第7話 ランクアップに、異世界へ

 「本当に御二人でホブゴブリンを退治されたんですか?」


「本当だって。討伐証明部位も渡しただろ?」


「確かに……でも冒険者になった次の日にホブゴブリンを倒すなんて。ホブゴブリンってDランクモンスターで昨日今日冒険者になった人が倒せるとは思えないんですが……」


 買い取りカウンターの職員はそんな風に話している。このやり取りが何度も続いており、ホブゴブリン達との闘いで疲れている蓮人とリーはうんざりし始めていた。


「こいつらの言うことは本当だろうよ。今朝、魔法適性検査を受けてとんでもない結果を残した男と女の2人組がいるって街中で噂になってた。恐らくこいつらがそうなんだろうよ。そんなやつらなら、これくらいやってもおかしくはないさ」


 蓮人とリーが後ろ向くと、ギルドマスターが不敵な笑みを浮かべながら腕を組んで立っていた。


「あんたらやるじゃないか、見直したよ。どうやって倒したんだい?」


「ホブゴブリン率いるゴブリンの群れが相手だったんで、リーに風魔法でホブゴブリンまでの道を切り拓いて貰って、俺が無属性魔法の身体強化で斬った感じですね」


「なかなかいい連携じゃないか」


「確かに自分たちでもうまくいったとは思います」


「これなら大丈夫そうだね。あたいの権限であんたらをDランクに昇格するよ」


「はあ、ありがとうございます」


 あまりすごさが分からず、気の抜けた返事を返す蓮人。

 そんな蓮人に思うことがあったのか


「あなた、これがどれだけすごいことか分かっているのですか! 冒険者になって2日でランクアップなんてギルド創設以来初ですよ! Eランクのまま冒険者をやめていく人も少なくないというのに!」


 と興奮しながら職員は言う。


「じゃ、これからも頑張りなよ」


 そう言ってギルドマスターは出ていくのだった。


「なんだかあまりスッキリしませんが、まあいいとします。とにかく、これからは私レノがあなた達の担当となります。よろしくお願いしますね」


「担当?」


 蓮人とリーの頭の上に?が浮かんでいる。


「はい、初めてランクアップした時に買取をした人がそのまま担当していく決まりになっているのです。これから依頼を受けたり素材などの売却は私にお願いしますね。」


「分かりました。これからよろしくお願いします」


 蓮人とリーは礼儀正しくお辞儀をする。


「あの……順番がおかしいんですが、御二人のお名前を聞いてもいいですか?」


「俺は高橋蓮人です」


「私はリーといいます」


 蓮人とリーはランクアップの実感が湧かないまま買取をしてもらうのだった。








 「では、ランクアップを祝して……」


「「かんぱーい」」


 今日も2人は同じお店で打ち上げをするのだった。飲み物の中身は勿論オレンジジュースなのだが。


「なんかトントン拍子で進みすぎて何か怖いくらいだな」


 蓮人はリーに話しかける。


「そうですね、私なんて昨日Eランクのゴブリンに殺されかけていたんですよ。それが今やDランクなんて何がなんだかよく分からないです」


「この調子だと、明日も何か大きいことがあるかもな。まあそんなことあるわけないか」


 はっはっはと笑う蓮人。


 (あれ、これってフラグ建った? そんなわけないか)


 そんな話をしながら、今日も2人で仲良く飲んで食べるのだった。










 たらふく食べて飲んだ次の日、2人は朝早くからギルドの依頼ボードの前に立っていた。


「今日は折角Dランクになったことですし、ゴブリン以外の討伐依頼も受けてみましょう」


 蓮人とリーは何の依頼を受けるか決めているのだった。


「今日はオークなんてどうだ? 掲示板の張り紙にはDランクモンスターで肉が結構高く売れるって書いてあるし」


「いいですね。この距離なら1日で行って帰って来ることも出来そうですし。じゃあこれを受けることにしましょう」


 レノに依頼を受けに行き


「いってらっしゃい! ちゃんと帰ってきてくださいね」


 その言葉を受けて2人は出発する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る