第10話 ゴブリン退治に、異世界へ

 街を出て少し経った頃から、ゴブリンが襲って来る頻度が高くなった。


「なんかゴブリン強くなってない?」


 サイクが皆に確認を取るようにそう尋ねる。


「俺もそう思っていた。これは気は抜けないかもしれないな」


 オットもそう思っていたらしく、その疑問に肯定を返す。


 (確かにその通りだ。この前までなら俺一人でも3体なんて余裕だった。だが、今じゃ3体同時じゃ一瞬で蹴りをつけることなんて出来ないかもしれない)


「ゴブリンキングがゴブリンどもの能力を引き上げてるのかもね」


 ギルドマスターが考え込みながらそう告げる。


「となると、知恵も上がって何か作戦でも立てて襲ってくる可能性も無きにしも非ずか……気を抜くなよ、いいな」


 ギルドマスターの言葉に皆が頷き、慎重に進んでいく。

 そのまま進んでいくと周りが岩で囲われている開けた場所に出てきた。その中に入り込んだ瞬間、周りからホブゴブリンが4体、ゴブリンが9体も現れた。


「まさか、ゴブリン共に待ち伏せする知能があるとはね。これはゴブリンキングとやらは中々侮れない相手みたいだね」


 ギルドマスターは剣を構えながら、皆に指示を出す。


「ホライズンが目の前のホブゴブリン一体、リアムもホブゴブリン一体だ。ウォーターパークスと蓮人達は周りの援護をしながらゴブリンを片付けろ。残りのホブゴブリン2体はあたいがやる!」


 その指示を残すと風のような速さで駆け出し、ホブゴブリン2体と交戦を始める。ハッハッハと大きな笑い声を上げながらホブゴブリンの振るう剣をいとも簡単に避けたり受け流したりしている。とんでもない身のこなしである。ギルドマスターはかなりの実力者であったようだ。


「普通のホブゴブリンよりは強いが、いいとこCランクの中程くらいだ。もういいよ」


 その瞬間、ギルドマスターの雰囲気が変わり濃密な殺気が解放される。

ホブゴブリンは本能でそれを悟り、後ずさりしてそのまま背を向けて走り逃げ出す。


「逃がすと思うかい?」


 その言葉の後にはギルドマスターの姿はホブゴブリンの前にあり、剣を振るう。一刀の元に2体は上半身と下半身を真っ二つに斬られ、剣のサビとなるのだった。





 ホライズンはサイクが剣士でマリが風属性の魔法使いのパーティーのようだ。マリが風魔法でホブゴブリンの注意を散乱させたりサイクの補助を行い、サイクが斬り掛かりながらじわりじわりとダメージを蓄積させていく。そのため、ホブゴブリンの動きがだんだんと鈍くなってくる。


「マリ、そろそろとどめ行くよ。いつものよろしく」


「はーい、頑張ってね」


 それだけ言うと、サイクとホブゴブリンの部分にだけ強風が吹きだす。その風はサイクにとって追い風となり動きがより早くなる。逆にホブゴブリンにとっては向かい風となり動きがより遅くなる。サイクはこの速さの差を利用して、一瞬でホブゴブリンの前に踏み込み剣を袈裟斬りに振り下ろす。そのままホブゴブリンは体を真っ二つに切られ絶命する。






 リアムもギルドマスターと比べると劣るがかなりの実力者であることに変わりはない。ホブゴブリンが剣を大上段に構えながら迫ってきてそのまま振り下ろすが、難なく剣で受け止め弾き返す。そのまま何合も打ち合うが、1つとしてリアムに当たる攻撃はない。

 その疲れからホブゴブリンの攻撃の手が少し緩む。リアムがそんな隙を見逃すこともなく剣をはじき返し、ホブゴブリンの体勢を崩す。その隙を利用してリアムは懐に踏み込み、剣を一閃。鮮やかな太刀筋で首が飛ぶ。





 ウォーターパークスと蓮人達は協力してゴブリン9体を相手にする。ウォーターパークスは名前にウォーターが入る通り水属性魔法の適正を全員持っているパーティーなのだが、リーダーのオットとジェフが剣士、オースとマーブが魔法使いである。それに蓮人とリーが混ざり、前衛が3人後衛も3人でゴブリンと戦うことになる。

 蓮人が無属性魔法を発動し薄く白い光を纏いながら飛び出し、ゴブリン1体に斬りかかる。


「何してるの! ウインドアロー」


 リーがそう叫び、援護するために風魔法で風の矢を作り他のゴブリンを攻撃する。そんなリーに1歩遅れて、


「「バブルショット!」」


 オースとマーブも同じように水魔法で泡を生み出してゴブリンの足止めをし、援護に回る。

 オットとジェフは魔法では足止めできなかったゴブリンに向かっていき、剣を打ち合う。

 そうしている間に蓮人は最初に飛びかかったゴブリンを一刀で斬り伏せ、魔法でダメージを受けたり足止めを食らっているゴブリンの方に向かい、当たるを幸い、刀を振り回す。


「よし、こっちは片付いたな」


 周りを見渡すと、オットとジェフも剣で斬り倒したところである。

 またギルドマスター達は既に片付けており、こちらの戦いを見ていたようだ。


 (見てんなら手伝ってくれてもいいのにな。まあ余裕だったけどな)


 そんなことを思いながら皆が集まっているところに行こうとすると、後ろからリアムが呼び止める。


「やはりお前はこの戦いに参加するな」

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