第4章 砕け散る世界を前に

温かな陽だまりの中

 心地よい夢を見た。夏が始まる前、梅雨が終わったばかりのような温かな日差しが注がれていた。


 ベンチに二人。風で揺れたブロンドの髪に透き通った瞳が隠される。彼はただ隣に座っているだけ。どこを見ているかもわからないが、その表情は楽しそうだ。

 言葉を交わすことはなかった。ただ座って時間が過ぎるのを待つだけ。温かくて楽しい時間。それが過ぎ去るのは早い。


 目を覚ましたとき、涙が頬を伝っていた。幸せだった。夢の中の光景はかつての幸せな日常そのもの。今の僕の手から、零れてしまった何か。

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