夜勤の醍醐味
午前六時。世の中の善良なる人々が真面目な一日の始まりを迎える時間。
遮光カーテンの隙間から差し込む陽の光を尻目に、缶ビールの栓を開け空っぽの胃に流し込む。
最も酒を美味しく飲める時間は、朝だ。
何もこれから真面目に働こうという人達に対する優越感に因って酒を美味く感じているわけではない。
むしろ僅かな背徳感こそが酒を美味くするのである。
そもそも前提として仕事の疲れと仕事という苦業からの開放がある。これ自体は昼勤だろうと夜勤だろうと変わりはない。どちらにせよ酒は仕事の憂さを癒やしてくれる。
夜勤と言っても昼勤と比べて大して儲かるわけではない。会社や雇用形態に因っては月に四万プラスになると聞いた事はあるが、私はそこまでの恩恵を受けた事はない。精々月に二万のプラスになるだけだ。
一週間おきに昼型から夜型へ、そして夜型から昼型の生活へ、生活リズムを強引に調節する苦悩は確かにある。季節によっては日中の快眠が望めないこともある。寒暖の差が激しい時など暑さで目が醒めるのは珍しい事ではない。
快眠出来ぬままの出勤は苦痛でしか無い。それを一週間。そんな生活リズムに慣れた頃、再び生活リズムを逆転させなくてはならない。
たかが数万のプラスで済むような苦しみではないのだ。
そも夜に働くというのは人間の生物としての本能に反している。
人は夜行性ではない。
朝、日の出と共に目覚め、陽の光を浴びて働き、日が落ちれば眠る。
それが人としてのあるべき姿だ。
それを歪めたのは人類が「灯り」という発明を手にしたからである。
灯りは技術の発展により蛍光灯となりついにはLED照明という少ない電力で最高の明るさを持つ利器に至る。灯りによって闇は拓かれ本来人が目にする事の出来ない物を観測する事が可能になった。
つまり灯りによって夜に働くことが可能になったのである。
夜に働く事情はそれぞれだ。人の命を救うため、世の中の人々に快適な生活を提供するため、単に会社の利益効率のためという事もある。
文明が発達したおかげで、或いはそのせいで、人は夜に働く事が出来るようになり、知らなくて良い苦悩を知る事になったのである。
さて、人間の常識として「朝から酒を飲んではならない」という下らないものがある。要は怠惰に生きてはならぬという戒めだ。
怠惰なものか。様々な苦悩に耐え夜に働き疲れて帰ってきたのだ。酒ぐらい飲ませてくれ。
ああ、明るい光を浴びながら飲む酒のなんと美味いことか。
全ての夜勤労働者に、乾杯!
※夜勤から帰ってきて『金麦 糖質75%オフ』を飲みながら酔って何も考えすに書いた物ですので読み流して下さい。
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