第4話 仲間作りに、異世界へ
「かんぱーい!」
蓮人とリーは大きなジョッキをカーンと勢いよく合わせ、そのままゴクゴクとジョッキの半分ほどまで飲み干す。
「クゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」
(あー、仕事終わりの一杯ってのはこんなにもうまいんだな。世の中の親父が仕事終わりに居酒屋で飲むっていう気持ちがよく分かるわ)
こんなことを言っているが中身はしっかりアルフェウムのオレンジジュースだったのであった。
「こういうのは雰囲気が大事なんだよ!」
「誰にツッコミしているのですか? 私は何も話していないですけれど」
不思議そうな顔をしながら尋ねてくるリー。
「ああ、なんでもないよ。どこかでいじられているような気がしただけだ。そんなことよりも、この世界のことについて色々教えて貰えないかな?」
「任せてください!」
リーは胸をドンっと叩いて言った。そのまま咳き込んでいるのでなんとも不安なところだが。
「じゃあさっそくなんだけど、この世界ってどんなところなの?」
「この世界はアルフェウムと言い、4つの国に分かれています。ここはヴェスナ王国のガサラという街で、商業が盛んですね。掘り出し物の武器や防具もあるので明日にでも市場に繰り出すのも良いかも知れません」
(なるほど、今回はリーの剣を借りられたけど、素手じゃ危険だもんな。明日にでも買いに行くか)
「じゃあどんな武器があるんだ?」
蓮人は明日の買い物の参考にと聞いておく。
「近接系の武器であれば、剣や刀、槍などがあります。遠距離系であれば弓に杖などですかね」
そこで蓮人の目がキラリと輝きリーに問いかける
「遠距離系に杖があるということは……。 もしかしてこの世界には魔法というものがあるのかい?」
期待を込めながらリーに問いかける。
「ええ、もちろんありますよ。蓮人さんの世界には無かったんですか?」
(きたあああああああああああ、魔法だああああああああ、男ならば1度は憧れる魔法が使える世界だ……)
蓮人が一人で感極まっていると
「蓮人さん? 大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だよ。俺の元の世界には魔法がなくて興奮してただけだ」
「そうなんですね。でも魔法には適正というものがありまして、誰でも使えるものではありませんよ?」
(なん……だと……。いや、だが諦めるな。俺は女神様から何かは分らんが能力を授かったんだ、適正の1つや2つあるはずだ……)
リーはクスクスと笑いながら
「明日は魔法の適正についても検査しに行きましょうか」
と言った。蓮人はそれに対して大きく頷く。
「あ、でも早く元の世界に戻らなくて大丈夫なのですか?」
リーは少し残念そうな雰囲気を出しながらも蓮人に尋ねる。
(そういえば俺リーに帰れなくなったことは説明してなかったな……)
ふぅっと一息つき話し出す。
「あー、そのことなんだけど。俺実は元の世界には帰れないんだよ」
「え…………?」
リーは蓮人が何を言っているか分からないといったように固まり、じっとこちらを見つめる。
「でも私を助けるためにこの世界に転移させてもらったって……」
「それは特例なんだよ。俺が元の世界に戻れない代わりに認めてもらった感じなんだよ」
それを聞いたリーは、じわじわと目に涙をため、終いには声を上げて泣き出してしまった。
「すいません、すいません……私が不甲斐なかったばっかりに蓮人さんを巻き込んでしまって。本当にすいません……」
「いいよ、気にするなって。俺は特に元の世界に未練なんてものは無かったんだし、これで良かったんだよ。魔法がある世界ってのもかなり楽しみだしな」
蓮人は慌てて一生懸命慰めるが、リーが泣き止む気配はない。
(うーん、どうしたらいいんだ? でも声かけてやんないと。よし!)
気合を入れて
「なあ、リー聞いてくれ」
リーが少しだけ顔を上げ、聞く体制に入る。それをしっかり見た上で蓮人は話出す。
「俺は元の世界では高校生で毎日学校行ってバイト行っての繰り返しで平凡でつまんない日々を過ごしてるだけだったんだ。でも、このアルフェウムに来て、俺今めちゃくちゃ楽しみなんだよ。見る物全てが初めてで、全てにワクワクするんだよ。こんな気持ち今まで生きてきて初めてなんだ。だから俺は全く後悔してないよ。むしろリーには感謝してるんだ。この世界に連れてきてくれて、俺に出会ってくれてありがとうって。だから、泣かないでおくれ」
それを聞いたリーは机に伏せてより泣き出した。蓮人は苦笑しながらも頭を撫でながら、泣き止むのを待つのであった。
「……もう大丈夫です」
鼻声で目が真っ赤に充血しているがどこかすっきりとした顔でリーは言う。
「私、決めました」
決意した顔でリーは蓮人に向き合い、言う。
「私はこれからずっと蓮人さんと一緒に冒険して、蓮人さんの見たことのないものを一緒に見るのです。だから…………私と仲間になってください」
(……これはやられたな、こんなの絶対断れないよ)
「……ああ、よろしくな、リー」
2人は笑みを浮かべながら固く握手をするのだった。
この話をしていたのはギルドに隣接している酒場だったので、色々な人に聞かれており、次の日からはこの話で他の冒険者にいじられることになるのはまた後の話。
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