第15話🌸高田の挑発

 ひかりは高田に肩を抱かれそのままホテルの部屋へと入ってしまった。頭の中で森下の顔は相変わらずあるのだが、強引な高田のやり方に抵抗出来る状態ではなかった。部屋に入ると高田はすぐにひかりをベッドに寝かせた。ひかりはぼんやりと天井を眺めていた。その横に高田が来ても何も出来ずにいた。

「レイカ。いいね。過去の男なんてすぐに忘れられるから。」

そう言うと高田はゆっくりとひかりにキスをした。そして、ひかりの身体をゆっくりと愛撫していった。ひかりを生まれたての姿にするのに、そう時間は掛からなかった。無抵抗のひかりと高田はひとつになった。その瞬間、ひかりはあまりの痛みに我を取り戻した。慌ててひかりの中に入っている高田を抜いてもらおうと懇願した。

「高田さんッ!やめてください!何するんですか?」

ひかりは必死で高田から逃げ出そうとしたが、動けば動くほど高田は嬉しそうな顔でひかりを抱いた。ひかりの身体の中の高田が奥へ奥へと突き刺さっていく。

「いやーーーーーー!!!」

ひかりの悲鳴に高田は更に奥へと入って来た。そして、時にはひかりの叫びを遮るようにキスをし、まるでレイプを楽しむ変質者のような状態になっていた。ひかりは必死に抵抗するが、高田の方が何倍も上手だった。

「レイカ。いいよ、すごく気持ちいいよ。俺はこの日を待っていたんだ。ずっとずっとね・・・幸せだよ。レイカ。」

ひかりの拒絶などまるで問題ではないかのように、高田は自分の世界に浸っていた。そしてしばらくすると、

「レイカの中で泳ぎたがっているんだ!逝くよ!」

と、言うと更に高田は激しく動き始めた。それだけは阻止しなくてはいけないとひかりは直感で思った。そして更に必死で逃げようと身体を前後左右にひねってみた。

「高田さん!ホントにやめてください!何を考えているんですか?そんなことしたら・・・」

ひかりは泣きながら必死で高田を止めようとした。だが、ひかりの拒否の行動が逆に裏目に出たのか、高田は満足そうな顔でひかりの身体から自分を抜き出した。そして、ひかりに

「愛してるよ、レイカ・・・」

と言うと今度はキスをしてきた。ひかりの拒否行動はすべてお見通しなのか、どんなに拒否をしてもすべて高田に阻止されてしまうのだった。

 ひかりはすぐにシャワーを浴びにベッドから降りた。そして必死に洗い流し今起きた事を夢だと思おうと心に決めた。何度も何度も身体を洗い、すべてを洗い流そうと思った。その姿をベッドから見ながら、

「レイカ・・・初めてだったのかよ・・・ご馳走様。」

と不気味な笑みを浮かべながら高田は呟いた。


 その頃、森下は嫌な予感のまま過ごしていた。高田の最後の目が気になっていたのだ。しかし、仕事となれば自分が付いていくわけにも行かず見送ってしまった事が引っ掛かっていた。打ち合わせにどれくらいの時間が掛かるのか、森下には検討も付かないゆえに不安で一杯になっていた。何度もスマホを見ながら、ひかりに連絡を取っていいものかどうか自問自答を繰り返していたが、やはりひかりからの連絡を待とうとスマホを置き、またしばらくすると時計とスマホを交互に見ては、ため息をついていた。

「まだ終わらないのかなぁ?あの高田ってやつ、どうも気に入らないなぁ。」

誰かに話しかけているわけでもないのに、森下は心の不安を声に出さずには居られなかったのだ。と、その時、森下のスマホが鳴った。相手は・・・ひかりからだった。嫌な予感のまま森下は電話に出た。

