第14話 群れの殲滅に、異世界へ
「全く、そんな簡単に泣くんじゃないよ」
少し困りながらも嬉しくなった蓮人はリーの頭をポンポンと軽く撫でる。それと同時に周囲の状況の確認も行う。
(周りにはゴブリンが5体とホブゴブリンが1体か。1人なら厳しいがリーがいるならなんとかなるか……)
「リー、杖が無かったら魔法の威力はどうなる?」
そんな質問に、今まで泣いていたリーも気分を切り替えてしっかりと戦闘モードに入る。
「……多少は落ちますが、ゴブリン5体程の足止めならなんとか出来ると思います」
「それだけ出来れば充分だ。俺達ならなんとかなる」
そう言ってリーに笑いかける。
「ったく、本当に昨日言ったこと分かってるんですか?」
そんなことを言いながらも蓮人が『俺たち』と言ってくれたことに、満更でもなく嬉しそうなリーである。少し頬が緩んでニヤケていた。
「最初にホブゴブリンを叩く。ホライズンのあの風属性魔法の連携できるか?」
「勿論です」
自信ありげに頷くリーにそれを見て満足気に頷く蓮人。
「じゃあ、始めるぞ!」
そう言うやいなや蓮人はホブゴブリンに向かって走り出す。その走り出すタイミングと同時にリーが風属性魔法で風を生み出し援護する。
一瞬でホブゴブリンの前に踏み込んだ蓮人は刀を一閃。ホブゴブリンは避けるどころか反応して剣で受けることすら出来ず、首を斬り落とされる。
「よし、次だ!」
そう言って残りのゴブリンに向かうときには既に、リーは水属性魔法の泡で足止めをしていた。
(やっぱ連携って凄いんだな。それに気付かず俺1人でやってたなんて言ったらそりゃあ怒るよな)
そのまま足止めされているゴブリンを、蓮人は鮮やかな太刀筋で斬り、始末する。
そのままリーの元に戻って状況確認をする。すると、リアムがホブゴブリン4体に囲まれ、さらにマリ達が援護出来る範囲からも離れており、危険な状態だった。
「リー、あっちだ。俺達は魔法で援護するぞ」
リアムの方を指差してそう言う。
「ファイアボール!」
「ウインドアロー!」
この魔法ではホブゴブリンを殺すことは出来ないが、ダメージを負わせ、リアムから注意を逸らすことに成功する。
その隙をついてリアムはホブゴブリン4体に剣を振るう。袈裟斬りにされたり、首を斬られたりと斬られ方は皆違うが、リアムの剣一振で声を上げることも出来ず絶命していくのだった。
「助かった」
リアムはそれだけ蓮人とリーに言うとまたすぐゴブリン達に斬りかかるのだった。
「ちぇっ、文句のひとつでも言ってやろうと思ってたのによ」
少しホッとしたような、照れたような顔をしながらそんなことを言う。
「蓮人さんも素直じゃないですね」
リーはそんな蓮人を見て笑うのだった。
「さあ次だ次!」
笑われて面白くない蓮人はそう話を変えてまたゴブリン達に斬り掛かるのだった。
現在、ゴブリンの群れは約半数が討伐されている。それに痺れを切らしたのか、とうとうゴブリンキングが重い腰をあげ、こちらに近づいてくる。
「さあ、皆。大将の登場だよ。道を作っておくれ!」
その一言で皆1ヶ所に集まり、魔法を使う。蓮人はファイアボール、リーとマリはウインドアロー、マーブとオースはウォーターボールを使ってゴブリンキングの前にいるゴブリン共を弾き飛ばして道を作る。
「よくやった! 他のゴブリン共は全部任せたよ!」
そう言ってギルドマスターはゴブリンキングに斬り掛かる。
ゴブリンキングは大剣を振り回すがギルドマスターには当たらない。だがその攻撃は1度でも食らうと体が真っ二つになるほどの威力でギルドマスターも近づくことが出来ず、なかなか攻撃を当てることが出来ない。
「ちっ、あのとんでもない力、厄介だね」
ギルドマスターもゴブリンキングもお互い致命的な攻撃を決めることは出来ていない。だが、一撃の攻撃はゴブリンキングの方が上のため、このままではジリ貧になることは目に見えていた。
(さあ、どうするか)
疲れのためか距離を取って避けるのが間に合わなくなり、剣で受け流して回避するようになってくる。そのとき、勢いを殺しきることが出来ず、ギルドマスターは剣を弾き飛ばされてしまう。
そのまま後方にジャンプして距離をとるが、ゴブリンキングにダメージを与える手段がなくなり、絶体絶命のピンチとなる。
「おいおい、これはかなりやばいかもね)
額から汗を流してそう呟く。
一方蓮人達は、連携を駆使しゴブリンの群れを狩り尽くすことに成功し、とうとう残りはギルドマスターの相手しているゴブリンキングのみとなる。
その瞬間、キンっと甲高い金属音が鳴る。その音の方向を向くと、ゴブリンキングの剣を受け損ねたギルドマスターの剣が宙を舞っていた。
その光景を見ていたリー達は皆うろたえる。だが、蓮人だけは違った。
「これはチャンスだ」
そう言って音を立てずに走り出す。
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