。

これに異を唱える人はかつて私の周りにはいなかったので、M夫くんは初めて「異」を突きつけて来た人なのだけど、曰く、「それじゃあ、作家の人に正当に対価が入らない」というような主張だった。


言われてみればそうなんだけど、でも、確か今はレンタルCDも古本も、それはそれで何らかのものが本人に入るようになったんだよね?

と、私は思っているので(違ってたらすみません)、資源保護の観点からもレンタルや中古品市場を一概に否定しなくても…と言っている。


それに、古本には、昔からロマンを感じる。

図書館とかの本もそうだけど、同じこの本を前に読んだ、あるいは所有していた人がいて、その痕跡が感じられる場合があるよね。

図書館の本は折り目や傍線はつけちゃダメだけど、それでもついてることがあるし、古本に至っては、買い取り価格に影響したり、買い取れないと言われてしまう原因にもなるものだけど、そういう「前の人」のつけた何かが事件やロマンスなどの物語のカギになる、みたいなストーリーの小説もあって、そういうのはすごく楽しい。

じゃなくても、あ、この部分が気に入った人がいるのか、とか、ここで泣いたのか?という涙の跡だったり(あるいは飲み物をこぼしただけかもしれないが)、そういうのを感じたりするのはちょっとおもしろい。もちろん、逆に邪魔くさい時もあるんだけど。


さておき、今、私は「村上ラヂオ2」を読み終わったところだ。

もちろん古本だったのだけど、その116ページ、「新聞ってなに?」とタイトルされたところに、一枚のレシートが挟まっていた。

それがなんと、ここから遥か離れたジュンク堂神戸住吉店のもので、この本がいったいどういう経緯でこんなところの古本屋までやって来たのか、考えるだけでワクワクしてしまった(単にチェーン内での在庫の調整かもしれないが)。


日付は、2014年の1月5日となっている。正月休み最後の日曜日とか??

そこには2冊の本の購入が記されていて、私は1冊がこの本でもう1冊も村上春樹の別の本だろうと推察した。

きっと、かなりの春樹ファンだね!と。


読み終わったら、商品コードをネットで調べてみようと思って、とりあえずはそのまま読み進めた。


そして、読み終わって満を持して調べたのだけど、結果は…


『左利きの人々 渡瀬けん 著 (9784046025586)』


だそうでした。


この人(前持ち主)、左利きなんか??


しかも、特に春樹ファンってわけでもないのかもしらん。。。


となると、116ページに挟んだレシートがしおり代わりだったとして、そこに挟んだまま古本屋に売ったってことは、おもしろくなくてそれ以上は読まなかったっちゅうことか!?(これはますますファン違ゃうわ)


神戸だけに、ニセ関西弁で妄想が膨らむ。


しかも、さらにナゾなのは、2冊の印字、どっちもコードがまったく同じ数字で、値段が530円と515円ってことだ。


同じ本を2冊買うのも、同じ本なのに値段が違うのも、ナゾ過ぎる。。。


古本で、ロマンよりもナゾが膨らんでしまった。


しかし、その人に伝えたい。

私は古本屋で、特に買う予定でもなかったこの本をたまたま見つけて、買ったおかげで、恐れ多くも大好きな春樹さんのエッセイでよいリハビリができて、今こうしてまたブログを更新してます。


それもこれも、あなたがこの本を売り飛ばしてくれたおかげです。


確かに、読んでる途中でいろいろ思ったけど、粛々と読み進めると、最後にはやっぱり「さすが春樹さん」と頷きました。


そう、2014年ころに退屈しのぎに買った「この本」で退屈をしのげなかったあなたの代わりに、私が116ページ以降も読んで、5年ぶりにあなたの分の元も取ったとともに、「この本」の存在意義を、あなたが受け取った買い取り金額以上に高めたと言ってもいいでしょう。


ああ、その人がこの本をネット購入してたなら、今後、村上春樹ファンじゃないのに村上作品が「おすすめ」として画面に出て来て、うざいとか言ってたんだろうね!?


それにしても…(以下略)


…と、新品の本をプロパーで購入しても、ここまでの妄想は膨らむまい。

やはり、わたくしは古本(のロマン)に1票を投じたい。。。


※一連の妄想が一段落したところで、そのレシートはまた116ページにそっと戻しておきました。これからまた5年、いや、私がこの本を売り飛ばさない限りは永遠に、そのレシートはナゾとロマンとともに116ページに封印され続けるのだ。


※※しかし、そういえば、M夫くんは「もったいない」と言って、自分の古本は捨てずに売ったりしている。それって、買う人を想定して売ってるんだよね??矛盾してないか???(貴重な(絶版になりやすい)本なのかもしれないけど。。。)

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