「星野?終わった?」

森下は叫びにも似た声で言った。

「もしもし?君がレイカの彼氏かい?」

電話の相手はひかりではなく男性の声だった。そして名乗りもせず、いきなり用件を言い出した。

「どちら様ですか?」

森下は相手がひかりではないことが分かると、冷静を装って尋ねた。相手が夕方ひかりを連れて行った高田だと言う事は分かっていたのだが・・・

「別に名乗らなくても誰だか分かってるんだろ?レイカだけど、もう君のところには返さないから。悪いが忘れてくれないか?レイカの事は。」

高田は、淡々と告げた。

「何を言ってるんですか?よく分からないのですが・・・」

森下は必死に自分の感情を抑えながら静かに言った。森下の感情を逆なでするかのように高田は、

「レイカと俺、付き合う事にしたよ。いずれは結婚もするだろう。レイカにはそんな田舎に戻るようなもったいない事はさせないよ。俺と同じ事務所で役者として成功させる。君と付き合っていてレイカに何かメリットがあるかい?レイカは役者が好きなんだぜ。俺にはその仕事を続けさせられる実力がある。でも君と一緒にいてはレイカはダメになるだけだ。だから、君とは別れてもらうよ。」

と悪気もなく言った。さすがの森下も少々感情がむき出しになり、

「何を言ってるんだ?さっきから!」

と声を荒げて言った。

「俺、今レイカを抱いたよ。君、まだレイカとセックスもしてなかったんだな。あいつ、処女だったんだぜ。驚いたよ。女ってのは、初めての男を一生忘れないものだ。君の事なんてじきに忘れていくだろうよ。俺はこれからもレイカを悦ばせ、レイカを女にしていく。もうおままごとの恋愛なんてさせないって言ってるんだよ。」

相変わらず高田の口調は淡々と、それで居て森下の感情を逆なでさせる言い方だった。

「悪いが、本人を出してくれないか?」

森下は、出来るだけ感情を出さないように告げた。が、

「今、俺の目の前でシャワー浴びてるよ。純粋なんだな。ホテルのバスルームがマジックミラーになってる事も知らないんだろうよ。凄く自然な仕草で全身を披露してくれてるよ。君がまだ見た事もないレイカがここに居るって事だな。アハハ。レイカのスマホ見たら、君が彼氏だって事はすぐに分かったよ。レイカ、親とマネージャー以外、君としかやり取りをしてないんだな。ホント、純粋だよ。たまらないね。」

高田の挑発に、森下は限界を感じていた。が、何処に居るのかも分からずなす術なく、もどかしさと苛立ちだけが森下を襲っていた。森下が無言になると、高田は益々調子に乗って続けた。

「君はレイカには相応しくない。君にはレイカをキレイにする事は出来ないだろ?そんな田舎しか知らない男が、都会を知ったレイカを満足させられるはずない。今、君のところにレイカを返したとしてもすぐに俺のところに戻ってくるだろうな。俺のセックスは、他の男よりも数段上だ。俺を忘れられなくてすぐに戻って来るだろうよ。どうする?一度君のところに返した方がいいかい?レイカに比べられるのがオチだけどな。」

森下は、この高飛車な男の鼻を折ってやりたかったが、図星を突かれている気がして何も言い返せなかった。しかし、

「返すとか戻るとか、ひかりは物じゃない!人間だ!それにお前の彼女でもない!仕事の話ってのは嘘だったのか?ひかりは、純粋に声優と言う仕事が好きだったんだ。それをエサに呼び出すなんて最低だな!仕事の話はどうなったんだよ!終わったならすぐに家に帰すのが紳士ってものじゃないのか?」

負け惜しみにも聞こえるだろう言葉だったが、森下の正直な気持ちを告げた。それを聞いた高田は電話の向こうで馬鹿笑いをしていた。森下はその声を聞いているだけで腹が立ってしょうがなかったが、居場所が分からない以上どうする事も出来なかった。森下が腹を立てていると、

「それじゃな!」

と言って電話が切れてしまった。ひかりがシャワーを終えたのだと直感した。

「くそっ!」

森下は、電話を切るとベッドの上に放り投げた。

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