第9話 顔合わせに、異世界へ

 蓮人達がギルドマスターの部屋を出て下に降りると、7人が集まっていた。


「君が蓮人かい?」


 長身のスラッとした金髪の男と女の2人が近づいてきて、蓮人とリーに話しかける。


「そうだけど、あんたらは?」


「俺はサイクだ。こっちはマリ。2人ともCランク冒険者だよ。ホライズンってパーティーを組んでるんだ。今日はよろしく頼むね」


 サイクは人当たりの良さそうな笑顔を浮かべ蓮人に手を差し出し握手を求める。


「そうか、こちらこそよろしく」


 そう言って蓮人も手を差し出し、握手する。


「君らは僕らみたいに2人パーティーなのかい?」


 蓮人とリーは、サイクにそう尋ねられ、そういえばと顔を見合わせる。


「2人パーティーというか、そもそも組んでもなかったな。でも俺達は仲間だ」


 蓮人はそう答えると、リーは少し頬を赤らめながらめながらも嬉しそうに


「ええ、そうですね。私達は仲間ですよ。でもパーティーは組みたいな、なんて……」


 そんな返答をするのだが


 (これに、帰ってきたら、なんて言ったらまたフラグが建ちそうだな、やめとこう。)


「ああ」


 そんな素っ気ない蓮人の返事にリーはむくれ、拗ねる。

 そんなリーを放置して、


「とりあえず、俺達は他の冒険者にも挨拶してくるよ。今日はよろしく頼む」


 サイク達に別れを告げ、そのまま隣に居る4人パーティーに近づき話しかけようとするが、


「俺はCランクパーティー、ウォーターパークスのリーダーのオットだ!」


 先に自己紹介をされてしまった。かなり熱血なタイプの人らしい。それに蓮人は一歩引きながら返事をする。


「俺は蓮人でこっちがリーです。今日はよろしくお願いします」


「もっとグイグイ来いよ! 敬語なんぞいらん!」


「分かりました」


 やっぱり一歩引てしまう蓮人であった。

 逃げるように最後の1人、部屋の隅で壁にもたれかかっている冒険者に挨拶をしに行く。


「俺は蓮人、こっちはリーだ。今日はよろしく頼む」


 蓮人はそう言ってお辞儀をするが、相手は目を合わせることもなくぶっきらぼうに


「お前たち2人は今回は手を出すな。死ぬぞ」


 自分の名前を名乗るどころか、そんな言葉を告げるだけだった。


「忠告ありがとよ。だが依頼主を守るのも仕事なんでな」


 そう言って離れると、またサイクが話しかけてくる。


「あいつはBランク冒険者のリアムだ。見ての通り性格は難ありだが、確かに剣の腕はこの町でもトップクラスだ」


 (あいつがね、確かにスキはないが、そんなに強いとは思えないな。何か特殊なスキルでもあるのか?)


 そんなことを考えながら観察していると、ギルドマスターが上の階段から降りてくる。


「おまえらこっち来い」


 その声に蓮人達、今回集められた冒険者はギルドマスターの前に集まる。それを見たギルドマスターは話し始める。


「おいお前ら、もう何の為にここに集まってもらったかは知ってるな? だから詳しい話は省くがとりあえずこのままじゃこの街がヤバいってことだ」


 そう言ってギルドマスターはそれぞれの顔を見渡す。全員と目を合わせ終わったあと


「全員いい目してやがるぜ」


 そう呟きながらそっと笑い、その次の瞬間にはまた元の真剣な顔に戻る


「全員で生きて帰るのは決定事項だ! いいな!」


 ギルドマスターは高らかにそう宣言する。


「当たり前だ何言ってんだ!」


「帰ってきたら全員にご飯でも奢ってくださいね」


 さも当然のように、オットやサイクからそんな声が上がる。


「いいだろう、期待して待ちやがれ!」


 歓声が討伐隊以外からも上がる。そんな野次馬達を見てニッと笑い、


「意地汚ねえ奴らだ。だが今日はおそらく野営で明日本番だから、首を長くして待ってるんだな」


 こちらに向き直り、野営の準備をしておらず焦っている蓮人とリーに向かって


「お前らの野営の準備はこっちで用意してやってるからレノから受け取って持ってけよ」


「「ありがとうございます」」


 蓮人とリーはお礼をを言ってレノから受け取る。その際レノから目で頑張れ絶対帰ってこいという意思を伝えられる。2人はそれにしっかりと頷き返す。


「じゃあ出発だ! 気抜くんじゃねえぞ!」


「「「おう!」」」


 ギルドマスターの大声に負けじと声を張って返事をし、出発する。

 頑張れよと道行く冒険者達から声を掛けられながら、街を後にして目的地を目指すのだった。

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